
最新映画版を観る前に復習のつもりで読み始めた横溝正史『八つ墓村』、読了しました。
先行上映の登壇者は「すぐ読み終わる」と言ってましたが、私は筋とか描写をきちんと咀嚼して読み直してましたから、そんな簡単に片付けるわけにはいかなかったのです……というか、清水崇監督版が思いのほか解体再構築してて、あんまり原作を気にする必要なかったなー、と解ってしまったことで、そんな急いで読む動機づけがなくなってしまったのです。でも、久しぶりで、映画感想を仕上げる前に読み通しておきたかったので、優先的に進めていました。
改めて、面白い作品であるのには変わりない。“金田一耕助シリーズ”と言い条、出番は少ないし、最終的に自嘲するくらいに探偵としては役立たずだけど、それでも仕事はこなしてる。そして、金田一シリーズの中でも、たぶん事件としては特に派手。
詳しく知らない人だと『犬神家の一族』と混同しがちなことでも有名ながら、実際に読むとやっぱり趣は違う。強いて言うなら序盤の事件の起き方が似ているくらいではなかろうか。背景に横たわる“八つ墓明神”の呪い、実際の事件に想を得た過去の惨劇、そして巨大な鍾乳洞を舞台としたスペクタクル感のある終盤、と印象の強いモチーフ、描写が多い。知らない人は2作をちゃんと読み比べて欲しいです。ほんとに。
細部が曖昧とはいえ小説では最低2回、そして映画でも過去に2作品観ている訳ですから、だいたい展開は理解している。それでも最後は読みふけってしまいますし、読後の充実感は強烈です。
……うん、でも、改めて読み返すと、やっぱりもっと原作準拠の映画版もあって欲しい気がしてきた。金田一を完全に脇役にし、煽情的な要素を強調した野村芳太郎版も、逆に金田一をきちんと名探偵にするため終盤を潔く作り直した市川崑版も、そして原作の要素を解体し、現代を舞台に監督の作家性を強めに再構築した清水崇版も、それぞれにいいんですが、観たいのは原作の完全再現なのです――まあ、クライマックスについては、映像にすると微妙にグズグズになりそうなので、衝撃的な出来事を圧縮する形で脚色してもいいと思うけど、あとはそれこそ、市川崑の金田一耕助シリーズで確立した金田一の人物像と映像的感覚を踏まえたうえでの映画版が観たいのです。
……もっとも、その意味での理想に極めて近いのは、NHKでやっていた吉岡秀隆によるドラマ版かも知れません。
ちなみに読んだのはBOOK☆WALKERの電子書籍版です。紙の文庫は持ってるし、正史の自撰集でも持ってるし、更には市川崑版公開時に発売された、豊川悦司が表紙を飾ったハードカバー版も持ってます……多すぎだな……。




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