タモリの変なロード・ムーヴィー。

 本日の映画鑑賞は、毎回やたらと渋い企画上映ばっかりやっている神保町シアターです。
 ここはだいたい毎日、スケジュールが違っていて、観たい作品がセレクトに加わってても、私の都合のいい時間帯にかかっているとは限らない。現在実施されている企画は、80年代の映画を集めた《80年代ノスタルジアII》。ラインナップを調べたら、これは是非とも観たい、というのが1本あったので、狙い撃ちでスケジュールを調べ、今日が最適、と判断して、予定に組み込んでおきました。
 上映は夕方5時から、しかし座席が減らされているため、万一にでも札止めにならないよう、開場直後ぐらいにいちどバイクで訪ねて、チケットを確保。午後に軽く仮眠を取ったあと、こんどは自転車でお出かけ……チケットを取るくらいの時間なら路上に置いておいても何とかなりますが、映画を観ている約2時間、見逃してもらえる保証はないので、自転車のほうがまだ安心出来る。
 鑑賞したのは、写真家の浅井愼平が監督、脚本、撮影、照明を兼任、当時ブレイク直前だったタモリを主演に招いて、風変わりな男が起こした奇妙な誘拐を描いたロード・ムーヴィー『キッドナップ・ブルース』(東宝初公開時配給)。お茶の間の顔になる以前のタモリ主演、というのもさることながら、個人的には“クイズの優秀な回答者”というイメージが先行していた写真家・浅井愼平が監督、というのに惹かれました。
“誘拐”と書きましたが、その言葉から想像するようなサスペンスも駆け引きもいっさいありません。女の子は自発的について来るし、いちどはひとりで帰るようお膳立てして貰ったのに戻ってきてしまう。主人公も、宿泊先で「誘拐みたいなもんですね」とまったく隠す気がないのに、何ヶ月も捕まらず、ひたすら旅を続けていく。
 本篇は、写真家らしい創意の感じられる構図と、随所に織り込まれる味わいのあるやり取りこそが主眼で、“誘拐”はそれを正当化するためのシチュエーションに過ぎない、という印象。だから、雰囲気を愉しむつもりで臨めばいいんですが、明瞭なストーリーやカタルシスを期待すると、ただただ退屈なだけだと思う。
 また、旅の途中で遭遇するひとびとが、80年代のカルチャーに多少なりとも馴染みがあったひとには懐かしい面々ばかり、というのも見所です。急に現れて人生を語っていく伊丹十三とか、意味もなく女の子をバイクに乗せて草原を走り回る若き所ジョージとか、他にも随所に見覚えのある顔が登場していて、華を添えてます。時代を超えて通用する作品だ、とは思いませんが、この時代の空気を濃厚に詰めこんだ作品だと思う。これはこれで興味深い。

 それにしても、今日も暑かった。先週ほどではないにせよ、バイクで行って帰ってくるだけで汗だくになったため、再度出かける前にもういちど着替える必要があった。夕方、自転車をえっちらおっちら漕いで映画館に辿り着くと、とりあえず自販機でGREEN DA・KA・RAを購入。いつもなら映画終盤まである程度は保つんですが、半分もいかないうちに飲み終わるくらい喉が渇いてました。
 正直、まだしばらくは、迂闊に自転車で出かけない方がいいような気がします。今日ぐらいの気温と、夕暮れぐらいの時間帯であればともかく、日中はだいぶ危ない……神保町シアターの次の特集も、2本くらい鑑賞したい奴があるんですが、それが上映するまでに気候が落ち着いてるといいなあ。

コメント

  1. […] 監督、脚本、撮影&照明:浅井愼平 /  […]

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