
さだまさし『神さまの言うとおり【初回限定盤】』(amazon.co.jp商品ページにリンク)
なにも古希を過ぎてから年イチペースのリリースしなくたっていいのに、とファンでさえも思ってしまう、さだまさし1年ぶりの最新アルバムです。
毎年恒例の年越しイベント時点で1曲もストックなし、2月が終わった時点で新曲は依頼された新設校の校歌しかなくて、ラジオでアルバムプロデューサーの吉田政美に「あれも入れない?」と聞いてみたりする極限状態、しまいにはラジオ番組も完全に休んで、2回くらい落語家しか出てこない回がある、というカオスぶりでした――まああのラジオはもともと適当でカオスですが。
しかし、恐ろしいことにその状態から、きちんと完成させてしまった。
しかも、本当に質が高い。
借りたギターの音を活かしたシンプルな編成だった前作『生命の樹』より音の厚いものが増えた一方、さだまさしが大半の演奏を手懸けた『やかましい妖精』にグレープ名義で本当にふたりだけで演奏した『木蓮の庭』のようなごくシンプルな編成のものも含まれていたり、『イップス~Yips~』のような現在進行形のメッセージ性を含めたシリアスな曲があるかと思えば、『身も蓋もないBOOIE-WOOGIE』のようなユーモアの濃い曲もあって、実に多彩。なまじ作曲からマスタリングまでの期間が短かったぶん、経験やリアルの率直な感情を出し惜しみをしない作りに繋がったのではなかろうか。
今回いちばん楽しみにしていたのは、先日訪れた春の葡萄祭2026にて先んじて演奏された『木蓮の庭』です。グレープ名義で、本当に2人だけでの演奏、というライブでしばしば行われるストイックな編成で、しかもさだまさし伝家の宝刀とも言える、長崎在住時代の記憶と文化を重ねた情感に富む詞曲。あえて“グレープ”名義で臨む楽曲がだいたい個人的にツボなので、もっと増やして欲しいところなんですが……そうでなくても吉田政美の負担が大きい、というか、音楽業界にはいたけれど裏方に回っていた人が、ずーっとフルパワーで稼働し続けて50年、という生命力の塊みたいな人に突き合うのはしんどすぎるので、このくらいでいいのかも知れません。
他の曲もそれぞれに味わい深く、しかも全体で45分と尺も手頃。昨日の午前中に届いてしまっていたため、イベントが挟まっていたのに、既に3周くらい聴いてます。昨年の『生命の樹』もけっこうしっかり聴き込んでますが、今回も愛聴しそう。


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