『ミミック2』


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原題:“Mimic 2” / 原作:ドナルド・A・ウォルハイム / 監督:ジーン・デ・セゴンザック / 脚本:ジョエル・ソワソン / 製作:ジョエル・ソワソン、マイケル・レーイ / 製作総指揮:ベス・アン・キャラブロ、ケイリー・グラナット、ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン / 撮影監督:ネイサン・ホープ / プロダクション・デザイナー:デボラ・レイモンド、ドリアン・ヴァーナッキオ / 編集:カーク・M・モッリ / 衣装:クレア・シュクレアー / キャスティング:サラ・カッツマン / 音楽:ウォルター・ワーゾワ / 出演:アリックス・コロムゼイ、ブルーノ・カンポス、ジョン・ポリト、ウィル・エステス、ギャヴィン・ユージン・ルーカス、エドワード・アルバート、ジョディ・ウッド、ジム・オヘアー、ブライアン・レックナー、ポール・シュルツ / 初公開時配給:GAGA-HUMAX / 映像ソフト日本最新盤発売元:Paramount Japan
2001年アメリカ作品 / 上映時間:1時間22分 / 日本語字幕:?
2002年5月18日日本公開
2021年5月21日映像ソフト最新盤発売 [DVD VideoBlu-ray Disc]
DVD Videoにて初見(2021/10/1)


[粗筋]
 小学校で生物を教えているレミー(アリックス・コロムゼイ)は男性関係に恵まれていない。もともと無類の昆虫好きで、所構わず昆虫の蘊蓄を語ってしまう悪癖が人を寄せ付けないのだが、近づくのもろくな男ではない。先日まで付き合っていた男に至っては、ストーカーとなってれを悩ませていた。
 だがある日を境に、元カレの姿が見えなくなった。そればかりか、レミーと少しいい雰囲気になった男たちが次々と惨い姿で発見された。クラスキー刑事(ブルーノ・カンポス)ら捜査陣はレミーに対して疑いの目を向け、モリー校長(ジョン・ポリト)は外聞をはばかりレミーに忠告、激昂したレミーは校長と揉めた結果、解雇を言い渡されてしまう。
 そのあいだにも、レミーの周囲で悲劇は繰り返された。背後には、4年前に起きた、感染症の原因となるゴキブリを駆除するために放たれた人工の昆虫《ユダの血統》が存在していることに、レミーはまだ気づかない。そして、その魔手が思わぬかたちで彼女に迫っている、ということも――


『ミミック2』本篇映像より引用。
『ミミック2』本篇映像より引用。


[感想]
 もうだいぶ払拭されてきたとはいえ、やはり少し前の作品を観ると、「続篇に名作なし」と言われるのも致し方なし、と痛感することが多い。続篇の製作は1作目のヒットがきっかけ、という場合が大半なので、明らかに予算は増え豪勢になっているのに、内容的に見劣りがする、というのはだいぶ切ない。
 しかし、たぶん予算も前作と大差なしで、クオリティが下がっているのは余計に辛いものがある。
 前作を手懸けたのは、のちにオスカーにも輝くギレルモ・デル・トロ監督だった。まだハリウッドに進出したばかりで発言力は低く、決して思い通りに仕上げられなかった、というのも想像に難くないが、先行する『クロノス〈HDリマスター版〉』などで示したクリーチャーへの愛情と、グロテスクなユーモアは既にちりばめられていて、確かな作家性の萌芽が見える。それゆえに、時を経たあとで観るほどに味わいは増している印象さえある。
 それを受けて製作された本篇は、どういった事情かは知らないが、スタッフ、キャスト共に総入れ替えになった。20年を経たいま、クレジットを眺めても、際立った活動をしている人物が見当たらないことが、如実に本篇の出来映えを象徴しているようだ。
 序盤からテンポの悪さが引っかかるが、観ていて絶えず気にかかるのは、ドラマ部分にも恐怖描写にも、それを効果的に見せる工夫を終始怠っている、という点だ。
 最初のうちはそれらが解らないのは当然だが、物語が進むにつれ、惨劇が起きる兆候、そのトリガーとなる要素を明白にしていくことで、肝心の場面で恐怖を盛り上げたり、あえて空振りをして本当の衝撃に繋げる、などといった工夫があるはずなのだが、本篇は全般にそうした表現の工夫に乏しい。どうしてこのタイミングで犠牲が出るのかもいまいち解らない、という場面が多く、驚きよりも戸惑いを感じてしまう。
 いちおう、クリーチャー側にも行動原理は設定されている。ただそれにしても、狙う者と狙わない者に分かれる不自然さが残るうえ、そもそもどうしてクリーチャーがそういう行動原理を発動するに至ったのか、という契機があまりにもぼんやりとしている。或いはこちらが観落とした可能性も否定しないが、劇中で回想したり、中心人物が「あれがきっかけだったのでは?」と考察を巡らせる場面もないので、ただ急にクリーチャーが活動を始めた、というふうに映ってしまう。本篇の惨劇は前作から4年後であり、そこから劇中の現在まで、同様の被害は認識されていないようだし、それを仄めかすような描写もない。クリーチャーの特徴付けとしては決して悪くないのだが、ホラー的にもドラマ的にもまったく活かしきっていない、というのが率直にところだ。
 今回のクリーチャーは前作から更に変化を遂げているが、その生態は昆虫をベースにしているため、研究者でもあるヒロインがその知識を駆使して危険を回避しようとする。終盤の意外な展開も、劇中で語られている昆虫の特性、習性を踏まえており、ある程度の驚きや余韻を演出している点は評価出来る。この特性ゆえに、普通のホラーとは異なる展開、風変わりな締め括りとなっているのも面白い。しかしそれだけに、その配慮を全篇にわたって行き渡らせてくれていたら、と惜しまれるのだ。
 善し悪しを判断するには自分で観なければいけない、という主義ゆえ、私は鑑賞したが、ひとに「観たほうがいい?」と問われたら、「1作目だけでいいよー」と応えるだろう。認められるポイントもあるが、お薦めするには活用し切れていない。


関連作品:
ブラッド・ワーク』/『バーバー』/『MAY―メイ―』/『16歳の合衆国』/『ロード・キラー
クロノス〈HDリマスター版〉』/『エイリアン2 完全版』/『アラーニェの虫籠

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