……アリ・アスター監督、『ドグラ・マグラ』でも読みました?

 今月はとにかく観たい映画が多く、しかもなんか優先順位の高い奴ほど尺が長い。故に、だいたいの観に行く日を予め決めておいて、そこからなるべくズレていないところで観に行く、という具合で消化してました。それで無事に『哀れなるものたち』『瞳をとじて』を押さえ、あとは1本を残すのみ。この最後の1本が昨日公開され、そろそろ作業が月末の追い込みに入っていく時期、というのもあって、来週以降に持ち越すといったいいつ観られるのか解らない。時間的に、その後のローテーションとか作業に影響しにくい上映回を選び、さっさとチケットを押さえました。
 訪れたのはTOHOシネマズ日比谷。悩みましたが、今回もバイクは使わず電車移動です。なにせ映画本篇の尺がほぼ3時間あるので、最安値の駐車場に入れられないと料金が大きく違ってくる。だったら電車で確実に、固定料金を支払う方がいい。
 鑑賞したのは『ミッドサマー』のアリ・アスター監督最新作、母と久し振りに会うための帰郷が常軌を逸した冒険に発展していく“オデッセイ・スリラー”ボーはおそれている』(Happinet-Phantom Studios配給)
 感想はほぼ見出しのとおりです……普通のものを出してくるとは微塵も思ってなかったけど、ヤバいほどに狂ってた。
 不規則に異常なことが積み重なっているように思えるけれど、実はそこに性と母性のモチーフが粘っこくまとわりついている。愛という名の虐待に苦しめられた男が故郷に帰るまでの、強迫神経症の妄想じみた災難の連続に、薄気味悪さを味わいながらも目を惹きつけられる。
 とにかく随所で「なに起こってんの? これ」という展開が相次いで、観ている方でさえ迷宮に投げ込まれた感覚に陥るのです。このくだりはどう考えても妄想か幻覚だけど、戻ってきたところは現実らしくてもその前の現実とどういう脈絡でこうなってるのか解らない。筋が通ってなくて訳解らん、と受け付けることを拒否する人も出てきそうですが、やけに魅惑的なのです。薄汚いし陰惨だけど、甘美な悪夢のような。
 先行する2作品よりも更に意味不明で、理不尽で、救いがない。しかしその一方で、愛や母性といったものの歪んだ本質を見せつけられたような、腑に落ちる感覚もある。説明の仕方にひたすら悩みますが、相変わらず異様で、類のない魅力を放つ作品。ちなみに既に準備が始まっているらしいアリ・アスター監督の次回作もホアキン・フェニックスとのコラボだそうです。

 映画を観終えてロビーに出ると、驚くくらいの人出。基本、土日にTOHOシネマズ日比谷を訪れることはあまりないので、こうなると途端に居心地が悪い。さっさと離脱して、日比谷ラーメンアベニューに赴き、やや遅い昼食。それから、母に頼まれた買い物をちょこっとだけこなして帰宅。
 観ておきたい作品が他にない、というわけではないんですが、とりあえず現時点で絶対に外したくないものは押さえました。安心して作業に没頭出来る……と言いつつ、来週にはまたすぐ、「これは観逃したくない」奴が封切られてしまうのだな。今年は頭から豊作で嬉しいんですが、そろそろ悲鳴をつけたくなってきた。

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