原題:“Grease” / 原作:ジム・ジェイコブス、ウォーレン・ケイシー / 監督:ランダル・クレイザー / 脚本:ブロント・ウッダード、アラン・カー / 製作:ロバート・スティグウッド / 撮影監督:ビル・バトラー / プロダクション・デザイナー:フィル・ジェフリーズ / 編集:ジョン・F・バーネット / 音楽:バリー・ギブ、ジム・ジェイコブス / 出演:ジョン・トラヴォルタ、オリヴィア・ニュートン・ジョン、ストッカード・チャニング、ジェフ・コナウェイ、バリー・パール、マイケル・トゥッチ、ケリー・ワード、ディディ・コーン、ジェイミー・ドネリー、ダイナ・マノフ、イヴ・アーデン、フランキー・アヴァロン、ジョーン・ブロンデル、エド・バーンズ、シド・シーザー / 配給:パラマウント映画=CIC / 映像ソフト発売元:Paramount Japan
1978年アメリカ作品 / 上映時間:1時間50分 / 日本語字幕:木原たけし
1978年12月9日日本公開
午前十時の映画祭9(2018/04/13〜2019/03/28開催)上映作品
2018年7月4日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon|DVD + Blu-ray:amazon|4k ULTRA HD + Blu-ray:amazon]
TOHOシネマズ日本橋にて初見(2018/8/21)
[粗筋]
夏のリゾート地で、ダニー(ジョン・トラヴォルタ)とサンディ(オリヴィア・ニュートン・ジョン)は恋に落ちた。ふたりは逢瀬を重ねるものの、シドニーからやって来たサンディは帰らねばならなかった。「これが終わりじゃない、始まりだ」とダニーは2018/08/21 19:46慰め、ふたりは別れる。
ほどなく夏休みが終わり、新学期が始まった。サンディは親の都合でアメリカに転居することになり、ランダル高校に転校した。驚くべきことに、そこはダニーも通っていたのである。
だが、ダニーは海岸で見せた純朴で誠実な態度をかなぐり捨て、サンディに対して斜に構えた物言いをした。あまりの態度の違いに、サンディは失望する。
地元でのダニーは、仲間たちと共に不良を気取っていた。グリースで髪をダックテイルに固め、革ジャンに身を包んで、一般の生徒とは距離を置いてクールを決めこんでいたのだが、海岸ではサンディに対して紳士的に振る舞っていたのである。
仲間たちの手前、格好つけたはいいが、サンディの不興を買ったことに慌てたダニーは謝罪するが、サンディの機嫌は直らない。サンディとしても、ダニーに対する想いは残っていたものの、海岸との振る舞いの違いに、どうしても納得がいかなかった。
ダニーに対する当てつけのように、スポーツマンと交際を始めたサンディの姿に、ダニーは運動部に挑戦してみるが……
[感想]
本篇を観ていなくとも(かくいう私もまだ観てない)そのポーズだけはたぶん誰でも知っている伝説の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』にジョン・トラヴォルタが主演したのがこの前年だった。つまり、彼の人気絶頂期の主演作品というわけである。
そのノリに乗っているがゆえのオーラは、本篇の序盤から画面がギトギトになるくらい滲み出ている。キャストの先頭に立って踊り、甘くもクセのある声音で歌いあげる様は自信に溢れ、圧倒されるほどだ。本篇はトラヴォルタ演じるダニーとオリヴィア・ニュートン・ジョンが演じるサンディとの恋愛を中心に据えつつ、周囲の人々の心情も織り込んでいく群像劇的な側面もあるのだが、他の俳優、役柄にトラヴォルタほどのインパクトはない。
ただ人気絶頂ゆえの自信過剰がこのオーラ、存在感をもたらしているわけではないのは、ダニーの解り易いが繊細な二面性をしっかり演じきっていることからも明白だ。
ダニーは友人たちの前ではいっぱしのワルを気取るが、純朴な一面も併せ持っている。サンディと恋に落ちた当初は恐らく歓心を惹こうと真摯に振る舞っていたが、高校で思いがけず再会したとき、周りを取り囲む仲間や級友に対して、いつも通りの斜に構えた態度を繕うことを優先してしまった。
しかし、サンディへの想いが消えたわけではない。仲間たちの前で格好をつけた直後に、サンディのご機嫌を窺ったり、彼女がスポーツマンと交際を始めたから、と自分もスポーツに挑んでみたり、と涙ぐましい努力もしてみせる。クールに決めるか、真面目に振る舞うか、のあいだで揺れる様はいっそキュートでさえある。そして、こういうありがちだが匙加減の難しい役柄を、オーラ剥き出しのままで演じきってしまった表現力には唸るしかない。
実のところ、話そのものにはさほど奥行きはなく、説得力にも乏しい。物語は学年の始まりから卒業までのほぼ1年間に及ぶが、服装や言動から季節の移り変わり、時間経過を把握するのが難しく、イベントがいちいち唐突だったり、不自然なほど長期間に及んでいるような印象を与えてしまう。しかも、伏線が充分に用意されていないので、新しい展開や重要な変化がいまいち受け入れにくい。とりわけ、クライマックスでの意外な成り行きは、そこに至る心理的変遷をしっかり見せていないので、驚きはするがしっくり来ない。私もそうだったのだが、観た直後は、釈然としない決着に感じられるかも知れない。
ただ、その趣旨や決着の意味合い自体は否定しない。こういう道筋を選ぶのもアリだろうし、そのために意識的に、ダニーや仲間たちなりの高校生活を積極的に描いていたのも理解できる。
本篇の価値は、この時代の若者の特徴的なカルチャーを活かして物語を組み、個性的なミュージカルとして昇華させたことにこそあるように思う。ダックテイルや革ジャン、派手なプロムや改造車でのレースなど、この時代、アメリカならではの若者文化がたっぷりと詰めこまれており、それがクセのある歌やパワフルなダンスによって魅力的に彩られている。物語の展開がしっくり来なくても、そのはち切れそうなほどの生命力に思わず惹きつけられてしまう、力強い作品である。観たらたぶん確実に、トラヴォルタの顔が網膜に焼きついてしばらく離れなくなる。
関連作品:
『ヘアスプレー』/『キャリー』/『パリより愛をこめて』/『野蛮なやつら/SAVAGES』
『慕情』/『ベン・ハー(1959)』/『猿の惑星』/『ラットレース』/『キル・ビル Vol.1』/『グラインドハウス』/『LIFE!』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『キングスマン:ゴールデン・サークル』
『アメリカン・グラフィティ』/『ストリート・オブ・ファイヤー』/『ヤング・ゼネレーション』/『バック・トゥ・ザ・フューチャー』/『Peach どんなことをしてほしいのぼくに』/『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』/『クロニクル』
コメント