『放送禁止 ぼくの3人の妻』

ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて催された『放送禁止 ぼくの3人の妻』フォトセッションにて撮影。左が監督&脚本の長江俊和、右がアンバサダーの有田哲平。ちなみに、ポスター部分が不自然なのは、反射でほとんど細部が解らなかったので、もう少しマシに撮れたものを加工して重ねたからです。
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて催された『放送禁止 ぼくの3人の妻』フォトセッションにて撮影。左が監督&脚本の長江俊和、右がアンバサダーの有田哲平。ちなみに、ポスター部分が不自然なのは、反射でほとんど細部が解らなかったので、もう少しマシに撮れたものを加工して重ねたからです。

監督&脚本:長江俊和 / 製作:長江俊和、小林良二、渋谷謙太郎、佐久間大介 / 企画:長江俊和、角井英之、春名剛生 / プロデューサー:小林良二、嘉元規人、杉﨑朋子 / 撮影:関村良 / CG:伊東崇典 / 美術:西沢和幸 / 音声:杉原裕一 / 制作:上林千秋、露木彩乃 / ナレーション:鈴木ゆうこ / 制作プロダクション:NEBULA / 配給:渋谷プロダクション
2025年日本作品 / 上映時間:1時間38分
2026年3月13日日本公開
公式サイト : https://housoukinshi.com/
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて初見(2026/3/3) ※舞台挨拶つき完成披露上映会


[粗筋]
 2024年11月。3人の女性が、高名な祈祷師にお祓いを受けていた。
 中瀬由子、乾真璃奈、内野楓、彼女たちは儀式のトランス状態のさなか、全員が同様のことを口にした。
「私が、夫を殺した」
 それより更に1年前、彼女たちは某テレビ局の密着取材を受けていた。内容は、ひとりの男性と、その3人の妻の共同生活について。
 3人の夫は萩原紘二という。様々な経緯から3人と関係を持った彼は、塾講の末、3人に求婚し、事実婚という形での共同生活が始まったという。家事は交代で分担、夜の生活は相談のうえスケジュールを組んで行う。揃って食卓を囲い、談笑する姿は風変わりだが、幸せに映る。
 だが、取材を続けるうちに、不穏な気配が漂い始める。それはやがて、幸せだったはずの生活を侵食していった。
 長期間に及んだ取材は、しかし最終的にお蔵入りとなる。あなたには、その真実が見えるだろうか――?


