どこにもいない自分を探してる。

 プログラム切替直後でもなければ月曜日でもありませんが、午前十時の映画祭14を観てきました。該当する日に作業が佳境、もう今回の作品は残すところ3日、というこの段階で本篇を最優先にするのは私には必然でありました。
 劇場は私にとってメインのTOHOシネマズ日本橋。最近、ここへの移動はもう電車しか使いません。自転車は、ヘルメットの推奨と規制の強化が始まったことで、若干面倒くさくなってしまった……バイクはもっと厳しくなってますが、そうなってから長く、経験の蓄積があるので、今さら気にはならないんですが。ただ、開始時間が朝早くの回は、ラッシュアワーとかち合うので、それだけはしんどい。電車通勤の経験は皆無に等しいのでね……。
 ともあれ鑑賞した今コマの作品は、ヴィム・ヴェンダース特集のもう一本、心に傷を負った男の宛のない旅路を、情緒的に描いた『パリ、テキサス』(フランス映画社初公開時配給
 予想はしてたけど、徹夜のダメージが残っている身には少々しんどい作品でした。特にラストの一番いいシーンが。静かすぎて、淡々としすぎてて。
 ただ、映画としては素晴らしいと思う。トラヴィスという男が彷徨していた謎を探る物語なのかと思いきや、弟とのロード・ムーヴィーになり、家族のドラマから終盤は親子のロード・ムーヴィーに転じる。どこか掴み所のない物語なのですが、その過程そのものが、トラヴィスという人物の苦悩を如実に象徴している。
 最初は記憶を失っている風ですが、しかし実はそれさえも定かではなく、トラヴィスは終始、己のあるべき姿を模索している。弟の家で我が子と再会したあとは、父親としての正しい姿を追い求め、そして家族として必要な妻の居場所を探すため、息子とともにまた旅立つ。それで最後にどうなることを望むのか、は結局明白にならず、宙ぶらりんとも言える幕引きはある意味で必然でもある。
 たぶんこれは、“あるべき姿”を求めがちな人々の、心の放浪を映像にしたものなのでしょう。自身が思い描くものがなく、他の人間を安易にそこに閉じこめることも出来ない優しさゆえに、結局彷徨い続ける。いちおう実在はしているのに、劇中ではまるで幻のように扱われるタイトルは、トラヴィスという男の優しさ、哀しさを象徴している。
 アメリカ西部の広く荒涼とした光景と、ライ・クーダーの物悲しい音楽もハマった傑作……なんだけど、やっぱりゆったりとしたテンポゆえに、疲れているときに観るのはちとキツかった。

 鑑賞後は、劇場の入っているコレド室町2のすぐ近くにある神田らぁめん悠にて昼食。このあいだからここの特選らぁめんが食べたかったのです。

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