『松江ゴーストツアー』に参加してきた。

 滞在2日目は、とりあえず昨年の心残りをゆっくりと解消することに費やしました。

 まずは、松江城を取り巻くお堀を船で巡る、堀川遊覧船に乗ってきました。昨日に続き生憎の雨模様ですが、船には屋根がありますし、雨の波紋が広がる堀の光景も風情があります。地上とは異なる視点から松江の町を眺めることが出来るので、これはけっこう楽しい。いったん乗船券を購入すればその日は何回でも乗り降り自由、というサーヴィスもありますが、船着き場は3箇所で、その周辺に目的地がある、とかいう場合でもない限り、交通手段として使い勝手がいいわけではない。でも、いちど乗ってみる価値は充分にありました。

 約50分ほど費やして1周したあと、今度は徒歩で松江城の周囲を半周、小泉八雲記念館へ。こちらは昨年にいちど立ち寄ってますが、昨日の怪談談義で出た話の確認と、アイルランド出身作家を紹介する特別展示を鑑賞。それから隣接する小泉八雲旧居へ。こちらは昨年、時間が足りずに立ち寄ることが出来なかった場所です。事前に、八雲が松江在住当時の様子を記した文章に多数目を通しておいたお陰で、非常に見応えがありました。何も知らずに漠然と立ち寄ると、わりとこぢんまりとした展示にしか思えないので、訪問する方は予習復習を済ませるようお薦めしておきます。

 この頃には完全に雨も上がり、暑いくらいの陽射しが照りつけてきた。陽射しを適度に避けてお堀の内側を歩き、八雲がお気に入りだったという城山稲荷神社へ。ここには大量の狐の像や置物が並んでいて、その光景は八雲が文章にもしたためています。社務所を訪ね御朱印をいただき、ついでに神職のかたから興味深いお話を色々と伺ったあとは、ほど近くにある松江護国神社へ。城山稲荷神社よりもかなり新しい神社で、一瞬気後れがするほど敷地が広い。御守りやお札は本堂で無人にて販売していて、御朱印の受付も今日はしていない様子なので、お詣りだけして離れる。

 そのまま進むと天守閣に続く大手門前の広場に辿り着きますが、折しも海外の観光客が退去して大騒ぎになっていたので、とりあえず今日は天守閣に向かうことなく離脱。

 さて食事はどうしよう、としばし放浪し、最終的にカラコロ工房のなかにあるお店へ。カルボナーラのランチセット、という普段なら決して注文しないモノを頼んでしまいましたが、美味しかった。本体以上に、セットを頼むとセルフサーヴィスで利用出来るクリームシチューが絶品でした。メインがなかなかの量だったので1杯に留めましたが、余裕があったらたぶんもう1杯は行っていた。

 そのあと、宍道湖のほとりにある国暉酒造の店舗で友人にあげる予定のお土産を手配し、それからいったん宿に帰還。仮眠を摂ってから、今度は自転車にて出発。宿での滞在中、備え付けの浴衣で過ごそうかと思っていたのですが、どうも着方がみっともなくなるので、ユニクロまでルームウェアを買いに行ってきたのです……正直、そんな気軽に足を運んでいい距離ではありませんでした。けっこう時間が経ってしまって、大慌てで本日のメインイベントのスタート地点である、松江城大手門にあるぷらっと松江観光案内所へ。

 というわけで、松江ゴーストツアーです。小泉八雲が再話した松江界隈を巡る怪談を、実際の舞台を訪ねて体感する、という趣旨のイベントです。数年前から、週末の限られた日に催されていて、興味はあったのですが昨年は滞在期間中に実施の予定がなかった――はず。或いは滞在日数の都合で諦めたのかも。とまれ今年は巧いことスケジュールが噛み合ったので、参加したわけです。

 イベントのなかで訪れるのは、松江城建築時の伝説に絡んでくるギリギリ井戸跡、かつて夜な夜な動き回ると言われた大亀の像がある月照寺、非業の死を遂げた芸者の霊が出るという話の残る清光院、そして八雲がもっとも愛したと言われる“飴を買う女”のエピソードが残る大雄寺の4箇所。

 主催者の用意した趣向については、あまり知識を持たずに体験してもらった方がいいと思うので、あまり細かくは記しません。ただ、これは本当に“怪談を体験する”という狙いを見事にかたちにしたイベントです。昔よりは灯りは増えたとは言い条、松江の夜はいまも深い。そのなかでも特に照明の乏しい場所を、語り部の案内と懐中電灯だけを頼りに歩く、というのは、怪談に語られる当時を偲ぶのみならず、八雲がこれらの話に接したときの空気も疑似体験させてくれる。本当に暗い中で催されるので、知っている話であってもなかなかに沁み入る怖さがあり、怪談の本当の面白さに接する、という意味でも絶好のイベントになってます。

 開催日時はけっこう限られていて、真冬にはさすがに実施していないようですが、今後も3月くらいまでは予定が発表されているので、もし松江に立ち寄る予定がある方は是非ともお試しあれ。ただし要予約、最少催行人数に満たなかったり、足許の悪い場所ばかりなので荒天の場合は中止になりますので、他の予定と併せて訪れるのが吉だと思う。詳しくは公式ホームページをご確認のこと。

 ちなみに松江怪喜宴2日目である今日は怪し会八雲2017の初日でもあります。今年はほかのイベントが重なっていたとかで宿が不足しており、泊まるところのない観客のために木原氏が徹夜のイベントを実施されてます。日付が変わるくらいまでは参加しよう、と当初考えていたのですけど、何だかんだで今日も動き回りすぎて疲れが蓄積してきたため断念。チケットを確保している、明日の怪し会に備えて英気を養っておきます……っていうか、作業もしなきゃいけないし。

コメント

タイトルとURLをコピーしました