先週金曜日に封切られた映画で、どーしても押さえたい奴をぜんぶ拾うキャンペーン、きょう観てきたものでとりあえず一段落です。来週は映画を観に行く余裕はなさそうですが、これでひとまず心残りはなくなります。
利用した劇場は、今年いまいち縁の薄いTOHOシネマズ上野。今回のも、上野でなければならない理由は少ないのですが、他の選択肢も限られていたのでギリギリここに着地した感じ。
鑑賞したのは、アカデミー賞にも輝いたマーヴェル発アニメーション待望の続篇、ヒーローであるがゆえの宿命を乗り越えるため、スパイダーマンがマルチヴァースのスパイダーマン達と対決する『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(吹替)』(Sony Pictures Entertainment配給)。前作は吹替で観たし、今回も吹替はかなりしっかり作っていそうだったので、はじめから吹替版で観るつもりでした……プレミアスクリーンでもうちょっといっぱいかかってたら、そっちを選んだんだけど。
……凄まじかった。なんだこの情報量、なんだこのハイテンション、そしてなんだこの感情への揺さぶり。
たぶんマーヴェル関連作で最高レベルの評価を受けた前作同様、或いはそれ以上に徹底したヒーロー映画であり、スパイディらしい青春ドラマに仕上がっている。次元を越えた思慕が世界を歪め、過酷すぎる選択を突きつける。そのあいだにもヴィランは跳梁を続け、危機はあらゆる方向から世界を襲っている。
なにせメインキャラが全員スパイディですから、まあ喋る喋る。それゆえにもの凄いスピードで会話が繰り広げられ、そこに次元ごとに違う表現手法まで採り入れているもんだから、本当に見所に欠かない。その一方で、漫然と観ていても把握出来るくらいに話が整理されているのも脱帽です。なにせ、これだけ多くの要素を詰めこんでも、ドラマとしての本質はスパイダーマンとしての宿命であり、そして主人公マイルス・モラレスと彼の周囲にいる人びとのドラマに集約されている。
読み解くべき要素は無数にあって、案の定、既存の実写版のモチーフもしれっと取り込んでいるのですが、作品世界としては前作から繋がる《スパイダーヴァース》の物語に収まっていて、マーヴェル作品に顕著な予習復習の必要性が抑えられてます。少なくとも、観ておいたほうがいいのは前作のみです。
個人的にいちばん震えたのは、こうした“マルチヴァース”作品のある傾向をネタにしているだけでなく、“マルチヴァース”であるからこそ触れるべきだ、と思っていた可能性に挑んでくれたことに痺れてます――が、その点の決着は続篇『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』に持ち越しだ! 既に製作はかなり進んでいるみたいだけど、それでも9ヶ月くらいはお預けだよ! 早く持って来いよ!!
ほとんどアートの領域に達している映像表現の多彩さに、奥深く練りこまれたストーリーが、無数のイースターエッグもちりばめられて掘り下げ甲斐がある。前作を超える――かどうかは、今回のドラマの決着になるはずの続篇を待ちたいですが、間違いなく一見の価値はある。
鑑賞後は近場で食事をするつもりでいたのですが、迷いに迷ってうろうろしているうちに空腹が耐え難くなり、遂には諦めて自宅最寄り駅まで戻り、コンビニで買って済ませました。危うく低血糖になるところだった。
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