『好きになるその瞬間を。 〜告白実行委員会〜』

TOHOシネマズ西新井が入っているアリオ西新井の外壁に掲示されたポスター。

原作&音楽:HoneyWorks / 監督:柳沢テツヤ / 脚本:成田良美 / アニメーションプロデューサー:河井敬介 / プロデューサー:斎藤俊輔 / キャラクターデザイン&総作画監督藤井まき / 美術設定:綱頭瑛子(KUSANAGI) / 美術監督:海野有希(KUSANAGI) / プロップデザイン:宮豊 / 色彩設計:小島真喜子(Studio.Road) / CG:伴善徳 / 撮影監督:関谷能弘(グラフィニカ) / 編集:肥田文 / 音響監督:長崎行男 / 音響効果:今野康之(スワラ・プロ) / 音響制作:マイルストーン音楽出版 / 声の出演:麻倉もも花江夏樹代永翼細谷佳正松岡禎丞東山奈央神谷浩史戸松遥梶裕貴阿澄佳奈鈴村健一豊崎愛生雨宮天、Gero / アニメーション制作:Qualia Animation / 配給:Aniplex

2016年日本作品 / 上映時間:1時間3分

2016年12月17日日本公開

公式サイト : http://www.honeyworks-movie.jp/2nd/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2016/12/19)



[粗筋]

 瀬戸口雛(麻倉もも)とその人の出会いは、掃除の最中にぶつかり、転倒したその人に下着を見られる、という最悪のものだった。気弱な態度のせいで同級生と勘違いして強気に出たら、雛の幼馴染みで2級上の榎本夏樹(戸松遥)と同じクラスだった、と知って動揺する。そのとき雛は何故か直感したのだ。“私、きっとこの人を好きになる”と。

 その日以来雛は、気弱だが花の世話が好きで繊細なその人、綾瀬恋雪(代永翼)のことが気になって仕方がない。彼女の好みは兄・優(神谷浩史)のような頼り甲斐のあるタイプだったはずなのに、彼から目が離せなかった。なにやらそのことを察知したらしい同級生の高見沢アリサ(東山奈央)が恋雪にちょっかいをかけるようになって苛立つが、それがますます雛に恋雪を意識させた。

 心穏やかでないのが、夏樹の弟で、やはり雛の幼馴染みである虎太朗(花江夏樹)だ。いまでは逢うたびに口喧嘩が絶えない仲だが、虎太朗はずっと雛に想いを寄せている。結果的に雛が幸せなら相手は自分でなくても構わない、とさえ思っているが、恋雪に想いを打ち明けることも出来ず、彼の言葉で一喜一憂する雛の姿にヤキモキしていた。

 しかし結局、雛が想いを表現することが出来ないまま、恋雪は優、夏樹共々卒業し、桜丘高校に進学する。思案した挙句に雛は、同じ高校を受験することを決意した。虎太朗も同じ高校を志し、ふたりはそれぞれの優秀な兄と姉の指導を受けて、受験に臨む。

 そして2年後、雛も虎太朗も晴れて桜丘高校に進学した。2年間の断絶で忘れられていることを怖れたが、雛を見ると恋雪は以前のように優しい笑顔を向けてくれた。

 ふたたび接近する機会を得たいまこそ告白――と行きたかったのだけど、やはりなかなかそんな勇気は湧かず、1学期は呆気なく過ぎていく。そして夏が過ぎたとき、状況は思わぬ形で変化するのだった……。

[感想]

 公式にアップされている試写会の感想では、「この作品から観ても楽しめる」という評価が多かった、とあるが、個人的にはそう考えない。とりあえず『ずっと前から好きでした。 〜告白実行委員会〜』は観ておいたほうがいい。

 何せ、1作目での展開を踏まえた描写が多すぎるのだ。前作は雛の兄・優に幼馴染みの夏樹が告白する過程を描いており、そこに恋雪も絡んでくる構造だが、本篇クライマックスの出来事は、この経緯を踏まえている。それ故に、終盤での恋雪の発言や、雛と虎太朗のきょうだいに対する態度が、本篇の中で充分に説明されておらず、モヤっとした印象を残している。前作を観ていれば納得は出来るが、本篇からいきなり鑑賞した場合、観ている者に優しい作りとはお世辞にも言い難い。そこを行間と解釈して読み解くのも楽しみ方、ではあるのだが、本篇の志向しているのはそちらではないはずだ。

 前作がそうであったように、本篇もまた作品の狙いは“告白のドキドキ”の表現、に尽きる。全キャラが告白手前の立ち位置だった前作に対し、本篇の雛や他の登場人物はそれよりも前、恋心を募らせていく段階にある者が多く、とりわけ雛は都合2年に跨がって想いを募らせているのだが、そのぶん、告白に赴く際のテンションが極めて高い。“告白の練習”と偽ってしまって、本番のインパクトを小さくしてしまった前作の夏樹の雪辱を兼ねているようにも思える。そんな雛を筆頭に、本篇は告白に踏み切る前からの昂揚をも描いているので、前作を補うような立ち位置にある、と捉えられる。そういう位置づけからも、本篇はやはり1作目と併せて鑑賞しないと、いまいちその趣旨が伝わりづらい。

 これも前作と同様のことだが、メインの雛の心情だけでなく、彼女に対して想いを寄せる幼馴染みの虎太朗や、このふたりの級友達の心情も細かに織り込まれ、それぞれが雛の行動に直接結びつかず、幾つかは決着もしていないので、ストーリー全体に薄められたような印象をもたらす結果を招いている。もし単品で楽しませたいのなら、周囲の人々の言動や出来事をもう少し整理して、なるべく雛のエピソードに集約させる工夫が必要だっただろう。そして、そうした欠点が、“作品全体で告白のトキメキを堪能させる”というのを第一の狙いとして作っている、という前提に立てば理解は出来る、というのもまた前作同様なのである。

 翻って、前作とテーマを統一し、内容を補う作りにしたこと自体は高く評価出来る。前作を鑑賞してハマったのなら、間違いなく本篇も満足出来るはずだ。しかし、逆の順で接してしまうと、読み解く努力よりトキメキを感じたい、登場人物たちに感情移入したい、というひとにはたぶん戸惑う作りに、本篇はなってしまっている。

 だから、どう考えても私には、「前作を観なくてもOK」と無責任に言い切ることは出来ない。私自身、キャラクターの可愛さであるとか、恋愛の昂揚感をうまく織り込んでいる、という点で評価はしているし、不明な点もいちおうはある程度まで解読は出来るので、本篇から鑑賞して絶対に楽しめない、とまでは言わないのだが、このシリーズ本来の狙いである、“告白のトキメキ”を思いっ切り味わいたいなら、『ずっと前から好きでした。』から順に観るべきだ、と断言する。

 ……特に、エンドロール部分で本篇1本分に相当するエピソードを盛り込んでしまう趣向は、前作よりも酷くなっているので、やっぱり1作目で慣れる、或いはその趣向を知っておいたほうがいいと思う。まだナンボか許せますから。

関連作品:

ずっと前から好きでした。 〜告白実行委員会〜

この世界の片隅に』/『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〔新編〕 叛逆の物語』/『きんいろモザイク Pretty Days

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