甘美なる破滅の調べ。

 本日の映画鑑賞は、最近あんまし縁がなくなっている渋谷。何せミニシアターが減っていて、私が観たいものはシャンテや武蔵野興業系でだいたい済んでしまう。しかし今日の作品は本当に、都内では渋谷でしかかかっていない。選択の余地はないので、大人しく向かいました。
 陽気はいいのでバイクにてお出かけ――ですが、アクセルをふかしながらも不安が拭えない。バイクで向かうのが久々すぎて、道程もやや心許ないのですが、いちばんの心配は駐車場です。今年2月、『エル・スール』を観るため夜に訪れたとき、近くに駐車場があり、警備員の方から「そんなに混んでない」と窺っていたので、ソコを利用するつもりで移動してますが、その後状況が変わっている可能性もある。いちおう、前々から利用していた駐車場もありますが、何せ今日の目的地まで遠い。映画開始までに辿り着けないかも知れない。
 ま、結果を先に言えば、ほぼ問題ありませんでした。1本、曲がる道を間違えたものの、すぐにカバーできましたし、駐車場は話通り空いていた。帰りもそんなに埋まっていなかったので、ここば渋谷をバイクで訪れるときの第1候補にしてもいいかも。
 劇場は、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下。現在、東急のBunkamuraは再開発の真っ最中で、オーチャード・ホールはもちろん、ル・シネマも一時閉館しているのですが、2022年末に閉館となった渋谷TOEIのスペースに移動して営業再開した、というわけです。到着したとき、1階のチケットカウンターに行列が出来ていてたまげましたが、私はオンラインで確保してあるので、そのまんま7階へ。渋谷TOEIだったときの記憶と比較して、やたら綺麗で洒落た空間になっていて、ちょっと戸惑ってしまった。
 鑑賞した作品は、『刑事ジョン・ブック/目撃者』や『トゥルーマン・ショー』のピーター・ウィアー監督1974年の作品、1900年に女学校の生徒3人と引率の教師が行方をくらました事件を軸とする謎めいたドラマを、監督らの監修により4Kで修復したヴァージョンにて再公開したピクニック at ハンギング・ロック 4Kレストア版』(Gucchi’s Free School配給)
 4年ほどまえに初めて翻訳刊行された原作を読んで以来、ずーっと観たかった1本でした。ぼんやりと想像していた以上に、見事にあの奇妙で耽美的な雰囲気を再現した作品。
 ピクニックに出かける準備段階の少女たちのはしゃぎように、既に不穏な要素をちりばめつつ、旅先での生じよたちの姿は絵空事のように美しい。しかしそれが、色彩は鮮やかなまま、悲鳴とともに様相は反転する。いつまでも明白にならない背景に、関係者達は脅かされ、強い影響を受ける。その先に訪れるのは、楽園めいていた世界の崩壊です。
 ミステリ映画だと思って臨むと、確実に納得は出来ない。ただ、不可解でありながら、異様なリアリティも備えた展開に不思議と魅せられてしまう。尺としては100分にも満たないのですが、原作を見事に集約した手捌きも素晴らしい。
 やや古い映画ゆえ、少々テンポが悪く、こと展開を知っている側としては眠気を禁じ得ませんでしたが、唯一無二の佇まいをした作品。あとあとになっても記憶に残りそう。

 映画館を出ると、昼食を摂るため、予めネットで調べて観星を付けていた店を目指す……が、何せ渋谷自体が今年2回目、しかも昼間で、なおかつあんまりブラついたこともない駅西側ですから、少々まごつきました。最終的に、思っていたより真っ直ぐ辿り着けていたのですが、気分的には彷徨っていた。歩道橋が解りにくいのよ。
 食事を済ませると、そろそろ混雑に倦んできたので、さっさと離脱。すっかり様変わりした渋谷に慣れるには、もうちょっと短いペースで訪ねないと駄目だろうなー。

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