『放送禁止2 ある呪われた大家族』

放送禁止2 ある呪われた大家族 [DVD]

監督・脚本・企画:長江俊和 / プロデューサー:春名剛生(フジテレビ)、角井英之 / 撮影監督:平尾徹 / VE:須藤剛史 / 編集:宮崎章司 / 音響効果:小堀博孝 / 出演:青木孝司、内藤和美、松井泉典 / ナレーター:鈴木ゆうこ / 制作:フジテレビ、イースト / DVD発売元:Pony Canyon

2003年日本作品 / 上映時間:48分

2003年6月7日フジテレビ系列にて放映

2006年8月25日DVD最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/06/28)



[粗筋]

 それはテレビ番組として頻繁に放送されている類の、ごく普通の大家族を扱ったドキュメンタリーになるはずだった。しかし取材中に不幸な出来事が発生、事情に配慮したテレビ局側は放送を自粛、VTRは封印される。本篇はそれを再構成したものである。

 取材を受けたのは、三男四女の大家族・浦家であった。家長の敬一郎は大工であったが、足の怪我がもとで現在休職中、母・司が収入を支えている。子供は高校三年の長女・林檎を筆頭に、次女・蜜柑、長男・豪毅、三女・梨枝、次男・隆太、四女・檸檬、四男・団がいる。三男の鷹治を1年前、不幸な事故で喪っていたが、猫のエンリケを含む一家、仲良く力を合わせて生きていた。

 だが、取材を続けていくうちに、カメラの前で奇妙な出来事が相次いで発生するようになった。やがて浮上してきたのは、ある写真にまつわる“呪い”が浦家を苦しめている、という可能性であった……

[感想]

 先日感想をアップしたばかりの『邪願霊』の系譜に属する、フェイク・ドキュメンタリー形式の作品である――が、あちらが“竹中直人主演”という表記によって、あくまでフィクションであることを実質的に約束しているのに対し、本篇は地上波の深夜番組として初めて一般に御披露目され、出演者にフィクションであることを予め明かしてしまうような著名な出演者はなく、肝心の“この物語はフィクションです”という表示も作品が完結するまで為されない。つまり、初めて本篇を観た人の多くは、仮に内容に違和感を抱いたとしても、これが真実なのか偽りなのか判然としないまま眺めることになる、そういうスタイルで公開された作品なのだ。

 従って、製作者が意図した衝撃を味わえたのは、本当に何の予備知識もなく、テレビをつけたらたまたま妙な番組をやっていたのでそのまま鑑賞してしまった、という無防備な一般視聴者のみなのである。評判を耳にしてあとづけで鑑賞した人間は、どうやってもその醍醐味を堪能することは出来ない。趣向を聞いた段階で承知していた事実ではあったが、いざ鑑賞してみると、かなり遅く触れることになった我が身の不運を呪いたくなる。そう感じてしまうくらいに、本篇は意欲的な作品だった。

 ただ、大前提を承知したうえで、細部を意識して鑑賞すると、正直なところ物語としての完成度はあまり高くない。完全な形では語られない真相を仄めかすために多くの伏線や思わせぶりな描写を織りこんでいるが、終わってみてよくよく検討すると、それぞれが衝突しあって、真相が一部ほげてしまっている。

 ドキュメンタリーという大前提があるのだから守らねばならない部分――カメラがあるところでは普通やらないだろうと思われる行動があり、同時にカメラがなかったとしても事情からすればやらなかっただろう行動も散見され、ノンフィクションを装うのに必要なリアリティを少々過剰に損なっているのももったいない。伏線があからさますぎてオチが読めることを批判する人もあるようだが、本篇の場合、オチが読めること以上に、オチから逆算したときに破綻してしまう伏線があることのほうが問題だろう。折角これほど興味深いネタと仕掛けとを用意したのだから、フェイクと知ったうえでも恐怖と衝撃とを齎すくらいに隅々まで説得力のある描写をして欲しかった。

 だがそうした欠点を踏まえた上でも、地上波の深夜番組という、予算も尺も非常に限定された枠において、これほど練り込まれた意欲的な作品を仕上げたことは高く評価したい。下手な2時間ドラマなどよりよほど実が詰まっており、見応えも充分だ。フェイク・ドキュメンタリー形式のホラーを好む向きはむろん、謎解きのある作品を好む向きならば、欠点も含めて楽しめる作品だろう。

関連作品:

邪願霊

ノロイ

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