さよなら日劇。

 本日、TOHOシネマズ日劇が千秋楽を迎えました。この日までの9日間、“さよなら日劇ラストショウ”と称し、日劇を彩った傑作群を立て続けに再上映する企画が実施されましたが、企画が発表された時点から、最終日の作品はひとつぐらい拾っておくつもりでした。幸い、座席獲得競争にどーにか打ち勝って、最後の最後となる上映のチケットが確保出来たので、先週に引き続き日曜夕方にお出かけ。陽気は悪くないし、気温も今月としては高いほうなので、バイクで移動しようかとも思ったのですが、駐輪場が見つからない、という事態になると困るので、今日も電車利用です。

 最終日の最終回だけあって、さすがの人出。当然ながら、到着時にチケットは完売しておりました。上映開始前、場内の様子を撮影するひとが多いのも、今日ばかりは仕方のないところでしょう。わざわざこんな日にやって来るくらいなので、本篇上映中にシャッターを切るような人はさすがにいませんし。

 日劇の長い歴史のトリを飾る1本に選ばれたのは、宮崎駿監督1997年の作品、中世のころの日本を舞台に、人間と森のけものとのあいだで繰り広げられる闘争を描いたもののけ姫』(東宝初公開時配給)

 公開当時に劇場で鑑賞し、その後テレビ放送でも映像ソフトでも繰り返し鑑賞した作品ですが、やっぱり大スクリーンで観ると迫力が違う。あれからずいぶんと色々な映画を観たりフィクションにも接してきたぶん、改めてこの作品の凄みにも気づかされます。こんなにも惹きつけられるのに、実のところ本篇には善と悪の別がない。中盤で登場する各国の山の主である猪たちも、モロには森を食い荒らす迷惑なものとして映っている。劇中にほとんど視点の置かれない侍達だけが悪役のようにも映りますが、本編のような描き方をしている以上、彼らにも彼らなりの“理”があるように捉えられる。細かに引っかかるところはあるのですが、そこに解釈の幅があるように受け取れることこそ、作品の強さの証だと思う。

 劇場の最終上映のあとはだいたいどこでも、閉まっていくゲートの向こうで従業員が客に向かってお辞儀をする、という光景が繰り広げられます。せっかく最終回上映に来たんですからそこまで見届けよう、とも思ったのですが、当然ながら共用部分にはマスコミが詰めかけていて、しんみりと眺めていられる状況ではない。そもそも、恐らく日劇の入口にはいま閉めるゲートがなく、なんとなく微妙な感じになりそうです。マリオンは動線が限られていて、退出にも手間取りそうなので、適度に切り上げてしまいました。

 ……というわけで、映画道楽にハマり始めた初期からけっこうお世話になっていた日劇とはこれでお別れです。ただ、3月29日には同じ東宝系のTOHOシネマズ日比谷がオープンする。以前のスカラ座とほぼ同じ場所なので移動はしやすく、近くに利用しやすいバイクの駐輪場もあって、私には大変使い勝手がいい劇場になるはず。なので、ぶっちゃけ昨年よりもこの界隈に立ち寄る機会は増えそうです。

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