『猟奇的な彼女』8回戦

 実家に戻っているあいだに、父に押し切られて凜子は婚約する羽目になっていた。父の友人の息子で、実業家として活躍する“婚約者”の祖父江は、かつて凜子を目撃し見初めていたのだという。梨子の父の迫力と、彼が見つけてきた婚約者の大物ぶりを前に、三朗はついこのあいだ、自分が凜子の彼氏になったことを言い出せなくなってしまう……

 ……なんかもう、イベントがなきゃ話を転がせない、という悪癖が思いっ切り露呈した1話でした。婚約とか家族の登場と反対とか、あまりにもベタな要素が並んでうんざり。挙句に父親の最低な言動があって、正直引きました。正直、この親父に人の幸せを語って欲しくない。

 別にドラマとして定番の要素を用いるのは構いませんが、それを転がす上で凜子や三朗のキャラクターを活かせなければ意味はないのに、あらゆる出来事が個性を押さえつける方向にしか動いていないので、これまで以上に陳腐なメロドラマに堕しています。いや、メロドラマが悪いのではない。題名に“猟奇的な彼女”としているのに、彼女のそういう性格を一切役立てずに話を進めているのが困りものなのです。今回私がまともに笑ったのは三朗が凜子の父と飼い犬とに挟まれて苦悩している姿だけ、つまり凜子は関係ない部分でしたから。

 ここまでのエピソードで彼女の傍若無人、それでいて思慮は感じさせる言動でおかしみと優しさを感じさせたうえで今回の話に持ってくるのならば全体でのメリハリにはなりますが、そもそも運命の人云々の話であれだけ良さを潰したあとでなおもこういう展開に運ぶのは、原作の良さはおろか、それを踏まえた第1回でのキャラクターの良さもスタッフが理解していないとしか思えません。ほんとに、今にしてみると第1話がいちばんツボを押さえていて、そのあとはダダ滑りに悪くなっているだけだったなー。

 残すところあと3回のはずですが、ますます期待値は下がってます……ここから盛り返したとしても、まともにコメディとして機能させられるのってもはや1話ぶんぐらいしかないんだもの。

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