『バイオハザードIV アフターライフ』

『バイオハザードIV アフターライフ』

原題:“Resident Evil : Afterlife” / 原案:Capcomバイオハザード』シリーズ / 監督&脚本:ポール・W・S・アンダーソン / 製作:ジェレミー・ボルト、ポール・W・S・アンダーソン、ロバート・クルツァー、ドン・カーモディ、ベルント・アイヒンガー、サミュエル・ハディダ / 製作総指揮:マーティン・モスコウィック、ヴィクター・ハディダ / アソシエイト・プロデューサー:小林裕幸 / 撮影監督:グレン・マクファーソン,ASC,CSC / 視覚効果監修:デニス・ベラルディ / プロダクション・デザイナー:アーヴ・グレイウォル / 編集:ニーヴン・ハウィー / 衣装:デニース・クローネンバーグ / 音楽:トム&アンディ / 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチアリ・ラーター、キム・コーツ、ショーン・ロバーツ、セルジオ・ペリス=メンチェータ、スペンサー・ロック、ボリス・コジョーウェントワース・ミラー / 配給:Sony Pictures Entertainment

2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間37分 / 日本語字幕:太田直子 / PG12

2010年9月10日日本公開

公式サイト : http://biohazard4.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2010/09/04)



[粗筋]

 T−ウイルスの感染による人間のアンデッド化は世界中に蔓延していった。日本も例外でなく、渋谷には無数の感染者が彷徨していたが、その地下に構築されたアンブレラ社東京支部は未だ清潔を保っていた。

 そこへ、T−ウイルスに感染しながらアンデッド化せず、驚異的な身体能力を得たアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)と、彼女のクローンたちが急襲した。犠牲を出しながらも圧倒的な戦闘力で支部を制圧したアリスたちだったが、幹部であるアルバート・ウェスカー議長(ショーン・ロバーツ)は早々に支部を見限り施設を抹消、飛行機にて脱出してしまう。潜んでいたアリスが狙うも、思わぬ反撃に遭い、格闘のあいだに小型飛行機は墜落、酷い痛手を負った。

 それから6ヶ月、どうにか恢復したアリスは、かつて別れた仲間たちが向かったはずのアラスカはアルカディアという街を目指し、飛行機を駆っていた。だが、辿り着いたアルカディアには、ラジオ放送により呼び寄せられたと思しい無数のヘリや小型飛行機が打ち棄てられるばかり、大地も渚で果てている。人影は見当たらず、ようやく巡り逢った人間は、アリスを物陰から襲撃した。

 襲撃者をどうにか制圧したアリスは、それが彼女と別れ、先にアルカディアへと赴いた仲間の一人、クレア(スペンサー・ロック)だと気づいて愕然とする。しかも彼女は、胸に取り付けられた謎の装置によって、記憶を奪われている様子だった。

 アリスたちを放送で誘い出した者の目的は何なのか? 疑問を抱えながら、アリスはクレアを伴ってふたたび飛行機を駆り、カナダを越えてアメリカに舞い戻った。そして、既に焦土と化したロサンゼルスで、屋上に記された“HELP US”の文字と、幾つかの人影を発見する……

[感想]

 ゲームを原作にした映画のなかでは間違いなく最大の成功を収めているシリーズの最新作は、3D作品となった。しかも、潮流に乗る格好で2Dで撮影したものをポストプロダクションの過程で3Dに加工した作品とは一線を画し、『アバター』同様に撮影の段階から3Dに対応している。そのために、たとえば『タイタンの戦い』のような、どこか“飛び出す絵本”めいた、輪郭を切り取って無理矢理に作りだしたものとは違う、極めて自然な遠近感を表現している。

 ホラー映画ではありがちな、凶器がカメラのほうに向かって放たれる際の驚きもさることながら、本篇で惹かれるのは特殊効果をあまり用いていない、人物や建物の描写である。銃を構え、危険な気配のするほうへじわじわと迫る登場人物を、横や背後から映す場面など、その手の震えや荒く息を吐く様子が実に生々しく感じられる。極めて精細なデジタル撮影と組み合わせたからこその臨場感は、いちど体感してみるだけの価値はある。

 ただ残念ながら、物語としての出来映えはお世辞にもいいとは言いがたい。

 シリーズものと言い条、公開される時期も大きく隔たっているのだから、ある程度は旧作を知らなくとも楽しめる工夫が必要のはずだが、本篇は序盤からして、旧作を知らないと呆気に取られる展開になっている。しかも、そのくだりについていっさい説明がない。初見で最も戸惑うであろう大勢のアリスは、前作で登場したクローンたちなのだが、もう少し明確に触れるべきだろう。旧作のネタばらしになるから、というならそもそも出すべきではない。クレア登場の場面でも、直前の回想で引用した旧作の映像とあまり一致点が見いだせず驚きに繋がっていないし、全般に語り口が拙い印象だ。

 かと思えば、本篇のみで成立するストーリー自体もかなり安直で奥行きが乏しい。終わり方からして第5作も念頭に置いていることは明白で、或いはそちらに説明を委ねるつもりなのかも知れないが、あまりに初見の客を軽視した作りと言わざるを得ない。

 だが、細かな描写にはユーモアや、マニア心をくすぐる遊びがあって、全体としては飽きない仕上がりになっている。ゾンビの蔓延する世界という設定なのに、ゾンビ映画にあるべき感染から発症に至る経緯が齎すドラマや、ここでこういう人が襲われてこの人が姿を消すだろう、という基本パターンを意識して裏切っているあたりは、それ故に物足りないと感じる人も多いだろうが、解っているからこそのユーモアと思うと口許が綻ぶ。細かな台詞の応酬にも工夫があり、とりわけクライマックスの締めを飾るアリスの台詞は痛快だ。

 シリーズ全体に仕掛けられた謎解きやドラマの決着は次作以降に委ね、デジタル撮影ならではの精細な映像と3D効果の齎す臨場感、そしてアクションや細かな台詞など、ひとつひとつの描写そのものにたっぷりと拘って作りあげられた本篇は、だからストーリーの出来不出来について考慮するよりも、一種のアトラクションとして愉しむべきだろう。或いは純粋にシリーズの続きを知りたいという方のためのものだ。映画をアトラクションと割り切って愉しむのは無理、という方や、前作も次回作も追うつもりはない、という方は予め避けたほうが無難だ。

関連作品:

バイオハザード

バイオハザードII アポカリプス

バイオハザードIII

デス・レース

アバター

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