『日本のこわい夜・特別編』監督:白石晃士/出演:くりぃむしちゅー他

 先日公開された『ノロイ』の監督・白石晃士によるスペシャルドラマ。お笑い芸人中心による心霊テーマのバラエティ番組が本物の心霊現象によって侵蝕されていく……というもの。『ノロイ』と同じく、実在のタレントや著名人を織りこみ、また挿入される怪奇現象の匙加減を調整することで、一般のフィクションにはないリアリティを付与するという、一種のメタ・フィクション的手法を使ってます。

 実に凝っているのですが、しかし序盤のいかにもインチキくさい前振りの段階でもうちょっとリアリティが欲しかったところ。例えば映画に映っていた怪奇映像なんてのはもう手垢が付きすぎて底の知れたものばっかりですし(だいたい『the EYE』のアレは監督の仕込みだといったい何度言わせたら気が済むのかあんたらは)、タレントのリアクションも一部さすがにわざとらしいところがあって鼻につきました。

 いちばん重要な舞台となる、実在した『呪怨』の家にしても、別の建物を選ぶべきでした――何故かというとあの建物、多くのドラマや映画で使用されているもので、他でもない『呪怨2』でも酒井法子演じるヒロインの実家として登場している。気づく私のほうが悪いとは思いますが、もうちょっと配慮が欲しい。

 しかし、そこで起きる現象と扱い方はなかなか出色でした。もともと『ほんとにあった呪いのビデオ』など実話系統を扱っていた監督だけあって、怪奇現象そのものもあまりわざとらしさがないし、同時に定石を踏まえつつうまく意表を衝いた恐怖を演出している。

 ただ――スタジオ収録を中断、現地で御祓いをしたあとのオチの部分はさすがにどうだろう。折角あそこまでやり抜いたのですから、最後までバラエティー番組の一部分という流れを守って欲しかった。ホラー部分のオチよりも、何も知らなかった女の子ふたりにネタばらしして、騙しているあいだの苦労や失敗を出演者同士で指摘しあっている箇所がいちばん楽しい、というのはさすがに拙いでしょう。

 オチの雑さを除けば、過程の怖さはけっこうよく出来ている、と思います。寧ろオチの切れ味よりも過程の質を重視したような組み立ても、ひとつの巧いやり方と言えるかも。この時期に放送したのは以前のオムニバスの時と同様、『ノロイ』の公開に合わせてのことだと思いますが、ラストはさておき過程は充分怖かった、という方はそちらもどうぞ。こんなもんじゃないから。

 ……ふと思ったんだが、この方のやり口ってなんとなく映像版の三津田信三さんという感じがします。あとは監督自身が出て来て怖い目に遭えば完璧なんだが。

コメント

  1. 冬野 より:

    ああ、そういうドラマだったんですか。お祓いシーンから見たんで、何をしたいのかよくわかりませんでした。

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