『八つ墓村』再映画化だって。

横溝正史「八つ墓村」完全新作映画化 松竹×ソニー配給で秋公開決定|シネマトゥデイ
シリーズ累計発行部数5,500万部を突破する、推理作家・横溝正史によるミステリーの金字塔「八つ墓村」が、完全新作として映画化され、秋に劇場公開されることが決定した。

 この数年ず~っと、「どこかで横溝正史の金田一耕助シリーズをまた映画化してくれないかな~」と思ってました。
 戦後を知る人が減ってきたいま、当時の雰囲気を的確に再現するのは難しくても、映像技術は上がっているので、現代なりにそのおどろおどろしさは表現出来るでしょうし、それに、昔より映像化における原作へのリスペクトが高くなっているので、作り手が間違わなければ、原作ファンにも映画好きにも納得のいくものが出てくるのではなかろうか、という期待があったのです。
 個人的に、いちばん採り上げてほしかったのは『本陣殺人事件』です。なにせ金田一耕助のデビュー作にして、トリックの衝撃度で有名な作品でもあり、ドラマ化も映画化もされてますが、ドラマ版は古谷一行いちどだけ、映画は市川崑監督&石坂浩二主演のコンビで原作準拠のキャラクターが定着する以前の、ヒッピー風な中尾彬版のみ。アート映画の佇まいがある中尾彬版もそれはそれでいいんですが、出来れば原作準拠のスタイル、かつ、あのトリックを出来るだけ克明に、リアルに描いたものが観たい。実は岩井俊二監督が市川崑監督と組んで撮影するという計画があったらしい1ので、その計画に準ずる形で実現することに期待してたんですが。
 で、ここに来てようやくの情報で、嬉しいことは嬉しいんですが……配給がソニーと松竹、というのがちょっと気になる。ソニーはともかく、松竹といえば、野村芳太郎監督版がある。石坂浩二以降の作品なのに、あえて金田一のイメージを原作準拠にせず、あまり作り込まない渥美清で撮ったヴァージョンです。ミステリではなく、ホラーとして脚色していたため、雰囲気は凄かったけれど、名探偵金田一耕助の活躍、として鑑賞するには物足りない。同じ松竹が絡んでいる、という事実に、ちょっとだけ、「まさか野村芳太郎版のリメイクじゃ……」という悪い予感もしてたりする……いや、解釈は様々でいいんだけど、それは私ばかりか、原作や金田一シリーズが好きなひとの望む者じゃねーよなー、と疑ってしまうのです。考えすぎだと思うけど。

 ちなみに、最初の発表では金田一耕助を誰が演じるのか、はおろか、監督すら伏せられてます。誰がやろうと、私自身は基本、観に行くことに変わりはないんですが、こういう発表の仕方をされると想像を膨らませてしまう。
 なにせ横溝正史作品は、本気で撮ろうと思うと、なかなか手間がかかる。原作の年代に添うなら終戦前後のおよそ30年ちょっとの雰囲気を再現するのも一苦労ですし、有名作は概ね地方の集落。『悪魔が来りて笛を吹く』みたいな例外もありますが、あれだって、舞台となる屋敷をどう確保し、映像に仕立てるか、という厄介さがある。『八つ墓村』だって、どう映画化するにせよ、クライマックスの“あの”くだりでそれなりのセットやロケーションが必要になる……避けた例を覚えてるけど、消化不良のきらいは否めなかったので、今回はある程度はしっかりやる……と信じたい。
 そうなると、いま映画化するなら、ある程度の予算を委ねられる監督である可能性が高い。で、いまこの規模の作品を手懸けられて、一定の成果を期待出来る監督とは誰か、と考えてみる。
 ……清水崇監督、ってアリだろうか。
 ミステリというイメージはないけれど、ホラーの雰囲気を重視するならあり得ない選択ではない。評価とか実際の興収は色々あるとしても、新作発表のペースはかなり早い。直近に背筋原作『口に関するアンケート』の予定は出ているけれど、撮影やポストプロダクション、上映枠の都合で、同じ監督の作品が短い間隔で公開されることは割とある。何より、想像してみたら、ホラーを手懸けてきた監督による金田一もの、というのも面白そうではある。ホラーといえども、伏線に基づく仕掛けやどんでん返し、といったミステリ的な趣向はよくあるし。
 そこまで考えると、もっとありそうなのが、中村義洋監督です……っていうか、こちらの方が正直、しっくりは来る。初期はホラーが多かったですが、『アヒルと鴨のコインロッカー』から伊坂幸太郎作品を筆頭にミステリを複数手懸けていて、ジャンルに囚われずキャリアを積み、成果を上げている。
 ……どっちにしても、私の想像であり妄想です。どなたが監督しようと、誰が金田一耕助を演じようと――最悪、金田一が出てなくても、ちゃんと映画館に観に行きます。出来不出来は自分の目で判断する主義ですから。

  1. 市川崑物語』のなかでそう触れていた。[]

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