『放送禁止3 ストーカー地獄編』

放送禁止3 ストーカー地獄篇 [DVD]

監督・脚本・企画:長江俊和 / プロデューサー:春名剛生(フジテレビ)、角井英之 / 撮影監督:平尾徹 / VE:津田欽吾 / 編集:藤塚正明 / 音響効果:原田慎也 / 出演:山田秀雄、榊玲奈、春日武彦 / ナレーター:鈴木ゆうこ / 制作:フジテレビ、イースト / DVD発売元:Pony Canyon

2004年日本作品 / 上映時間:46分

2004年3月26日フジテレビ系列にて放映

2006年8月25日DVD最新盤発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/07/26)



[粗筋]

 2003年、フリージャーナリストの筒井令子は、ストーカー被害に遭っているという女性の密着取材を企画する。

 佐久間希美というその女性のもとには、半年前からストーカーらしき人物の影がまとわりついていた。無言電話、携帯電話への謎の着信、背後から聞こえてくる足音、挙句には取材の一週間前、彼女の1日の行動を隠し撮りした写真がポストに投げ込まれており、希美の恐怖心はピークに達していた。

 最近は真夜中に訪れ、しきりにチャイムを鳴らし、ドアを激しく叩くという行為にまで及んでいるという。しかし、覗き窓から確かめようとしたときには相手の姿はなく、希美につきまとわれる心当たりはないらしい。そこでスタッフは廊下や、郵便受けのあるロビーにカメラを設置、ストーカーの姿を捉えようと試みるが……

[感想]

 1作目は謎の失踪事件、2作目では大家族ドキュメントを追いながら、いずれも予想外の出来事や事件が発生したためにお蔵入りとなってしまったものを発掘、再編集して深夜に放送する……というシチュエーションにて製作されたドラマシリーズの第3作である。

 ニュース番組などでは一時期頻繁に採り上げられたストーカーを題材にし、例によって随所にヒントを鏤め、最後にサプライズが待ち受ける、という趣向を貫いた、意欲的な作りは相変わらずで、その点は高く評価出来る。実際にストーカー被害の模様を収めたドキュメンタリーっぽく見せかける技も、選考する2作に比べるとかなり洗練されてきた。

 しかし今回は、状況の組み立て方に不自然さが多いのが惜しまれる。最後のサプライズや、隠された真相に合わせたために生じる不自然さ、違和感であれば構わないのだが、その点を差し引いてもおかしな場面がある上に、真相が理解できた上で再確認してみると、果たしてここまでする必要はあったのか、こんな状況に発展する可能性はなかったのではないか、と思わせる、そういう不自然さが随所に見られるのだ。

 細かく突っついていくと未見の方の興を削ぐので一点だけ挙げると、女性が訴えるストーカー被害のなかで彼女にいちばん恐怖を齎すものとして、“しきりにチャイムを鳴らし、ドアを激しく叩き、「開けろコラ」などと罵る”という場面が描かれている。この場面、その印象ははっきり言ってストーカーというよりは借金取りに近い。暴力的な行為に及ぶストーカーもいるにはいるが、ここまで積極的に行動に出るストーカーに心当たりがなく、実際に会ったこともない、というのは奇妙だ。

 もっとおかしいのは、こういう形で定期的に接触してくるストーカーの正体を、定点カメラのみで探ろうとするスタッフの対処である。ストーカーの素性を探り、暴力的な行動をやめさせたいと考えるのなら、まず顔を確認する、或いは追跡してその所在を確かめるのが普通だろう。接触してくる時間帯や兆候が明確なのだから、幾らでも方法はあるのに、まともに探っていないのは不自然すぎる。ただ、結末で仄めかされる“真実”から類推すると、多少言い訳をする方法は思い浮かぶのだが、そこまで踏み込むとそもそもこんな映像を残したこと自体に不自然さが生じてしまう。

 思うにこの作品の欠点は、出来る限り多くの伏線やヒントを鏤め、それを紐解いて“真実”を探り出す楽しみを視聴者に味わってもらおうとした、そのサービス精神の匙加減を誤っているところにあるのだろう。ラストで仄めかされるひとつの事実を省き、スタッフの立ち位置をいっそう客観的なものにしてしまえば、この取材の記録が放送禁止扱いになり1年も封印されてきたことにもう少しリアリティが備わったはずだ。

 細々と腐したが、しかし先行する2作に較べてフェイク・ドキュメンタリーとしての完成度は高まり、伏線の張り方やヒントの提示の仕方も洗練されてきた分、観ているあいだの愉しさ、知的興奮も増しているのは間違いない。テレビでの放送は、劇場版にリンクした第6作でいったん止まってしまっているが、今後も継続されることを願いたいシリーズである。

関連作品:

放送禁止

放送禁止2 ある呪われた大家族

コメント

タイトルとURLをコピーしました