『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公開記念舞台挨拶ライブビューイングつき上映 at TOHOシネマズ上野。

 なんか今日もまたTOHOシネマズ上野で映画鑑賞です。意図的にやってるわけでなくたまたま……まあ、他にもやってる作品や企画なら、近い方がいい、と考えてたら自然にそうなるんですが。やや空模様が不安なので、今回は電車を使いました。
 鑑賞したのは、2018年にテレビシリーズが放映、Netflixでの配信が世界的な好評を博した作品待望の劇場版、兵器からひとの心を伝える代書屋=自動書記人形となった少女が、伝えられなかった想いを届ける完結篇劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(松竹配給)
 封切りまでまあ色々ありましたが、それを乗り越えた見事なクオリティ。正直なところ、作り手としては“ズルい”と言いたくなる趣向が多いけれど、奇を衒わずストレートに叩きつけてくるので胸に響きます。テレビシリーズから通してヴァイオレットが抱いていた想いはどこへ着地するのか、が最大の眼目ですが――率直に言えば、個人的にはこっちのラインには保ってきて欲しくなかった。ここまでヴァイオレットが辿ってきた道の先にも希望はある、と思えたので。しかし、だからといってこの結末が悪いとも思いません。どうしてこういう展開になったのか、という心情の描き方は見事ですし、アイテムやモチーフ、劇場版で新たに語られるエピソードとの絡め方も秀逸。そして、その後も細部は語らず、後年の人物に代弁させる趣向もうまい。私は基本、創作物で泣くことはないんですが、それでも目頭が熱くなる場面が幾つもありますし、場内からすすり上げる声が何度も聞こえてきました。2時間20分はアニメ映画として少々長めなんですが、それがまったく気にならない、圧巻の出来映え。待った甲斐がありました。
 この時間の上映は、ほかの劇場にて実施される舞台挨拶のライブビューイングが上映後に行われました。ヴァイオレット役の石川由依、ギルベルト役の浪川大輔、主題歌を担当したTRUE、そして監督の石立太一が登壇しました。
 経緯を思えば当然なんですが、最初の挨拶から監督が早々と感極まってしまい、続いて話を振られた石川由依までしゃくり上げている。しかしそれも当然だと思います。本当に、スタッフは一時期極めて厳しい状況に置かれた訳ですし、絵の仕上がりを待つ声優たちも苦しんでいたわけで。
 しかし、舞台挨拶のなかで例の件に触れず、そして作品自体も、それに引っ張られることなく、壮絶な過去を背負いながらも、ひとの切なる想いを届けて成長したヴァイオレットの姿を美しく描ききることに徹したのは素晴らしい。あの事件で犠牲になったひとびとも、たぶんそこにこだわって悲愴な作品になることなど望まなかったでしょう。きちんと受け継ぎ、前を向いて完成まで漕ぎ着けた想いが、作品そのものからも、舞台挨拶のコメントからも滲んで見えました。
 見せ場についての質問では、後年の場面で、語られていない部分を匂わせる描写が無数に鏤められている点に石川由依が触れると、石立監督も更に細かいところまで言及。何度観ても発見があるような作り方をしていることが窺えます。人気声優が集まる作品では、スケジュールの都合で声が別録りになることも珍しくないそうですが、今回、見せ場はしっかり揃っていたために、相手の演技を観てかなり感情を作ることが出来たそう。とりわけクライマックスでは石川由依は終了後、号泣するくらい入れ込んでいたり、浪川大輔は声がひっくり返るような芝居もしていたそうですが、監督は「感情が乗っている芝居を使う」「口パクに合わないなら、絵の方を直す」ぐらいのつもりでいたんだそう。主題歌を担当したTRUEも、歌として別個で成立させるのでなく、劇伴の延長で聴いてもらうことで、自然と世界観に馴染むように工夫した、と発言していて、すべてが一丸となって盛り上げていたことが解る。
 まだまだ色々と話し足りない雰囲気を濃厚に滲ませつつ、舞台挨拶は終了。本篇のクオリティも満足なら、舞台挨拶も作り手の想いが迫ってくるようで、充実したひとときでした。

 ところでこの『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、入場者特典として原作者書き下ろしの短篇を収録した小冊子が貰えます。3種類のなかからランダムで貰える……揃えるためには、在庫にあるあいだに最低3回、下手をすればそれ以上観なきゃあかんのか。
 ちなみに私が貰ったのは『ベネディクト・ブルーの菫』でした。……他のも読んでみたい気がしますが、そのためにまた観に行くのもアレだよなあ……おんなじの引く可能性もあるし。

 鑑賞後、きょうも外で食事はせず、家に帰ってから食べることに。まだまだ行動に制約がありますが、だんだん人出も増えてきており、まして今日は連休初日。迂闊に食べるところを探そうとすると、食いっぱぐれそうな気がしたので。

コメント

  1. […] 原作:暁佳奈(KAエスマ文庫・刊) / 監督&絵コンテ:石立太一 / 脚本:吉田玲子 /  […]

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