『呪い村436』

原題:“Population / 436” / 監督:マイケル・マックスウェル・マクラーレン / 脚本:マイケル・キングストン / 製作:ギャヴィン・ポローン / 撮影監督:トーマス・バースティン,A.S.C. / 美術:アンドリュー・デスキン / 編集:ゲイブリエル・リー / 音楽:グレン・バー / 出演:ジェレミー・シスト、フレッド・ダースト、デヴィッド・フォックス、シャーロット・サリヴァン、R・H・トムソン、デヴィッド・エイムズ、レイ・エンス、スーザン・ケルソ、リック・スキーン / パライア製作 / DVD発売元:Sony Pictures

2006年カナダ・アメリカ合作 / 上映時間:1時間32分 / 日本語字幕:伊藤武

2007年02月21日DVD日本盤発売

2008年02月20日DVD日本最新版発売 asin:B0011YN26S

DVDにて初見(2008/04/10)



[粗筋]

 国勢調査局のスティーヴ・ケイディ(ジェレミー・シスト)は記録を更新するため、僻地にあるロックウェル・フォールズを訪問する。到着早々車がパンクする、という災厄に見舞われたが、村の人々は親切で、来たばかりの彼の名前をほとんどの人が覚え気軽に挨拶を投げかけてくれる。

 保安官はいるが犯罪のない理想郷――というのが謳い文句だったが、しかしそのわりには、スティーヴは人々の言動に異様なものを感じる。彼が来ると同時に妻が病を患ったという男は、酒場にいたスティーヴに銃口を向け、他にも妙に言動が不安定な人々が多い。

 調査といっても長い時間を必要とはせず、2・3日で出て行くはずだったが、村の人々は何故かスティーヴがここで暮らすようなことを口にする。訝しがる彼の前で、やがて村の人々は異常な行動に及び出す……

[感想]

 実に明瞭なテーマによって描かれる恐怖映画である。主題が明瞭であるのに対して、それを支えるシステムが単なる迷信なのか、それとも本当に何らかの呪縛であるのかが最後まで解らない。解らない中で、自らの身を守るためにそれを信じる人々、信じている振りをする人々、更にはそのためにドラスティックな手段に及ぶ人々が絡み、現実と妄想、狂気、或いは呪詛との狭間から生じる恐怖が全篇に横溢している。

 発想自体が巧いうえに、本篇は人物の配置がよく出来ている。決してポーズではなくスティーヴに友情を抱く保安官と、その保安官が想いを寄せる女性、直前のトラブルによって悲惨な目に遭っているらしい少女、直前の“犠牲者”などなど、物語のなかできちんと意味を持つ人物たちが巧く絡みあうことで、じわじわと迫ってくる恐怖もさることながら、終盤にかけてのドラマ、それぞれの行動にちゃんと説得力が齎されている。

 惜しむらくは全般に表層的で、もう一歩踏み込むことが出来れば日本でも本国でもビデオスルーにはならなかったと思われるのだが、しかし物語を組み立てる上での約束をきっちりと押さえ、丹念に組み立てられているので、少なくともホラー愛好家なら買って観ても損をした気分にはならないだろう。

 個人的には、美男子ではないが声と雰囲気に魅力がある、とかねてから注目しているジェレミー・シストが実質的に主演俳優として全篇で活躍している、というだけでも嬉しい1本であった。何せ役者としての色気は充分なのに、本質的に主演するタイプではないのも事実で、日本にやってくる作品自体が珍しく、出ていても『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』でヒロインの嫉妬深い夫とか、『サラ、いつわりの祈り』の酷いことをする人、とか異様な脇役ばかりなので、そもそもほぼ主演格のこういう作品が珍しいのである――それでもキーマンを演じる機会が多いことから、評価が低くないことは察せられるのだけれど。

 ちなみにこの俳優の出ている作品でのお薦めとして、ヒロインから奇妙な恋愛感情を寄せられる男を演じた『MAY―メイ―』、登場人物が全員記憶喪失というなかで、いちばんきつい状態に置かれている人物に扮した『unknown/アンノウン』の2本を挙げておこう。

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