久々の映画館で観るのは、“定吉二人キリ”。

 緊急事態宣言の延長により、映画館の休業要請も延長……ですが、さすがにこんどの延長は反発を招いたらしい。全国興行生活衛生同業組合連合会からもかなり事態を重く見た声明文が出ていますが、これを待たずに一部のミニシアター、具体的には、系列館が全国展開していないところは、入っている商業施設そのものが休業を決定しているところを除き、12日から営業を再開している。昨年の再開直後のような座席の間引きを実施したり、上映終了を20時以前にしたり、という、可能な範囲での配慮も実施してますが、それでも営業を再開したことは、経営やスケジュールが切羽詰まっている、という面もあるでしょうが、東京都の曖昧な判断に対する反発のほうが強いのでは、と踏んでます。
 私自身も、今回の映画館やプラネタリウムに対する休業要請には納得していないひとりであり、その効果そのものにも疑問を抱いている――しばらく感染者数が高止まりしていたこともそうですし、昨日やっと減少に転じましたが、もし映画館やプラネタリウムなどのひとの流れが原因であれば、もう一段階早く効果は出ていたはず。ある程度までひとの流れを制御する必要はあるでしょうが、それが映画館などへの休業要請で実現するものとは思えないのです。そもそも、行き場を喪ったひとたちが却って、開いている商店街や飲食店に集中しているように見えます。実際、私の自宅近所の有名スイーツ店とか商店街は、どう見ても平常時よりひとが多い。ずーっと家に籠もっていては精神衛生上良くないことも解ってるんですから、もう少し営業する施設を増やして、密度を下げればいいのに。
 そんな考えの私ですが、要請に従い休業しているところも、世間の目や行政との兼ね合いもありますし、それぞれに判断しての決断であるののは解りますから責める気はありません。けれど、営業しているところは応援したいし、出来るだけ足を運びたい。
 先週末は『ファミコン探偵倶楽部』にかまけたり、墓参りに行ったり、と時間が作れなかったため見送りましたが、『ファミコン探偵倶楽部』は思いのほかあっさりと1周してしまった。心配していた陽気も、とりあえず日中は問題なさそうだ。というわけで、約3週間ぶりに映画館に足を運びました。

 しかし困ったことに、空は梅雨の走りのような曇天。天気予報によれば、帰宅するくらいの時間までは保ちそうだけど、だいぶギリギリ。しばらく悩み、やがて覚悟してバイクを出した。このところ乗る機会がなかったのでどうしても出したかった。それに、この陽気ならば、バイクで出かけてくるひとは少ないでしょうし、有楽町界隈で最安値の駐車場も空いている、と踏んだのです。
 似たようなことを考えるひとは多いようです。よく使う駐車場の入口には、バイクだけ“満車”の表示が出ていた。
 念のために入って、実際に駐車スペースを確認したけど、やっぱし埋まってる。やむなく、ややここより高いけど空いてる率の高い別のところへ急遽移動。ほんとは早めに駐めて、映画の前に昼食を摂っておきたかったのですが、映画館まで歩く距離が伸びてしまったため、後回しにしました。
 訪れたのは約1ヶ月ぶりのヒューマントラストシネマ有楽町。鑑賞したのは、1976年に製作され物議を醸した問題作、昭和初期に起きた《阿部定事件》をモチーフに、男女の常軌を逸しながらも崇高な愛を描き出した愛のコリーダ〈修復版〉』(Unplugged配給)
 噂通り、ヤってばっかりでした。そして、そのくせそんなにイヤらしいとも感じない。むしろ美しい。
 完全に史実通りではないにせよ、かなり証言や記録を踏まえた脚本は、社会通念からははみ出しながらも、ある意味では純粋極まりない、彼らなりの愛の昇華を克明に辿っている。校長というパトロンを持ちながらも吉蔵にこだわった定は、他の男ではその欲望を昇華しきれなかったし、吉蔵もまた、極端すぎる懐の深さ故に、定を受け入れるに相応しすぎた。本篇の描写だと、確かに吉蔵が死んでしまったのは必然だし、定の行為も異常ではあるけれど決して突飛ではない。衝撃的なラストシーンもまた、いっそ尊く映ります。間違いなく芸術、けれど疑いようもなく問題作であるし、ほかの監督、違う時代には撮りえない傑作。
 とにかくこの作品、最初の公開時には紆余曲折があり、批判を逃れるために最初の公開はかなり乱暴なカットや合成を施されてしまったらしい。実質的な製作国であるフランスでは完全無修正でのリリースも実現しているそうですが、この〈修復版〉でもまだ基本、局所はぼかしが入ってます。その点が不満、という向きもありましょうが、個人的には、ぼかしにしてても本篇の価値は減じないと思う。充分に刺激的。

 ……本当はこれ、新宿武蔵野館で観るつもりだったのよ。しかし、短期間ながら営業自粛をしていたために、上映作品が詰まった結果、武蔵野館の『愛のコリーダ』は夕方以降の1回しかない。個人的には昼間、早い時間に観たかったので、『戦場のメリークリスマス』と同じヒューマントラストシネマ有楽町を利用することになりました。こっちも、11時40分という、昼食時にばっちり被った時間割がちょっとイヤだったんですが、17時スタートよりはまだ行動しやすい。
 とはいえ終了は13時35分、このまんま腹ぺこでパイクに乗ったら途中で気が遠くなりそうなので、最近お気に入りのカレーうどんを食べてから帰宅。ほぼ理想に近い味がリーズナブルにいただけるのは本当に有り難い。
 念のために雨具も携帯して出かけましたが、幸い家に着くまで降られることはありませんでした。明らかに雨の気配を孕んだ雲が広がっていて、ずーっとヒヤヒヤしてましたが。

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  1. […] 原題:“L’empire des Sens” / 監督&脚本:大島渚 / 製作代表:アナトール・ドーマン / 製作:若松孝二 /  […]

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