『新選組オブ・ザ・デッド』

新選組オブ・ザ・デッド [Blu-ray]

監督、原案、脚本、製作&出演:渡辺一志 / 企画&プロデュース:行実良 / 撮影:山崎裕典 / 照明:岩切弘治 / 整音:久連石由文 / 特殊メイク:石野大雅 / 装飾小道具:飛嶋洋一 / 音響効果:松浦大樹 / 衣装:金田あずさ / ヘアメイク:今野亜季(A.m Lab) / 編集:高良真秀 / VFXスーパーヴァイザー:大萩真司 / アクションコーディネーター:吉田浩之 / 音楽:Zombie, Don’t Run / 主題歌:サンボマスター『生きて生きて』(Victor Entertainment) / 出演:日村勇紀バナナマン)、山本千尋、竹石悟朗(企画演劇集団ボクラ団義)、上杉周大(THE TON-UP MOTORS)、水樹たまチャド・マレーン尚玄、渡辺一志、コッセこういち、桜井宗忠(スカイラブハリケーン)、古旗宏治、川岡大次郎 / 製作プロダクション:パイプライン / 配給:KLOCKWORX / 映像ソフト発売元:VAP

2014年日本作品 / 上映時間:1時間12分 / R15+

2015年4月11日日本公開

2015年9月9日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

公式サイト : http://www.vap.co.jp/samuraiofthedead/

新宿バルト9にて初見(2015/04/18)



[粗筋]

 時は幕末、ところは京都。幕府転覆を目論む者たちが多数現れ、治安の乱れたこの地を管理するべく結成された新選組が活躍する時代。

 いちおう新選組隊士である屑山下衆太郎(日村勇紀)が謎の男に襲われ大怪我を負う。奇妙な呻き声を上げるその男は、どうやらメリケン人のようだった。山崎烝(川岡大次郎)の指示で、捕らえられていた坂本竜馬(渡辺一志)に会話をさせたところ、背景が明らかになる。

 その男の名はジョージ(チャド・マレーン)と言い、生きた死者――ゾンビに噛まれたことでゾンビとなった。近年、京都界隈を暗躍するカウフマン商会によって見世物小屋に売り払われる途中だった、という。

 ジョージの話で危険を悟った山崎たちはさっそく屑山を牢に入れ隔離するが、そのころ既に京の街にはゾンビが溢れかえっていたのだった――

[感想]

 みんな、ゾンビに何かを混ぜたがる。ロバート・ロドリゲスクエンティン・タランティーノはお得意の犯罪ものにゾンビ(厳密には違うものだけど)を混ぜ込み、学園ものにも混ぜ込んだ(厳密にはもっと違うものだけど)。そもそも、このジャンルの神にも等しい存在だったジョージ・A・ロメロにしてからが、西部劇にしてみたりP.O.Vを導入してみたり、と晩年まで新しい趣向を果敢に採り入れ、その可能性を模索していたほどだ。さっきまで普通の人間だったはずが、感染することで恐怖の対象に転じる、その明瞭でダイナミックな変化が、様々なジャンルや題材に意外な光を当てたりするので、色々と試したくなるのだろう。名作小説『傲慢と偏見』に文章を書き足してゾンビの話にする、なんて突飛な趣向もあり、これもまたしっかりと映画化されていたりする。

 本篇は、日本のフィクションにおける人気のモチーフ、新選組を用いているわけだ。私が咄嗟に思い浮かばないだけで、恐らく日本の時代劇にゾンビを取り入れた趣向じたいは決して嚆矢ではないだろう。ただ、それをあえて幕末、しかも新選組をメインにして採り上げたのは着眼と言っていいのではなかろうか。

 発想は悪くない。が、全体の出来映えは、お世辞にもよくはない。

 良くも悪くも本篇は小劇場の演劇みたいな雰囲気が強い。各人、キャラクターは立っているが、その特徴付けのための台詞回しがわざとらしい。特に坂本竜馬の土佐弁があまりにわざとらしくて、はっきり言えばイライラする。英語を嗜み、敵であろうと簡単に取り入ってしまう大物っぷりは、竜馬のイメージからすれば決して逸脱していないのだが、あまりに作った感が強すぎて、貫禄が足りない。

 恐らくは間の取り方も、舞台で観客を意識したものに近いのだろう、映画として観るとテンポを乱している。そのせいで、尺は短いのに、妙に間延びして見えてしまう。アクションシーンはそれなりにテキパキしているのだが、ほかの部分があまりに悠長すぎて、緩急のパランスを崩してしまっている。

 ストーリーも少々雑だし、ところどころで盛り込まれているユーモアも決して効いているとは言いがたい――やはり、映画として観た場合、テンポの悪さが致命的であるように思う。

 見所があるとすれば、主演格である日村勇紀ぐらいのものかも知れない。実在しない、まさに“名は体を表す”を地で行くような新選組隊士・屑山下衆太郎のろくでなしっぷりをコント仕込みの外連味たっぷりに演じると、ゾンビ化してからは素晴らしいくらいのバケモノっぷりを見せつける。終盤の、いささか強引に見える変化も、ほかの俳優たちよりはるかに説得力があり、このテーマに相応しい見せ場に貢献している。

 お笑い芸人・日村勇紀のポテンシャルの高さは充分に堪能できるが、映画として観るとだいぶ物足りない。テーマやモチーフ、細かなアイディアは評価できるが、それだけに全体としては惜しまれる出来だと思う。

関連作品:

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