『ゴジラvsコング(字幕・3D・IMAX with Laser)』

TOHOシネマズ新宿が入っている新宿東宝ビル壁面にあしらわれた『ゴジラvsコング』キーヴィジュアルと、それを見下ろすゴジラヘッド、。
TOHOシネマズ新宿が入っている新宿東宝ビル壁面にあしらわれた『ゴジラvsコング』キーヴィジュアルと、それを見下ろすゴジラヘッド。

原題:“Godzilla vs. Kong” / 監督:アダム・ウィンガード / 原案:テリー・ロッシオ、マイケル・ドハティ、ザック・シールズ / 脚本:エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン / 製作:トーマス・タル、ジョン・ジャシュニ、ブライアン・ロジャース、メアリー・ペアレント、アレックス・ガルシア、エリック・マクレオド / 製作総指揮:ジェイ・アッシェンフェルター、ハーバート・W・ゲインズ、ダン・リン、ロイ・リー、坂野義光、奥平謙二 / 撮影監督:ベン・セレシン / プロダクション・デザイナー:オーウェン・パターソン、トーマス・S・ハモック / 編集:ジョシュ・シェーファー / 衣装:アン・フォーリー / 視覚効果スーパーヴァイザー:ジョン・“DJ”・デジャルダン / キャスティング:サラ・ハリー・フィン / 音楽:トム・ホーケンバーグ / 出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、ランス・レディック、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル、ケイリー・ホトル / レジェンダリー・ピクチャーズ製作 / 配給:東宝
2020年アメリカ、オーストラリア、カナダ、インド合作 / 上映時間:1時間53分 / 日本語字幕:松崎広幸
2021年7月2日日本公開
公式サイト : https://godzilla-movie.jp/
TOHOシネマズ新宿にて初見(2021/7/6)


[粗筋]
 巨大生物の巣窟であった髑髏島の発見から数十年、いまこの島には、怪獣の調査・研究を行う国際組織《モナーク》がドーム状の基地を構築、島で王者だったキングコングを外界から隔離し、監視の下においている。コングは太古の昔、ゴジラと宿敵の関係にあり、深海に眠るゴジラをいたずらに刺激しないための措置であった。
 だが、その努力も虚しく、事件は起きる。《エイペックス・サイバネティクス社》の実験設備を、ゴジラが襲撃したのである。かつてはムトーを撃退し、またはキングギドラら大勢の怪獣を倒して人間社会を救ったゴジラの暴挙に、世界は騒然となる。《モナーク》が掲げた人類と怪獣との共存という理想が、否定されたかに思われた。
 施設が壊滅的な打撃を受けているさなか、しかしエイペックス・サイバネティクスの社長ウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)はひとりの研究者を訪ねていた。訪問相手のネイサン・リンド(アレクサンダー・スカルスガルド)は壮大な地球空洞説を唱え、研究室でも日陰者扱いされているが、シモンズは地下空洞の存在を把握しており、そこに巨大生物たちのエネルギーの源がある、というネイサンの説に注目していた。シモンズは破壊された実験設備から成果物は回収しており、それを活用するために、この膨大なエネルギーを欲していたのだ。
 シモンズの依頼を受けたネイサンは、旧知の《モナーク》研究員アイリーン・アンドリュース(レベッカ・ホール)に協力を仰いだ。アイリーンは髑髏島の設備で、コングの監視と調査に従事している。ネイサンいわく、地下空洞をルーツに持つコングの帰巣本能を利用し、地下空洞への正確な侵入経路を特定したいらしい。かねてから、コングを本来あるべき場所へ帰すべきでは、と考えていたアイリーンは、渋々ながらこの申し出を受け入れた。
 探索のためのトンネルは、南極に設けられている。無用な衝突を避けるべく、輸送はゴジラの棲息海域から遠く隔たった航路で一同は南極を目指した。だが、それでもゴジラは彼らの前に立ちはだかった。
 かくて、太古の昔より続く宿命の対決が、現代でも繰り広げられる――!