[感想]
 2003年の深夜、フジテレビ系列にて突如として放送された第1回から23年。製作されたのはテレビ版として7作品、劇場版としては3作品に過ぎない。しかし、熱狂的な支持者の後押しもあって、2009年以降は作品ごとに2年以上の間隔を空けつつ、新作の発表は継続されていた――とはいえ、まさかテレビ版の最新作『ワケあり人情食堂』から新作まで9年も空く、というのはあまり想像はしていなかった。監督が小説に進出し、くりぃむしちゅー・有田哲平の番組『世界で一番怖い答え』の監修など、テレビ番組への参加も継続していて多忙だった、というのもあるだろうが、それだけ空白が生まれてもなお関係者に「新作はやらないんですか?」という期待の声が寄せられていた、というのは、間違いなくこのシリーズの面白さ、魅力の証左だろう。実際私も、何気なく「新しい情報あるかな」とふと検索して本篇の情報を発見するなり、まだチケットに余裕のあった完成披露上映会に潜り込むことを、時期が近すぎて若干躊躇しつつも、行くことを決めてしまったくらいだ。
 基本的に毎回、扱う題材は異なっている。第1作はホラーだったし、第2作は大家族。第3作ではストーカー、第4作では隣人トラブルと、当時としては比較的新しい種類の“恐怖”を採り上げるなど、初期から多彩だ。共通するのは、それらの映像は、何らかの番組に使用される予定で撮影されたものの、何らかの事情によって放送が不可能となった、という設定であり、作品はこれらの素材を、関係者の許可を得た上で再編集した、という体裁を取っている。
 何故、映像が放送禁止扱いとなったのか、は視聴者には明示されない。しかし、撮影された素材の中にその手懸かりはある、と考えると、それだけで興味を惹かれるものがある。そうして集中して鑑賞していると、終盤で思いがけない展開があって、違和感に気づかされる。普通ならそこから解決篇が始まって、ある程度の謎解きが行われそうなものだが、このシリーズは違う。いちおう、真実に近づくための手懸かりとなるべき新しい映像、そして既に提示された映像の反復が行われるが、明確な説明はない。自分から読み解く、という積極的な姿勢なしに鑑賞する人にはただモヤモヤした余韻が残るだけだが、そこから自発的に描写を反復し、手懸かりを探し求めた人はいつか、提示されたピースがあるべき場所に嵌まる瞬間を体感する。その衝撃、戦慄こそ、このシリーズ最大の醍醐味だ。
 実に9年ぶりの新作となる本篇は、生みの親である長江俊和監督が、初心を意識して制作したという。言葉通り、まさにこのシリーズの醍醐味がシンプルに詰め込まれた仕上がりだ。
 冒頭から、高名な祈祷師のお祓いを受けている、という異様な状況、そこから時間を遡り、大元のドキュメンタリー映像が始まる。ひとりの男性が3人の妻と同居する、という日本では得意な生活を追うはずが、次第に不穏な気配を帯び始める。なまじ観客は冒頭で、意味深なひと幕を見せつけられているだけに、どう繋がるのか、自体がどのように変化していくのか、余計に見入ってしまうはずである。
 このあたりの手管は、シリーズの先行作で完成させたスタイルに沿っているが、いちおう一通り鑑賞してきた者としては、語り口、表現が洗練されたことに注目してしまう。
 そのままでは気づきにくい真実への手懸かりとして、細かなヒントを埋め込むのもこのシリーズの特徴だが、そのために少々、不自然なカメラワークや、露骨すぎる仄めかしが挿入される傾向にあり、それが作品としてのリアリティを損なってしまう傾向にあった。フィクションなので当然といえば当然だが、折角丁寧に設定を構築し、俳優陣が自然な演技で真実味を醸しているのに、なんだか“答えを明示しないクイズ番組”のような趣を呈しているのが、個人的にはずっと惜しく感じていた。
 そういう語り口も作家性、作品としての個性としてアリだとは思う面もあるのだが、映画として公開すると、そういう点にやかましくなる観客は確かに存在するので、どうしても損をしてしまう――むろん、すべての人に好かれるのは不可能なので、潔く切り捨ててしまうのもひとつの判断だが、もう少し踏み込めば、更に良質のミステリ映画になる、と思っていた。
 その意味で、本篇は間違いなくレベルが上がっている。ドキュメンタリーとして撮影された経緯、必要となるギミックの配置、そして芯の通った展開など、謎解きとして必要なものを揃えながら不自然さが少ない。私がいちど鑑賞して確かめられたのは大枠の仕掛けと、その伏線となる言動と意味合いくらいのものなので、それを仄めかす細かな仕掛けをすべて拾ってはいないはずだが、露骨に違和感を齎すものが少ないのは、これまで以上の丁寧さで制作された証左だろう。
 不慣れな人だと或いは、いちど観ただけでは、このドラマの本当の意味に気づけない可能性は、ある。ただ、本篇の場合はそこからもまた楽しみのひとつなのだ。自分で映像を反芻し、吟味して、手懸かりらしき要素を抽出していく。既に鑑賞した人の意見を聞いて、摺り合わせるのもいい。そして、ピースがかっちりと嵌まったとき、底知れぬ戦慄と、言いようのない快感を味わえるはずだ。
 そしてたぶん、もういちど鑑賞して、己の確信を確かめたくなるだろう。そして、読み解いたあとだからこその発見に、またおののくことだろう。
 そういう楽しみ方が出来るからこそ、このシリーズはハマると抜け出せない。何年待ってでも新作を欲してしまう心境もまた頷ける。そして、そんなファンの期待に応えるべく、9年もの空白を経て制作された本篇は、今のところ最高傑作、と言い切ってもいいかも知れない。
 これまですべて観てきた者としては次に期待したくなるその一方で、ここから作を重ねるのはなかなかの難行だ、という気がしてきたが、それでも、引き続き続篇に挑んでくれることを願いたい……でも、出来れば9年も空けるのは勘弁して欲しい……。


関連作品:
放送禁止』/『放送禁止2 ある呪われた大家族』/『放送禁止3 ストーカー地獄編』/『放送禁止4 恐怖の隣人トラブル』/『放送禁止5 しじんの村』/『放送禁止6 デスリミット
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