『ベン・ハー(2016)』

ベン・ハー ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

原題:“Ben-Hur” / 原作:ルー・ウォーレス / 監督:ティムール・ベクマンベトフ / 脚本:キース・クラーク、ジョン・リドリー / 製作:ショーン・ダニエル、ジョニ・レヴィン、ダンカン・ヘンダーソン / 製作総指揮:マーク・バーネット、ジェイソン・F・ブラウン、キース・クラーク、ローマ・ダウニー、ジョン・リドリー / 撮影監督:オリヴァー・ウッド / プロダクション・デザイン:ナオミ・ショーハン / 編集:ドディ・ドーン / 衣装:ヴァルヴァーラ・アヴジューシコ / 視覚効果スーパーヴァイザー:ジム・ライジール / 音楽:マルコ・ベルトラミ / 出演:ジャック・ヒューストン、トビー・ケベル、ロドリゴ・サントロ、ナザニン・ボニアディ、アイェレット・ゾラー、ピルー・アスベック、ソフィア・ブラック=デリア、マーワン・ケンザリ、モイセス・アリアス、ジェームズ・コスモ、ハルク・ビルギナー、デヴィッド・ウォームズリー、モーガン・フリーマン / 映像ソフト発売元:NBCUniversal Entertainment Japan

2016年アメリカ作品 / 上映時間:2時間3分 / 日本語字幕:?

日本劇場未公開

2017年2月8日映像ソフト日本盤発売 [DVD&ブルーレイセット:amazon]

公式サイト : http://paramount.nbcuni.co.jp/benhur/

Blu-ray Discにて初見(2017/06/03)



[粗筋]

 西暦が始まるころのエルサレム。名門ハー家の息子であるジュダ・ベン・ハー(ジャック・ヒューストン)には、血の繋がらない兄弟がいた。彼、メッサラ(トビー・ケベル)はローマ人であったが、幼いころからジュダとともに育ち、互いに支え合ってきた。

 しかし歳を重ねるにつれ、ジュダに対する劣等感を覚えはじめていたメッサラは、自らローマ軍に従い戦場へと赴く。

 それから数年。ジュダはかつて使用人であったエスターを妻とし、幸せに暮らしていたが、他方でローマ帝国はその版図を拡大、エルサレムにおいても無法な振る舞いが目立つようになり、抵抗する一部のユダヤの民衆と小競り合いを繰り返していた。

 そんな矢先、エルサレムにメッサラが帰還した。戦場で著しく傷つきながらも武功が認められ出世した義兄弟との再会をジュダは喜ぶが、メッサラはやがて現地を訪れる総督を安全に迎えるため、抵抗勢力についての情報を寄越すようにジュダに要求する。

 ジュダが安全を保証し、メッサラは引き下がったが、しかしジュダの願いも虚しく、悲劇は起きる。ジュダが密かに匿っていた反対勢力の少年が、ハー家の屋上から総督に向かって矢を放ってしまったのだ。家族全員が罪人になる、と諭され、ジュダは自分が罪を被ろうとするが、メッサラは上官の命を受けて、ジュダの母と妹も捕縛してしまう。ジュダはガレー船に送りこまれ、多くの奴隷とともに櫂を漕ぐ“動力”として酷使されることとなった。

 ――それから5年。ジュダはまだ生きていた。メッサラへの復讐の念を胸に過酷な環境に耐え続けた彼に、初めて千載一遇の機会が訪れる――

[感想]

 本篇はウィリアム・ワイラー監督も映画化したルー・ウォーレスによる小説の再映画化である――決して、ワイラー監督作のリメイクではない、というスタンスだったようだ。

 それ故に、ワイラー監督版と比較すると、重点を置く部分に違いが見られる。ワイラー版では行間に留めるのみだったジュダとメッサラとの過去の関係を、時系列に添って描き掘り下げているが、本篇は世界観の重厚さ、ガレー船での労働の過酷さや戦車競走の迫力もさることながら、この義兄弟の確執を描くことに力を傾注している印象が強い。

 だが、ワイラー版と比較して、いちばん強く感じられるのは、作品としての厚みに乏しいことだろう。恐らくはそれこそがいまひとつ成績が振るわず、日本では劇場公開が見送られることになった要因ではなかろうか。

 しかしこれはそもそも致し方のないことだろう。ワイラー版は3時間42分という長大な尺を用い、場面ごとにたっぷりと間を使って会話を重ねて物語や情感を深めているのに対し、本篇は2時間ちょっと、と実質半分程度の尺に収めている。ここに旧作と同様に重厚なドラマを詰めこむことは困難に等しい。だからと言って尺を伸ばして同じような重厚感をもたらそうとするのも、リメイクする意味は少なくなる。

 だからこそ本篇はワイラー版とは趣を違え、義兄弟の関係性を軸に物語を整理し、エンタテインメントとして伝わりやすく、解りやすいものに変更した、と捉えられる。それが旧作と比較したとき、軽薄に感じられるのは致し方がないところだが、しかし予め娯楽性を重視していた、と考えると、本篇は充分に成功している。

 表情の掘り下げ、演技の奥行き、という意味では浅いが、しかしテンポは良く、観やすくなっている。傑作であるには違いないが大時代的でもあったワイラー版と比較すると間違いなく親しみやすいし、ラストまで鑑賞するのに根気や時間的余裕も不要だ。

 また、旧作はセットを組んで再現せざるを得ないためにどうしても画面から書き割りの雰囲気を排しきれていなかったが、本篇は同様に実物のセットを組みつつCGでも補っているため、画面に広がりが生まれ、時代の空気を濃密に感じられる映像に仕上がっている。この辺りの努力と工夫に抜かりはなく、評価に値するポイントと言える。

 しかし、この映像の緻密さが、せっかくセットを用意して撮影した戦車競走のシーンにいくぶん虚構めいた印象をもたらしているのは残念なところだ。映像ソフトに収録された特典には、撮影の模様がしっかり収録されているし、本篇でもCGでは再現しきれない緊張感や説得力はしっかりと織り込まれているのだが、なまじ“どんな映像でもCGで再現可能”と思われがちな時代であり、事実、遠景はほぼCGで再現しているがゆえに、工夫や努力が伝わりづらいのがもったいない――無論、苦労しました、であるとか、大変でした、ということを伝えるのが映画の使命ではないのだから、それを印象づけていないのは正しいことなのだが、如何せん、多くの映画ファンにとって、大前提にCGのない時代に作られた傑作があるのが悩ましいところだ。

 ワイラー版と本質的には変わりないクライマックスと、その後に添えられたエピローグにいささか唐突の感があることを除けば、ストーリーはよく整頓され道筋や主題も明確だ。大時代的な悲劇色こそ乏しくなったが、物語が備える娯楽性はしっかりと引き出していることも評価出来る。ただ、この作品、このテーマに対し、多くのひとが求める水準と比較すると、本篇はあまりに素直すぎたのだろう。往年の、あのクオリティに迫らなければ納得できない、という層からは容赦なく批判されるだろうが、大スクリーンでの上映を回避しなければならないほど不出来な作品ではなかった、と私は思う。

関連作品:

ベン・ハー(1959)

ナイト・ウォッチ』/『デイ・ウォッチ』/『ウォンテッド』/『リンカーン/秘密の書』/『それでも夜は明ける

アメリカン・ハッスル』/『猿の惑星:新世紀(ライジング)』/『ラストスタンド』/『マン・オブ・スティール』/『LUCY/ルーシー』/『ナチョ・リブレ 覆面の神様』/『トランセンデンス

ノア 約束の舟』/『ポンペイ』/『エクソダス:神と王』/『沈黙−サイレンス−(2016)

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