『フィースト3/最終決戦』

『フィースト3/最終決戦』

原題:“Feast III : The Happy Finish” / 監督:ジョン・ギャラガー / 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン / 製作:マイケル・リーヒイ / 製作総指揮:ボブ・ワインスタインハーヴェイ・ワインスタイン、クリス・ムーア / 撮影監督:ケヴィン・アトキンソン / プロダクション・デザイナー:エルマンノ・ディ・フェボ=オルシニ / 視覚効果:グロウガン / 編集:カーク・モリ / 衣装:ジュリア・バーソロミュー / 音楽:スティーヴン・エドワーズ / 出演:ジェニー・ウェイド、クルー・ギャラガー、ダイアン・ゴールドナー、カール・アンソニー・ペイン2世、トム・ギャラガー、ハンナ・パットナム、ファン・ロンゴリア、ウィリアム・プラエル、ジョン・アレン・ネルソン、ジョシュ・ブルー、クレイグ・ヘニングセン / ライヴプラネット製作 / 配給:TORNADO FILM

2009年アメリカ作品 / 上映時間:1時間20分 / 日本語字幕:加藤真由

2009年7月4日日本公開

公式サイト : http://www.feast2-3.com/

新宿バルト9にて初見(2009/07/04)



[粗筋]

 テキサス州の片田舎にある街に、“ヤツら”が現れてから数時間――あらゆる策が水泡に帰し、生き残った者たちの命ももはや風前の灯火か、と思われたとき、街にひとりの“救世主”が現れる。その男、カウボーイ(ジョン・アレン・ネルソン)の登場を境に事態は新たな局面を迎えるのだった。

 街からの決死の脱出。仲間が次々に傷つき、命を落とすなか、最後に巡り逢う衝撃の結末とは……?

[感想]

 1作目に匹敵するくらい短い粗筋となったのは、2作目のネタばらしが多くなってしまうこともそうだが、やはりこの衝撃、というか異様な感覚はなるべく予備知識を少なくして味わったほうがいいと思うからだ。私は迂闊にも劇場で販売されているパンフレット(デザインや内容の密度からすると、プレスシートと呼んだ方が相応しそうだったが)にて本篇の粗筋に目を通してしまい、結果的に大きなイベントを把握した上で鑑賞してしまったのだが、もし無視していればあそこでもここでもきっと“衝撃”を受けたに違いない、と思えるだけに悔やまれてならない。

 だが、だがしかし、粗筋に記されていないクライマックスに直面したとき、その驚愕は筆舌に尽くしがたい者があった。そして、そのあとに待ち受けていた結末には、本当に呆気に取られた。2009年に入って既に3桁を超える映画を観てきたが、間違いなく衝撃という意味ではトップレベルである。

 こう書いてはみたものの、このラスト、恐らくは怒り出す人も少なくないはずだ。お約束を無視しひたすら意表をつき続けた本篇の展開のなかでも最も極端な趣向は、“卓袱台返し”と表現したくなる。

 普通の感覚であれば怒るぐらいが当然の反応と思われるが、しかしあの結末、本篇の世界観、価値観からは決して外れていない。可能な限り意表をつく、という基本精神からもそうなのだが、あんな狂った化物が闊歩するような世界であれば、あんなものを用意する人が現れたとしても不思議ではないだろう――ではやっていいのか、と問われれば私も違うと応えるが、そこを敢えてやるのがこのシリーズだ、と言える。その姿勢を最後まで、エンドロールにおいても貫いた精神はあっぱれだ。

 一方で、前作において表現しながらも活用しないまま終わっていた“化物”の特徴について、いいタイミングで、しかもこちらの予想の斜め上をいく形で応用しているのも好感触だ。特に、猫にまで“手出し”する化物の特徴が、ああいう事態に発展するその醜悪なユーモアセンスはまさに製作者たちの本領であろう。

それでも本篇は“化物”よりも人間たちの言動がクローズアップされている印象が色濃いのだが、本篇では両者の際立った部分を巧く噛み合わせて物語を転がしており、ちゃんとモンスター・ホラーとしての妙味を演出している。特にクライマックスでの人間たちの“逆襲”は、およそこれまでの化物映画にはなかった、しかし考えてみるとあり得そうな趣向であり、衝撃的だが異様な笑いを誘わずにおかない。

 予算はけっこう限られている(だからこそ化物の露出が減っている)と見られ、その範囲で充分に迫力を演出していることも評価できるが、ただクライマックス、明滅する光のなかで繰り広げられる混戦模様の描き方は失敗していたように思う。混乱していることは伝わるのだが、あまりに雑然としすぎて状況がほとんど伝わらない。終わってみて、事態が劇的に変わっているというのならともかく、そのあいだにユニークな趣向も幾つか盛り込まれたうえ、顛末もおおむね予測通りなので、効果を上げていたとは言い難い。

 だが、そうした不満を一切合切ひっくり返してしまうような結末は、やはり稀有な代物だ。エンドロールのあまりにもオフビートな感覚に浮遊感を味わった挙句、最後に繰り出されるひと言は、本篇を認める、認めないのいずれにも拘わらず頷かされることだろう。

 前2作以上にお薦めできる相手は限られそうだし、「この人なら」と思って勧めても「何てもん勧めんだコラ」と張り倒されそうな危惧さえ抱く代物である。だから、他のどの作品よりも薦めるのには慎重にならざるを得ないのだが、それでもこのくらいは言わせていただきたい。

 私はこの映画、大好きだ。『グラン・トリノ』や『スラムドッグ$ミリオネア』のような大傑作とは異なる種類の映画の悦びが、こういう作品にはあると思う。

関連作品:

ザ・フィースト

フィースト2/怪物復活

SAW4

SAW5

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