
洞光寺玄関脇の棚に掲示された『酒林堂八雲 2026』のチラシ。
東京から実に9時間、ようやく会場である洞光寺に辿り着きました。
まだ準備が整っていなかったようで、5分ほど開場が遅くなってました。まあ、それはいいのだけど……とにかく外が暑くてたまらなかったので、この数分が地味にしんどかった。こちとら、スタンプラリーで予定より余分に動き回ってしまったから、早く涼しいところで座りたくて堪らなかったのです。
今回、整理番号が早めだったので、珍しく演者の真正面側最前列を確保……ど真ん中に行けないのは私の性分です。
座席を確保したら、ひとまず物販を巡る。悩んだり、いちど席に戻ったりしながらだったので、五月雨状にではありますが、たぶん訪れているお店とかぜんぶからひとつずつくらい購入してます……Tシャツとかがなかったから、その分放出した、という感覚。
先に茶風林さんが軽く挨拶されて戻り、依藤聡さんの前説を挟んで、いよいよ開演。真っ暗になる一瞬が個人的にはとても好きです。
しかし今回珍しいのは、先にエレキ琵琶担当の丸山恭司さんが登場したこと――ただこれは当然だと思う。演奏は蝋燭の明かりで何とかなっても、アンプとの接続や調弦は暗がりでは出来ない。
照明が落ちると、琵琶がさながら効果音も兼ねた演奏を始めて、川原慶久さんが演者のマイク脇に立てた蝋燭に火を灯し、他の演者も順次登場。そしておもむろに、物語が始まります。
前半の演目は『雪むすめ』。小泉八雲の『雪女』のその後を描くオリジナル作品です。
物語は主に雪女と巳之助の娘・はると、彼女の夫となった仁吉の視点で綴られます。母が消えて巳之助はどうなったか、という点に着目して話を膨らませている。
ちょっと厳しいことを書きますが、話としては、あまり面白みがない。前作の主題を踏まえて別の形で膨らませる、とか、雪女の娘、というはるの個性を敷衍して物語やドラマを発展させて欲しかった。
しかし、声優と琵琶奏者、そして効果音を用いて作り出される雰囲気は素晴らしい。雪深い農村の空気と、妖しさに情緒の溶け合う音作り。この酒林堂シリーズらしさを、効果音も兼ねた生演奏で更にグレードアップした、という趣。こういう工夫が楽しいので、ちょっとプロットに難を覚えても満足感が高い。個人的には、真っ正面のマイクを使っていたのが中原麻衣さんだったのが嬉しかったり。
照明が点き、演者が挨拶して退席すると、入れ替わりに座長の茶風林さんが登場して、お清めの始まりです――そういや前半の演目では茶風林さん、まったく登場してませんでした。回によって入れ替えていたのか、それともこのところ毎回のように移動でトラブルが発生する座長が、多少なら遅く着いてもいいように前半は出演しない座組にしたのかも。実際のところ今回も、羽田空港で搭乗予定の飛行機が故障で飛ばせず、振替で2時間くらい待たされたそうな。
そうこうしているうちにお酒とおつまみが運び込まれてきました。今回のお酒は米田酒造の豊の秋 かんなび。おつまみは炊き込みご飯のおにぎりとエビフライが1尾、あと卵焼きや煮物など……あ、昼食とエビが被った。好きだからいいんですけど。
お酒はキリッとした辛口で美味しい。おつまみの素朴で丁寧な味付けといいバランスで、お酒が進みます……疲れすぎてて、うっかり飲み過ぎたら眠ってしまいそうなので、乾杯だけしてあとは抑えるつもりだったのに、何だかんだで1本空けてました。
茶風林さんの酒蔵訪問レポートのあと、恒例の抽選会です。私は前回大当たりだったので、またあたるわきゃない、と8割方他人事として楽しみました……少しは期待するのも楽しみ方です。
本日、昼の公演では飲まなかったらしい伊藤美紀さんが乾杯のあとからずーっとお客の中に混じって呑んでいた模様。そしてなんでか、そんな伊藤美紀さんのお身内が何人か当たってたらしい。忖度じゃないんだけど、と演者のどなたかが仰言ってましたが、忖度してるとしたら無駄が多いと思うの。
抽選会のあともしばらくお清めは続く。私はビアへるんの生ビールを追加し、味見がてら、さっき物販で買った旨塩柿ピーを摘まんでみる。毎回ここで物販をしているおつまみ研究所の、柿の種だけ詰めたボトルを買い、あとで貪り食うのが楽しみのひとつだったんですが、今回は持ってきてなかったらしく、代わりに購入したのです。これもやみつきになります、と言われましたが、確かに美味しかった。すぐさま、後日いただくための追加を買ってしまった。

