本日は今年最後の透析用医材の搬入日です。それゆえ、映画鑑賞はなし。しかしその代わり、お昼より少し早い時間にバイクで家を出て、浅草に赴きました。
目的は、鬼そば藤谷で食事すること。
鬼そば藤谷はお笑い芸人のHEY!たくちゃんが営むラーメン店です。前々から芸人のあいだではラーメン作りの腕前で知られており、2012年に渋谷センター街のビル内に同名のラーメン店を開き、好評を博していた。前々から気になってはいたのですが、私としては縁のあまりない渋谷、しかもあのあたりに足を運ぶと蕎麦屋を優先しがちだったので、ずーっと訪れる機会がなかった。
イベント等にも積極的に出店しており、実は大つけ麺博にも幾度か参加している――のですが、こっちでも、一回の来訪で1杯しか食べない私とは縁がなく、加えて2018年にあった不正騒ぎの際、私は会場にいて別のものをいただいていたのですが、妙に雰囲気が悪かったことを記憶していて、ちょっと印象が悪くなった。確か昨年だったか、Twitterにて大つけ麺博のアカウントが“鬼そば藤谷の再出店を認めるか?”というアンケートを実施したときには、さすがに延々閉め出すほどではないよね、と“認める”のほうに投票していたとはいえ、今年のイベントでも、自分から選ぶことはしなかった。
しかし、それがこの12月から、私にとっては馴染み深い浅草に移転した、と聞いては、さすがに興味を抱かずにはいられなかった。
きっかけは今年9月、鬼そば藤谷が出店していたビルで火災が出たことだった。1階ダクトからの出火で、このお店が原因ではなかったものの、煙の匂いが取れず現地での営業再開が難しく、紆余曲折あって、浅草への移転を決断した、とのこと。
移転に至る事情はさすがに同情を禁じ得ないし、移転先が個人的には足を運びやすい場所だったので、こうなるといい加減行ってみたくなってくる。ちょうど今日は搬入日のため、ほかの用事を入れにくい代わり、お昼頃には確実に余裕が出来るため、予め予定表に書き込んでおいたのです。搬入そのものも早い時間に片づいたので、これ幸い、と出かけてきました。
馴染み深い土地とは言え、というかそれゆえに、実はバイクで訪れるのは初めてだったりする。駐車場の場所は知っているけれど、入庫のシステムを知らないので、慎重に行動する。お店の場所はネットの地図で調べてあるから迷わない――と思いきや、どうも微妙に間違った場所に案内されていたようで、しばし行きつ戻りつする羽目になってしまった。雷門沿いの道路、というむちゃくちや解り易い場所にあったのに。
移転したばかりなので、店頭も店内も綺麗です。たぶん、もともとはラーメン店を想定していない店舗なのでしょう、座席の配置が一風変わった感じでしたが、食べる側としては広々として動きやすいのが嬉しいところ。
注文したのは、お店にとっての原点でもあるという鬼塩ラーメン。醤油ラーメンやつけ麺も気になりましたが、とりあえずは基本の味を堪能してみることに。
盛り付けは丁寧ですが具材は至ってシンプル、チャーシューとメンマ、そしてネギだけ。麺はストレートの細麺。かなり標準的なラーメンの佇まいです。
しかしスープをひとくち啜っただけで、ああこれは確かに美味しい、と唸らされました。澄んだ色合いとさっぱりした口当たりに対し、その味わいの複雑で豊かなこと。そんな繊細な舌をしていないので、どんな食材が用いられたのか断言は出来ませんが、鶏や魚介など、複数の出汁を絶妙に合わせているのが窺える。このスープだけでも通う価値を感じる仕上がり。
そして、チャーシューがまた素晴らしい。枚数を書かなかったのは、あまりにホロホロだからなのか、既にだいぶ崩れてスープの中で散っているのです。しかしこれが、スープに更なるコクを加えている。脂身多めでトロッとしていますがしつこくなく、肉の風味、柔らかな食感も添えていて、口に運ぶのが楽しい。
麺は細麺ながらもっちりした食感で、スープの芳醇さを邪魔せず、なおかつラーメンを食べている楽しさを演出してます。スープのクオリティが高いけれど、麺との調和がラーメンとしての矜持を貫いている。
これは確かに、文句なく美味しい。本当のところ、スープを飲み干してもいいくらいでしたが、さすがに脂分にちょっとクドさを感じはじめてしまって断念。もう一段階、味変するものを用意してたら、確実に食べつくしてました。
何にせよ、通う価値のある美味しさだと思いました。仮に渋谷の店舗が蘇ったとしても、ここには残していて欲しいくらいなので、ときどき立ち寄ろうと思います。
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