『シネマ・トラベル −映画館でみる世界遺産の旅− マチュピチュ・ナスカ・アンコール遺跡編』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン3入口に掲示されたチラシ。

テーマ曲:石井竜也『鳥の視線』 / ツアーナビゲーター:山崎紘菜 / ナレーション:羽佐間道夫土井美加 / TOPPAN製作 / TOHOシネマズ協力 / (株)インコム協賛

2014年日本作品 / 上映時間:52分

2014年3月8日日本公開

公式サイト : https://www.tohotheater.jp/event/cinema_travel/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/03/31)



[概要]

 世界各地に点在する世界遺産の数々。現実に訪れるには時間も費用も必要なそれらを、精緻な計測をもとに3DCGで再現、映画館に居ながらにして旅行気分を体感出来る映像作品に仕立てた。インカの離宮と言われる山中の遺跡マチュピチュ、大地に描かれた巨大なアート・ナスカの地上絵、アンコール遺跡のなかでも無数の“尊顔”の眼差しに見守られる聖地・バイヨン寺院の3つの遺跡を、わずか50分足らずのあいだに巡る。

[感想]

 と、概要で触れたのがほぼすべて、と言っていい内容であり、特にストーリーなどはない。だから、派手な展開や興奮を求めるなら、まず面白いとは思えないだろう。しかし、映画館に居ながらにして世界遺産の雰囲気を味わう、という意図は充分すぎるほど達成している作品である。

 しかも、データに基づいて再現された映像である、というのを活かし、実際に現地を訪れたのでは不可能な角度からの光景を織り込み、それぞれの遺跡を“発見”した科学者や冒険家、という設定でのナレーションを添えて、実際の旅とは違うスタンスで接することが出来るような工夫も施してある。マチュピチュでは鳥のように上空に昇り、或いは窓の中をくぐって、実際には観光客の立入が規制されている空間にまで踏み込んで、歴史の記憶に触れる手助けをする。バイヨン寺院では、どこに立っていても巡り逢う菩薩の“尊顔”を、様々なかたちで比較し、その表情の多彩さを実感させる。作中、恐らく本物の映像はほぼ用いられていないはずだが、だからこそ一連の遺跡の眼を瞠るような特徴が鮮やかに実感できるのだ。

 なかなか遠出が出来ないひとびとに、いっときでも遺跡を巡る旅の気分を味わわせる――という意図からも充分な出来だが、恐らく実際に現地に接したひとにとっても、また別の角度から一連の遺跡が物語る歴史や民族の精神に触れるいいきっかけとなりうる、興味深い趣向と言えよう。

 可能ならば他の遺跡も採り上げて欲しいところだが――たとえばグランド・キャニオンのような自然遺産となると、再現のためのデータが膨大な量になるし、本邦でも熊野古道のようなところを再現するのはなかなかに難しいかも知れない。そう考えると、現状の技術力、情報量では、再現できる遺跡にも限りがあるはずで、選定の段階から問題は多そうだ。

関連作品:

ドニー・イェン 邪神拳』/『トゥームレイダー』/『トゥー・ブラザーズ』/『アポカリプト』/『ロボット

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