『PLANET OF THE APES/猿の惑星』

PLANET OF THE APES/猿の惑星 [Blu-ray]

原題:“Planet of the Apes” / 原作:ピエール・ブール / 監督:ティム・バートン / 脚本:ウィリアム・ブロイルズJr.、ローレンス・コナー、マーク・ローゼンタール / 製作:リチャード・D・ザナック / 製作総指揮:ラルフ・ウィンター / 撮影監督:フィリップ・ルースロ / プロダクション・デザイナー:リック・ヘインリックス / 編集:クリス・レベンソン / 衣装:コリーン・アトウッド / 視覚効果:ILM / 特殊メイク:リック・ベイカー / キャスティング:デニス・チャミアン / 音楽:ダニー・エルフマン / 出演:マーク・ウォルバーグ、ティム・ロス、ヘレナ・ボナム=カーター、マイケル・クラーク・ダンカンエステラ・ウォーレンポール・ジアマッティ、ケリー=ヒロユキ・タガワ、デヴィッド・ワーナー、リサ・マリー、エリック・アヴァリ、ルーク・エバール、エヴァン・デクスター・パーク、グレン・シャディックス、クリス・クリストファーソンチャールトン・ヘストン、マイケル・ワイズマン / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス

2001年アメリカ作品 / 上映時間:1時間59分 / 日本語字幕:戸田奈津子

2001年7月28日日本公開

2014年9月3日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

日本劇場にて初見(2001/08/04)

Blu-ray Discにて再鑑賞(2015/08/23)



[粗筋]

 2026年、宇宙空間。アメリカ空軍に所属するレオ・デヴィッドソン大尉(マーク・ウォルバーグ)は、多くの猿を用いた調査の任務に就いている。

 あるとき、磁気嵐の発生と遭遇した調査団は、訓練された猿の1匹・ペリクルーズをポッドに載せて派遣するが、間もなく電波障害によりポッドの行方が特定できなくなる。レオは上官の許可を得ず、自ら磁気嵐の観測をするためにポッドで宇宙空間へと飛び立った。

 だが、間もなくポッドは操縦不能に陥り、通信も不可能になる。磁気嵐に揉まれ、レオの搭乗するポッドは、為す術もなくいずこかの惑星に墜落した。

 湖に没したポッドから脱出したレオが、自分の所在地を把握するよりも先に、事態は急転する。突如、レオの周りに逃げ惑うひとびとが殺到した。みすぼらしい服を着た彼らの背後から、武装した一団が迫ってくる。ひとびとと一緒になって走り出したレオが見たのは、鎧に身を包み、武器を帯びた無数の、猿の軍団だった。

 レオは猿たちに捕らえられ、他の人間と共に檻に入れられ運ばれていく。その先にあったのは、多くの猿たちが文明を築き、人間を奴隷として虐げる、彼にとって想像を絶した世界だった……。

[感想]

 1968年に製作され、当時としては驚くべきクオリティであった猿たちの特殊メイク、それに衝撃を伴うアイディアによって、映画史にその名を残す名作『猿の惑星』を、『シザーハンズ』など、意匠にこだわったファンタジー的空間の構築に手腕を発揮するティム・バートン監督がリメイクした、2001年度の作品である。

 当時、作品の宣伝には“リイマジネーション”という表現が使われている。作り直したのではなく、新たに創造しなおす、といった意味合いであった、と記憶しているが、確かに本篇はリメイクとは呼べない――というか、リメイクとして観た場合、アレンジが著しく、またオリジナルの主題、そのアイディアに籠められていた批判性といったものをかなり壊してしまっているので、評価しづらい。

 だが、オリジナルに提示されていた要素を抽出し、状況の特徴や結末の衝撃といったものをなるべく温存して構築し直した、と捉えると、その試み自体が果敢であり、意欲的な作品であることは認められるはずだ。

 この作品の発表時点で、オリジナルから30年以上の時が経っている。視覚効果の技術は向上し、オリジナル発表当時とは比べるべくもない。それを有効活用して、ふたたび作品世界を築き上げた、という点においても本篇の価値は大きい。

 たとえば猿の表現だ。オリジナルではまだ“着ぐるみ”の雰囲気が拭えなかったが、本篇では実物と見紛うばかりに完成されている。しかも、オリジナル発表後に香港映画の影響で進歩を遂げたワイヤー・アクションを導入し、旧作にはなかった猿ならではの跳躍力も表現している。オリジナル第1作では、進化した猿たちは体毛以外ほぼ人間と変わらない性質と行動理念を持っているように描かれていたが、本篇においては知性や文明の発展ぶりに人類の影響を窺わせながら、仕草や儀礼の様式に猿ならではの行動様式を留めている。ほぼ人間と似たり寄ったりになっていく、というのも進化の捉え方としてはあり得るだろうが、本篇の解釈のほうが“猿に支配された世界”という感覚を受け入れやすい。

 オリジナルを歴史的名作たらしめるクライマックスの衝撃がだいぶ乏しくなっていることは本篇の背負った大きなマイナス点だろうが、あまりに人口に膾炙しすぎたサプライズをそのまま採用することはせず、それに近いインパクトをもたらすよう工夫していることは評価されていいだろう。元のサプライズの要素は作品に織り込まれているし、それを乗り越えたあとで示される結末も、一種“出オチ”めいた安っぽさは禁じ得ないが、諷刺の意味合いも汲み取れて味わいがある。

 ティム・バートン監督らしい意匠へのこだわりに、中盤を支える冒険パートの備えるクラシカルなSF映画の雰囲気も捨てがたい。オリジナルの衝撃には及ばないし、映像そのものやドラマの完成度においても、2011年に始まった新たなサーガに超えられてしまった感はあるが、決して創意のない作品ではない。なにより、CG技術の発展により影が薄くなっている特殊メイクや特殊効果の技術がその本領を活き活きと発揮している作品として記憶されるべき1本かも知れない。なにせ、本篇から5年後に発表されたクラシック作品のリメイク『キング・コング』では既にコングの表現はCGを中心としたスタイルにシフトしてしまっているのだから。

関連作品:

猿の惑星』/『続・猿の惑星』/『新・猿の惑星』/『猿の惑星・征服』/『最後の猿の惑星』/『猿の惑星:創世記(ジェネシス)

シザーハンズ』/『ビッグ・フィッシュ』/『ダーク・シャドウ

裏切り者』/『トランスフォーマー/ロストエイジ』/『ヤング・ブラッド』/『インクレディブル・ハルク』/『レ・ミゼラブル』/『デアデビル』/『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』/『カンガルージャック』/『サイドウェイ』/『ウォルト・ディズニーの約束』/『エレクトラ』/『47RONIN

キング・コング』/『ウルフマン

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