『ゴーストライダー』

ゴーストライダー エクステンデッド・エディション [Blu-ray]

原題:“Ghost Rider” / マーヴェル・コミック・ブックに基づく / 監督、原案&脚本:マーク・スティーヴン・ジョンソン / 製作:アヴィ・アラド、マイケル・デ・ルカ、ゲイリー・フォスター、スティーヴン・ポール / 製作総指揮:スタン・リー、ノーマン・ゴライトリー、デヴィッド・S・ゴイヤー、E・ベネット・ウォルシュ、アリ・アラド、リンウッド・スピンクス / 撮影監督:ラッセル・ボイド / プロダクション・デザイナー:カーク・M・ベトルッチェリ / 編集:リチャード・フランシス=ブルース / 衣装:リジーガーディナー / 視覚効果スーパーヴァイザー:ケヴィン・マック / 音楽:クリストファー・ヤング / 音楽スーパーヴァイザー:デイヴ・ジョーダン / 出演:ニコラス・ケイジエヴァ・メンデスウェス・ベントリーサム・エリオット、ドナル・ローグ、ピーター・フォンダ、マット・ロング、ラクエル・アレッシ、ブレット・カレン、ローレンス・ブルース、ダニエル・フレデリクセン、マシュー・ウィルキンソンギブソン・ノルティ / 配給&映像ソフト発売元:Sony Pictures Entertainment

2007年アメリカ作品 / 上映時間:2時間2分(※エクステンデッド・エディション、劇場公開版は1時間50分) / 日本語字幕:?

2007年3月3日日本公開

2010年12月22日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

Blu-ray Discにて初見(2013/01/26)



[粗筋]

 父親であるバートン・ブレイズ(ブレット・カレン)のあとを継ぐように、サーカスのスタントマンとしてデビューしたジョニー(マット・ロング)だったが、まだろくに技も覚えないうちに、恋人のロクサーヌ(ラクエル・アレッシ)が父とともに町を離れる、と聞かされる。彼女と駆け落ちすることを考えたジョニーだが、バートンが重い病に冒されていることを知り、思い悩む。

 そんな彼に、忽然と現れた男が異様なことを囁いた。もし自分と契約すれば、父の病を治してやる、と。代償は、ジョニーの魂――まともに考えもせず契約書にサインしたジョニーだったが、翌る朝、父は本当に完治していた。晴れ晴れとした父に送り出され、ロクサーヌとの逃避行に赴こうとしたジョニーだったが、直後、父がショーの最中に事故を起こし、急逝する。

 ジョニーが契約したのは、メフィスト(ピーター・フォンダ)という悪魔だった。この悪魔は、地上で自らが使役できる人間を捜し、ジョニーに目をつけたのである。いずれ行わせる仕事には、家族の存在が邪魔であるため、病を治したあとで死へと誘ったのだ――己の軽率な好意が招いた結末に動揺し、そしてロクサーヌと顔を合わせることも出来ず、ジョニーは彼女との約束を反故にする。そして彼は、父と同じスタントの仕事に没頭するのだった。

 ――やがて、成長したジョニー(ニコラス・ケイジ)はアメリカ中にその名を轟かせるスタントマンとなっていた。誰もが眼を疑うような危険なスタントに挑み、幾度となく周囲をヒヤリとさせながらも、見事に生き延びる彼は、まさにヒーローとなっていた。

 だが、そんな彼の前に、あの男がふたたび現れる。ジョニーを、地獄の戦いに導くために。

[感想]

 悪魔の力を与えられた男が、鉄馬を駆るヒーローとして覚醒する――というアウトラインだけを眺めると本邦の『仮面ライダー』を想起させる。まだしも子供向けにデザインされたあちらと比べ、剥き出しのドクロに、バイクもろとも全身火に包まれている、というスタイルは、如何にもアメコミらしく、ガキっぽくもクールだ。映像化されるのも宜なるかな

 本篇はその、いわば“地獄のライダー”であるヒーロー誕生までを描いた作品であり、その意味では非常にそつがない。ただ、そつがない、以上の魅力に乏しいのも事実である。

 いったいどうして“呪い”という形で力を与えられたのか、そしてどうやってヒーローとしてのスタイルが確立していったのか、というベースは着実に押さえている。しかし、お話の構成としては雑だし、それ以上のドラマを生み出せていない。何故メフィストは、プロローグ部分からあれほど長い時間にわたってジョニーをほったらかしにしていたのか。ジョニーが自身の“ヒーローとしての特性”を自覚する流れもいささか唐突に過ぎる。

 メフィストの命によりゴーストライダーが追うブラックハート(ウェス・ベントリー)という敵役が、いまひとつ存在感に乏しいのも残念なところだ。いちおう親玉であるブラックハートは、ゴーストライダーの必殺技を防ぐ特性を持っているものの、彼の部下は大して立ち向かうことも出来ていない。随所で対決が描かれるが、それがさほど危機や緊迫感を表現出来ていないので、あまり噛み応えがない。ヒーロー映画として必要な部分は押さえているのだが、全般にあっさりとした仕上がりは、どうも物足りなさを禁じ得ない。

 しかし、演出のテンポは良く、掘り下げが甘いとは言い条、きちんと紆余曲折を組み立てたストーリーは決して飽きさせない。どうも軽い、とか説明が足りない、と疑問を抱きはするが、観ているあいだ退屈をすることは――その軽さが気になると他が楽しめない、というひとならともかく――まずないだろう。

 そして、どれほど脚本の練り込みが甘くても、ゴーストライダー、ひいてはジョニー・ブレイズという人物像は実に魅力的だ。悪役さながらの哄笑を響かせながら人々を翻弄し、悪魔たちを手玉に取るライダーの姿はクレイジーな格好良さに満ちているし、そんな燃えたぎる魂を内に宿し、翻弄され、最後には決然と立つジョニーも観る者を惹きつけて止まない。ヴィジュアルの完成度を、オスカー俳優でありながらどれほどのカルト作品であっても嬉々として挑むニコラス・ケイジのパワーが存分に後押ししている。

 トータルでは、率直に言って、さほど突出したところのない凡作、と言わざるを得ない。もしかしたら、原作ファンにとっても不本意な出来映えなのかも知れない。ただ、細かな不手際をツッコむのもまた一興ではあるし、“ゴーストライダー”というモチーフの魅力を、ニコラス・ケイジらしいアクで再現した娯楽作品として、ゆる〜く楽しめる。

関連作品:

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