『乙女はお姉さまに恋してる』第9話 まりやの気持ち

 学園での生活が続くにつれて、瑞穂は頼もしさを増していた。幼馴染みとして誇らしく思いながら、まりやの胸には一抹の寂しさが兆している。生徒総会での演説も、演劇部での主演に緊張を高める奏を励ますために自分も依頼された芝居に出演することを決めたのも、まりや頼りではなく瑞穂が自分で成し遂げたことだった――いつしか、まりやのなかで複雑な感情が膨らんでいく。

 そのうちやらねばならなかった幼馴染みフラグですなはっはっは。……じゃなくて。

 これまで基本を忠実に押さえてきたシリーズらしくそこも基本通りですが、有り体の幼馴染みものとは一線を画したまりやの位置づけが、これまでの出来事を踏まえてよく活きてます。もともと天の邪鬼な娘ですから、ある意味残酷な成り行きではありますが。いずれ自覚せざるを得んだろうしなあ。

 しかし、“瑞穂”というフィルターを通すことで、基本的にどこか虚構じみた形でしか描かれなかったストレートな青春群像を、ここに来てまりやという視点から初めてまともに再検証しているような話運びで、いい厚みが備わっています。前回までのような駆け足の印象もなく、足が地についている感覚もいい。この調子なら、ゲーム原作であるが故の“誰ルートで終わるか”という問題点を気にせずに済みそうです。現時点でこうきっちり締めているのなら、あとは最後まで足並みを崩さなければいいのですから。……とか何とか言っていたら、来週はなんか芝居の題材にかこつけてまりやがもうひと暴走してくれるっぽいですが。

 どうでもいい話ふたつ。

 瑞穂って小さい頃から女の子っぽい格好ばっかりさせられてたのか。まりやの眺めていたアルバムの写真、どうしても男の子には見えん。

 そしてたかが頬へのキスだけで卒倒した貴子がいい。

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