『ピラミッド 5000年の嘘』

『ピラミッド 5000年の嘘』

原題:“La Revelation des Pyramides” / 原作:ジャック・グリモー / 監督&編集:パトリス・プーヤール / 脚本:パトリス・プーヤール、ジャック・グリモー、オリヴィエ・クラスカー=ローゼン / 製作総指揮:オリヴィエ・クラスカー=ローゼン / 音楽:J・B・サビアーニ / 超ナレーション:森川智之 / ゲスト声優:関暁夫 / 配給:STAR SANDS

2010年フランス作品 / 上映時間:1時間46分 / 日本語監修:大地舜

2012年2月18日日本公開

公式サイト : http://pyramid-movie.jp/

新宿バルト9にて初見(2012/02/18)



[粗筋]

 古代エジプト文明の象徴であり、世界最大の古代遺跡であるギザのピラミッド。クフ王の墓碑とされ、20年で建造された、というのが定説となっている。

 ……果たして、本当にそうだろうか?

 かつては何の疑問も抱かず、一般的な興味のもとに取材を始めた“私”は、だが、とある情報提供者の示唆により、多くの建築家や物理学の専門家に接触して意見を求めた。その結果、巷間に流布する定説が、如何に胡乱なものであったのかを思い知る。

 ピラミッドとは、いったいどのように建てられているのか。そのことを調べていけば、通説のいい加減さは、あまりにも明白だった――

[感想]

 とにかく、ピラミッドのみならず、遠い歴史の彼方にある謎に関心があり、しかし通り一遍の知識しかない、という方は観ておいていい作品である、と思う。本篇の“私”が直面する疑問は、ピラミッドに関する通説についてよくよく検討すればすぐに気づきそうなものだが、なまじ定着してしまっているがゆえに疑いを容れず、むしろ合理的な問いかけのほうを胡乱なものとして撥ねつけてしまう、固定観念の怖さ、といったものすら透け見える内容だ。

 その問いかけの真っ当さ、提示される仮説の面白さ、は掛け値無しだが、しかし個人的にはそういう本質よりも、演出手法に疑問を抱いてしまって、必ずしも手放しでは賞賛できないことが惜しまれてならない。意識的に、ごく一般のドキュメンタリーよりも感情を前に出し、主観の存在することを隠さない語り口にしたこと自体は決して悪くないのだが、冒頭や中盤のテロップで期待を煽ったり、情報提供者との接触の様子だけ再現映像を作ったりするのは、内容を安っぽく見せるだけであまり効果的ではない。好みの問題もあるだろうが、検証自体はおおむね納得のいくものであるし、断定できないところはきちんと距離を置く姿勢が評価出来るだけに、その誠実さを演出の上でも徹底させるべきだったように思う。中途半端に意識して安っぽくしたような表現が、受け手を悪い意味で選んでしまっているように感じた。

 もうひとつ気になるのは、既存の説についての検証が非常にあっさり片付けられてしまっていることだ。確かに、建造に要する日数や機材の件は何よりも大きな問題で、この一点だけでも既存の説に強い疑念を抱きたくなるが、それでも“何故これほど強く支持されたのか”という点について、もう少し触れる必要はあったのではないか。公平さを保つ上でも然るべき態度であろうし、純粋に訝しいポイントでもある――ただ、映画、それも観客の関心を惹き続けるのが難しいドキュメンタリーという手法ゆえに尺は限られており、そこまで掘り下げている余裕はなかったのだろう、と推測されるが。

 とはいえ、既存の説の奇妙さ、ピラミッドという建造物の特異性は充分に理解できるし、そこから生まれてくる、従来の常識を超えた発想は強烈に刺激的だ。それでいて、UFOや宇宙人といった具合に、たやすくオカルトへと飛躍するような愚を犯さない話運びも好感が持てる――個人的には、ラストで示される“想像”ももう一段階ぐらい現実寄りに留まっていて欲しかったと思うが、これもまた好みの問題だろう。少なくとも、見出した材料に添った“想像”であることは疑いがないのだから。

 素直に、ピラミッドというものを改めて、虚心で探求したい、という人にいい指標となりうる作品だろうが、もし本気で探求するなら、既存の説についての資料についても触れたほうがいいだろう。それよりも、ピラミッドという部分を除いても、私たちの知っている常識というものが、見方によっては案外あやふやなものなのだ、と感じさせてくれる、そういう意味でも興味深い1本である。

関連作品:

トランスフォーマー/リベンジ

世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶

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