実は二郎インスパイア系初挑戦。

 6月6日の映画鑑賞のあとの話。

 この日は、食べに行くものはほぼ決めてありました。訪れた映画館からほぼ目と鼻の先に出来た新店、《俺の生きる道 上野店》で食べるつもりでした。
 ラーメン好きのあいだで熱狂的な支持を集める《ラーメン二郎》は、よく炊き込んだ乳化スープに極太縮れ麺、モヤシを中心に野菜をたっぷりと盛り付け、極厚のチャーシューというボリュームのある仕上がりに、通常料金内で可能な野菜、ニンニク、脂の調整を頼むときの呪文めいた文言など、際立った特徴がある。各地にチェーン店がある一方で、ここで修行をしたひとや影響を受けたひとによる“二郎インスパイア系”と呼ばれる系統のお店も多数存在する。《俺の生きる道》もそうした“二郎インスパイア系”のひとつで、本店は甲子園近くの白山にあり、上野店はこの系列店となる。
 実のところ私は、噂に聞く“二郎インスパイア系”のこうした料理内容の重たさやルールの方向性があんまり好きではなく、長いこと避けてきました。ただ、しばしばラーメン店の開拓を試みているうちに仕入れた情報で、注文時の調整であっさりと食べやすくすることも可能だし、どうやらお店によっては縛りを失くし、初見の客でも立ち寄りやすい工夫をしているところも多い、と知り、気持ちが揺らいでいた。
 そのうえ、この“二郎インスパイア系”のラーメン、実際には私はけっこう食べていると気づいた――セブンイレブンで最近だいたい置いてある、とみ田監修のデカ豚ラーメンが、どー考えても“二郎インスパイア系”で、わりと頻繁に食べているのに今更敬遠するのも変だ、と悟り、名前だけは知っていた《俺の生きる道》が5月に上野に出店した、という情報を得ると、せっかくだからここで初挑戦してみよう、という気になったのです。

 前置きが長引いてしまいました。いよいよ訪問です。
 店舗自体も脂っぽい印象のある“二郎インスパイア系”ですが、ここはまだ開店したばかり、ということもあるのでしょうがひたすら清潔。店内は縦長、入って少し奥から左手に厨房が、右手にカウンター席が伸びている。席間隔はやや狭めですが、肘が当たるほどではなく、ほどよい距離感。
 メニューは至ってシンプルで、ラーメンか豚ラーメンのみ、あとは量と有料のトッピング、サイドメニューが食券機のボタンに並ぶのみ。前述した、料金内で調整可能な野菜、ニンニク、脂の量は、野菜普通・ニンニク抜き・脂普通が通常となり、提供直前に店員のかたから確認があって、その際に調整してもらう方式になっている。システムも調整のタイミングも、店頭にて案内が掲示してありますから、ちゃんと読んでおけば戸惑うことはありません。これでルールがゴテゴテ貼ってあると、私はちょっと引いてしまうのですが、このくらいなら充分許容範囲内。

俺の生きる道 上野店のラーメン小、野菜アブラ普通にニンニク少なめ。

 ラーメンは通常が麺300g、小が200g、大が500gとあり、様子見として今回は小に、カスタマイズは通常にニンニク少なめで銜えてもらう形にしました。
 濃厚豚骨スープと言いながら見た目はやや味噌っぽい。味わいは、臭みはないけれどパンチが異様に強い。ただ、思った以上にクドさはありません。インパクトが強いために、食べ続けていくとちょっとたじろいできますが、クドさに弱い人でも、脂を少なめか抜きにすれば、たぶんあっさりと食べきれるのは本当。
 麺はやはり極太縮れ麺。切り方や茹で加減にややムラがありますが、それが麺の食感に変化をつけている。感覚が乱切りのうどに似ていて、もともとはそういうのが大好きだった私にはかなり好みとさえ言える。
 そして野菜の存在もポイント。ほぼモヤシなんですが、どれほど浸っていても一定の歯応えを残し、爽やかな味わいを添える野菜は、ラーメンのクドさを絶妙に和らげている。形のある野菜が苦手、いくらクドくてもいい、というひとは抜きにしてもいいでしょうけれど、これは通常量添えてもらうのが無難。
 そして思いのほか存在感が強いのが豚チャーシューです。通常のメニューだと1枚のみですが、これがまあ厚いこと。ちょっと歯応えが強めですが、まったくかみ切れないほどではありませんし、しっとりとして脂味の量も適度なので、クドくもなく、しかし肉の風味を堪能出来る。スープの味が染みきらず、調和しながらも存在感が最後まであるので、終盤はチャーシューを食べている気分でした。肉よりも麺を味わいたい方は、豚ラーメンや肉増しは控えるべきかも。
 そしてニンニクですが……少なめ、なんだけど、思いのほか量が多めで、強く効いてました。美味しいけれど、既に口臭が気になるレベル。直後に人に会う予定があるなら、口内ケアの準備必須か、そもそも抜きにするべきだと思う。
 濃厚だけど決してクドすぎない、順調に箸の進む、絶妙なバランスの仕上がり……なんですが、それでも基本的に胃の弱い私には、やっぱりちょっと重たかった模様。最後まで美味しく食べきりましたが、帰宅して仮眠を摂るため横になってもなお重たさがちょっと残っていた。先週までの疲れをまだ引きずって、体調が万全ではなかった、というのもあるのでしょうけれど、食の細い人は量に注意して愉しむべきでしょう。
 とはいえ、ずーっと警戒していたほどに重たくはないし、入りづらくもない。いわゆる“二郎インスパイア系”に対する抵抗は和らいだ気がします――でもやっぱり、量の見極めは重要だ、とは思いましたが。もうちょっと時間と気持ちに余裕のあるとき、また利用します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました