『さそり』

さそり [DVD]

原作:篠原とおる / 監督:ジョー・マ / 脚本:ジョー・マ、ファイア・リー / 製作:松下順一 / プロデューサー:米山紳、サム・レオン / エグゼクティヴ・プロデューサー:加藤東司 / アクション監督:ウォン・ワイファイ / 撮影監督:ジョー・チャン / 美術:サイモン・ソー / 編集:アズラエル・チャン / 衣装:フューベ・ウォン / 音楽:吉川清之 / 主題歌:中村中『怨み節』 / 出演:水野美紀、ディラン・クォ、サム・リー、ブルース・リャン、エム・ウォン、石橋凌夏目ナナ、ラム・シュー、サイモン・ヤム / 配給&映像ソフト発売元:Art Port

2007年日本作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:野崎文子 / R-15

2009年8月8日日本公開

2010年10月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.artport.co.jp/movie/sasori/

DVD Videoにて初見(2011/03/07)



[粗筋]

 婚約者ヘイタイ(ディラン・クォ)の家族を鏖殺したかどで投獄された松島奈美(水野美紀)――だがそれは、彼らの帰りを待つ奈美を襲った4人の暗殺者たちが、ヘイタイの命と天秤にかけて、彼女に強要したことだった。

 愛する男から恨まれ、刑務所では所長(ラム・シュー)の欲望の対象にされ、更には刑務所内で女囚たちのボスとして君臨するダイユー(夏目ナナ)に目をつけられ……しかしそれでも、平穏な暮らしと愛する者とを奪われたことへの憎悪が、奈美の心から消えることはなかった。

 奈美は刑務所内の闇試合で負傷したダイユーの妹を殺害し、ダイユーを挑発すると、ダイユーたち一派を倒す。刑務所の看守によって懲罰を受け、瀕死の状態となって森に捨てられるが、森の中で屍体を集める男(サイモン・ヤム)によって救われた。

「死の淵から蘇った者は、武術の達人になる」

 そう嘯く男によって鍛えられたあと、奈美はふたたび街へと舞い戻った。彼女を闇へと堕とした者たちに復讐するために――

[感想]

 梶芽衣子が主演した『女囚さそり』シリーズのリメイクである。私自身はオリジナルのほうを観ていないのだが、今回レンタル店で衝動的に本篇を借りてしまったのは、香港映画の名優サイモン・ヤムと個性派ラム・シューの名前がキャストに並んでいたからだ。

 このふたりの名前以前に、監督やアクション監督など、主要スタッフを眺めれば解る通り、本篇はほぼ香港のスタッフによって製作されている。オリジナルがどんな映画だったのかは知らないが、少なくとも本篇は、香港らしいB級アクション映画として捉えて鑑賞するのがいいだろう。

 観れば観るほどに、良くも悪くも香港映画なのである。映像のセンスは高いし、ワイヤーを用いたアクションは独特の迫力に満ち、その趣向も容赦ないが、如何せん話の展開に説得力がない。何故暗殺者たちは4人も雁首揃えて奈美に犯行を委ねたのか? どういう裁判が行われてああいう刑が執行されたのか? 刑務所が半ば治外法権となっているのは何故なのか? 奈美はいったい何を企んで刑務所内で立ち回っていたのか? とにかくいちいち説明不足で、真面目に観ていると頭の中で疑問符が飛び交いっぱなしになる。あとでちゃんと収拾がつけられるのかと言えば、まったくついていない。

 ただ、B級と割り切って鑑賞すれば、そういう支離滅裂さも意図的に仕掛けているように映り、なかなか愉しいのも確かだ。まだ戦い方を知らない段階での、刑務所での身悶えるような戦い方は、洗練されたアクション映画ではお目にかかれない迫力があるし、鍛えられたあとの常識を超えた戦いぶりもまた、ところどころ意味不明に陥りつつも様式美に富んで優れている。さすがに、ハリウッドにも影響を与えたアクションの本場が手懸けているだけのことはある。『カンフーハッスル』でも異様な存在感を発揮するブルース・リャンとの常軌を逸した戦闘シーンなどは、かなり見応えがある。

 いまひとつ裏付けが足りていないものの、終盤のドラマもなかなかに趣がある。敵味方共にボロボロになったその虚無的な結末に、何ら救いを付け足さなかったのは好感の持てるところだ。

 オリジナルを愛する者には噴飯ものなのかも知れないが、無理に背伸びすることなく、チープなままに組み立てたアクション映画としての愛嬌は備えた作品だと思う――正直、強いてお薦めするつもりもないけれど。

関連作品:

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カンフーハッスル

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コメント

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