『ブギーマン2 憑依』

ブギーマン2 憑依 [DVD]

原題:“Boogeyman2” / 監督・編集:ジェフ・ベタンコート / 脚本:ブライアン・シーヴ / キャラクター創造:ブライアン・クリプキ / 製作:ゲイリー・ブライマン、スティーヴ・ヘイン、サム・ライミ / 製作総指揮:ジョー・ドレイク、ネイサン・カヘイン、ロブ・タパート / 共同製作:マシュー・ミラム、ジェニー・ヤマキ、J・R・ヤング / 撮影監督:ネルソン・クラッグ / プロダクション・デザイナー:ジョン・コリンズ / 衣装:エライン・モンタルヴォ / 視覚効果スーパーヴァイザー:デイヴ・コードグリア / キャスティング:ローレン・バス、カレン・メイセルズ / 音楽:ジョセフ・ロドゥカ / 出演:ダニエル・サヴレ、マシュー・コーエン、トビン・ベル、デヴィッド・ギャラガー、メイ・ホイットマン、マイケル・グラジアディ、クリシー・グリフィス、レスリーマルゲリータ、ジョニー・シモンズ、レネ・オコナー / 映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment

2007年アメリカ作品 / 上映時間:1時間33分 / 日本語字幕:?

2008年8月20日DVD日本盤発売

2009年7月3日DVD日本最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2010/03/15)



[粗筋]

 ローラ(ダニエル・サヴレ)はヘンリー(マシュー・コーエン)と入れ替わりに入院し、グループセラピーを受けることになった。10年前、目の前で両親を惨殺されて以来、ふたりだけで生きてきた兄妹だったが、当時持っていた、ブギーマンに対する子供らしい恐怖心があの殺人犯と結びついて、揃ってブギーマン恐怖症とでも言うべきものを患っていた。

 ヘンリーは無事に治癒したと認められて、就職の面接を受けると言い、ローラを病院に残して去っていった。おそるおそる初めてのグループセラピーに参加したローラだったが、ブギーマンに対する恐れを口にする彼女を、それぞれ異なる恐怖症を患った若者たちは嘲笑い、アレン医師(トビン・ベル)たちからは妄想だと決めつけられ、自分の殻に閉じこもってしまう。

 ローラが入院した最初の晩、しかし病院では思わぬ惨劇が出来した。暗所恐怖症を患うマーク(デヴィッド・ギャラガー)が地下倉庫のエレベーター・シャフトで、身体をふたつに裂かれた状態で発見されたのである。警察は、地下で薬物を服用していた際に、バレないようにと自ら電気を消した結果、恐慌に陥ってシャフトに転落した、と判断するが、ふたたび身辺で起きた惨劇に、ローラはブギーマンの“犯行”を疑う。無論、周囲は聞く耳を持たなかったが、グループセラピーの関係者のあいだには不穏な空気が流れはじめた。

 そして次の晩。患者たちが摩擦を起こすなか、重度の潔癖症であるポール(ジョニー・シモンズ)が、自らの調合した強力な洗剤を飲んで絶命した。当直として残っていたライアン医師(レネ・オコナー)は警察に連絡するよう、職員のグロリア(レスリーマルゲリータ)に指示するが、電話回線は切られ、逃走防止のためのセキュリティが解除できない状態になっていた。

 この病院でいったい何が起きているのか? 隔絶された病院内で、ローラは更なる恐怖を目の当たりにする……

[感想]

 本篇は、2006年に日本でも劇場公開されたホラー映画『ブギーマン』の続篇、という体裁で制作された映画である。

 ……が、前作を観る必要はまったくない。クローゼットなどに潜み、夜中に襲いかかってくる、という伝統的な化物“ブギーマン”というのをベースにしている、という意外に一切共通点はないからだ。登場人物が絡んでいる形跡はないし、登場する“ブギーマン”の性質さえかなり異なっている。連続したシリーズ、というよりは“ブギーマン”という大きな括りだけ一致させた連作ぐらいに捉えていいだろう。

 前作が好きな方には申し訳ないが、あちらは決して出来は良くなかったので、むしろ切り離した方が面白いものが作れる可能性はあった、と私は考えている。故に、別物であることについては、私自身は責める気はないのだが――如何せん、別物にしたところで、レベルの高い作品になっているとは言い難いのが辛い。

 前作の『ブギーマン』は、クローゼットの中に潜んでいる、という怪物の特徴を意味不明なまでに膨らませて散漫としてしまったが、本篇ではまた違った解釈で扱っている。少なくともその捉え方は前作よりも筋の通ったもので、大幅な乱れはないのだが、如何せんそれ以外の、現実的な部分に破綻が多すぎる。

 いちおう仕掛けがあるため、詳述しづらいのが苦しいところだが、一口で言えば、心の病に対する判断や扱い方にいちいち問題があるのだ。あるアイディアを支える根幹のところで不自然さがあるから、どれほど危機的な状況を描き出し、絶望に追い込むような描写があっても、いまひとつ受け入れられない。

 登場人物たちはそれぞれの立場やトラウマに対応する恐怖に見舞われることになるのだが、どう考えても結果の予測が出来ないような仕掛けを用いた上で、背後にいる者の思惑通りに事態が運んでいることも引っ掛かる。ある意味そこにスーパーナチュラルの要素が潜んでいるのだ、と抗弁することも出来るが、ならばもっとそれを匂わせる描写が必要だろう。

 しかし、アイディア自体は決して悪くない。様々な恐怖症を患った若者が会し、それぞれの恐れるものに襲撃される、という発想は面白いし、描写自体もインパクトはある――効果を発揮できるほどまでに整頓されず洗練もしていないのが残念だが。

 もうひとつ、本篇には個人的に賞賛したいポイントがあるのだが――具体的に記すと、折角効果を上げている数少ない要素を傷つけてしまうことになるので伏せておきたい。ホラー映画、スラッシャーもの、など残酷描写のある作品を好んで観る人ならば、私の気持ちはご理解いただけるのではないか。同感していただけるかは定かではないが。

 しかし、折角のアイディアがほとんど活かされていないことは確かで、第1作とは異なる角度から“ブギーマン”を扱ったことはむしろ評価したいが、全体としては失敗作と言わざるを得ない。シリーズものの定石を壊すような続篇を企図するのなら、もっと慎重さと丁寧さが欲しかった。大胆なだけでは、許してもらえない。

関連作品:

ブギーマン

呪怨 ザ・グラッジ3

SAW4

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