洞光寺玄関脇の棚に掲示された『酒林堂八雲 2026』のチラシ。
そしていよいよ後半です。照明が落ち、序盤のキャストが登場すると……いきなり笑いが漏れる。だって、やっと出てきた茶風林さんと肘岡拓朗さんが、ヒャッハーな格好してたから。
後半の演目は『O-KUNINUSHI 2』。以前の公演にも登場した、大国主神の物語の続篇です。確かに前回、予告篇やってたけど、まさかのちの大国主神である大己貴命のお兄様方がヒャッハーな設定でやるとは思うわけがない。
しかものっけから茶風林さんと肘岡拓朗さんが歌いだす。しかもハードロックで。正直、このやり口はまったく想像してませんでした。イベントの種類変わってないか? と首を傾げるほどの異彩っぷりです。
あと、ナレーションを担当した川原慶久さんが冒頭でミスをした。雷鳴の効果音のあと、川原慶久さんのナレーションで始まるのですが、微妙に雷鳴と内容がそぐわない。と思ったら「読み始めるページを間違えた! ナレーターはふたたび雷鳴を所望する!!」だからそりゃあ笑う。しかし、今回は内容がだいぶコメディ寄りなので、こういうハプニングもアドリブも全然アリ。
要は“因幡の白ウサギ”のエピソードなのですが、これに現代的な感覚とユーモア、あと『北斗の拳』を乗っけて魔改造した感じ。だいぶふざけてますが、きちんと物語の描くべき点は拾っているので、アレンジとしてとても面白い。依藤聡演じる白ウサギと、ランズベリー・アーサー演じる大己貴命をなんでか繰り返し甦らせてくれるお姉様たちの変な色気がまたおかしかった。
そして歌は1回だけではなく、何回も出てくる。基本的に作りは一緒なんですが、いいポイントで、ちゃんと内容が伝わりやすい歌詞を乗せているので、燃えるし笑える。
しかもクライマックスの曲では、観客も演者と一緒になってサイリウムを振りました――実は、休憩時間に、「『サライ』のタイミングで振ってもらう場面があるので」と言い出して、サイリウムを1本100円で販売してたのです。100円ならいっそ料金に含めて、席にひとり1、2本ずつ置いておいてくれれば良かったのに、と思いましたが、ちょっとした衝撃で光り始めてしまうので、あとから配布も致し方なしか。私は2本買いました……1本はお土産代わりに持って帰ろうと思ってたんですが、本当にうっかり折ってしまいそうだったので、潔くクライマックスで2本ともいきました。
これまでの酒林堂らしくない――と言いたいところですが、脚色やアドリブでユーモアを加えることはこれまでにもあったことで、むしろ正しく発展している、と言えるのかも。もともと怪談朗読であった怪し会が発展して誕生した催しですから、もっと怪談要素のある話もやって欲しい、と思う一方で、表現実験が好きな者としては、お寺にて、基本蝋燭の灯りのみで、語りを聴かせる、というフォーマットの上で色々と遊んでみる、今の方向性も好きなのです。
大国主命の伝説はまだまだありますから、当然のように次回も続きそうです。
終演後、演者の皆様が見送りに並ばれるため、ここでは話したい人や、サインを求める人が大挙する。可能なら全員にサインをいただきたいところですが、今回、私は中原麻衣さんにお願い致しました――私はその昔、『らぶドル』という作品がアニメ化されたときにノヴェライズを手懸けていて、このアニメに桐生琴葉役で出演されていたのが中原麻衣さんでした。なので、最初に酒林堂に出演されたときから、サインをお願いしたかったのですけれど、なかなかその機会が得られなかった……というか、なにせ終演後は人が大勢いますし、日によってはこちらも疲れ果てていて、あんまり長くいられなかったりしたのも大きい。
出来れば、『らぶドル』のキャラクターCDにサインをお願いしたかったところながら、残念ながら自宅から発掘する余裕がなく、以前に抽選会で当選した、このイベントの台本と同じデザインの自由帳に頂戴しました。次の機会までに、CDを探し出しておこう……。


コメント