[感想]
 2014年、『ゴジラ』2度目のハリウッド・リメイクが大成功を収めたことを契機に計画された、東西モンスター夢の対決を題材とした《モンスターバース》が目指していたクライマックスである。
 この対決はかつて日本でも撮られたことがある。あいにく私はそちらは未見なのだが、ハリウッドの膨大な予算と人員を費やして描かれた大迫力のゴジラを観てしまったら、このスペックで改めて夢の対決を観たい、と思ってしまうのは人情というものだろう。
 きちんとした理論が確立されているハリウッドらしく、このシリーズは実にしっかりと脚本が設計されている。本篇単独でも楽しめることは請け合いだが、しかし先行する『GODZILLA ゴジラ(2014)』、『キングコング:髑髏島の巨神』、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観たあとで本篇を観ると、劇中で明白な説明が成されていなくとも頷けるポイントや、鮮やかなカタルシスが随所で味わえる。
 たとえば、視点人物のひとりとなるマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)だ。彼女は前作『キング・オブ・モンスターズ』で極めて重要な役割を演じた一家のひとり娘である。それゆえに、人並み以上の関心をゴジラに対して抱き、いささか誇大妄想狂めいた陰謀論を唱えるネット番組の言葉に真実を見出し、本篇でも事態に深く食い込んでいく。前作を知る者なら、彼女の活躍ぶりは頷けるし、少し胸の熱くなるものすら感じるはずだ。
 本篇だけ観るといささか唐突に思える“地球空洞説”も、『髑髏島の巨神』以来仄めかされていた要素の延長であるし、何よりクライマックス、ちょっとした衝撃の背景にある事実は、本篇が前作から地続きであるからこそ成立するものだ。
 だが本篇のなにがいいって、そうして説明を最小限にしながら、シリーズ旧作からの伏線を膨らませていく一方で、安易な人間ドラマを作ることをせず、残された尺を基本、怪獣たちの格闘に割いていることだ。
 すべての原点である『ゴジラ(1954)』や、2014年版のヒットに気を良くして本邦で製作された『シン・ゴジラ』にしてもそうだが、どうしても導入が長引き、いちばん愛好家が待ち望む、怪獣が暴れるシーンまでどうしても尺を要してしまう。その点本篇は、始まって早々にゴジラの襲撃が描かれる。当初、噂で耳にしていたよりは、人間の右往左往が挟まる印象だが、それでも待望のゴジラとコングの直接対決もそれほど間を置かずに仕掛けてくる。しかもそのシチュエーションは、従来の着ぐるみ方式の特撮では難易度の高い海洋での格闘だ。海から現れる怪獣らしく、水中から襲撃を仕掛けるゴジラと、その身軽さと知能の高さを活かし、輸送艦や空母を利用したバフルかつ軽快な戦いぶりを見せるコング。物理的な無茶も感じはするが、この絵面の強さだけで楽しくなってしまう。
 そして、イターバルを挟んでのクライマックスがまた熱い。CGを使っているとは思えないシンプルな肉弾戦がメインだが、構図やカメラワークに凝って、多彩な表現を試みる。ゴジラの強烈な放射線熱を、器用な手脚を用いていなすコング、ゴジラが尻尾を駆使すれば、コングは原点回帰のような場面を演じたり、と工夫やサーヴィス精神の豊かさに、ワクワクさせられっぱなしだ。
 決して重要ではない、とは言い条、人間側の動きもきちんと対決に絡んでくるのが巧い。序盤からしばしば謎の動きを示すひとびともさることながら、事態を打開するべくそれぞれの立ち位置で奮闘するひとびともまた、展開にきちんと奉仕するのだ。ハリウッド一流の脚本術をストレートに踏襲しているだけ、とも言えるが、題名にもある怪獣同士の対決を盛り上げるために、余分なものを可能な限り削ぎ落とした潔さは賞賛に値する。もし人間ドラマを丁寧に織り込んでいたら、本篇は2時間足らずの手頃な尺には到底収まらなかっただろう。
 ゴジラやコングの戦い方、人間たちの行動の科学的考証、という点では大いに問題があり、そういう点に繊細さを求めるひとには評価しがたい作品だろう。だが、日本で生まれ育ち、世界で愛されるようになった“怪獣映画”の文脈で見れば、本篇はこの上なく理想的な1本だ。
 。昨今は家庭での再生環境も向上してきているが、本篇の良さは、可能な限り大きなスクリーンと、あたりを振動させるほどの音響があって本当に堪能出来る。最上級の興奮を味わいたいなら、是が非でも映画館で観るべきだ。


関連作品:
GODZILLA ゴジラ(2014)』/『キングコング:髑髏島の巨神』/『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
ゴジラ(1954)』/『キング・コング(2005)』/『シン・ゴジラ
サプライズ
バトルシップ』/『トランセンデンス』/『ジョーカー』/『罪の声』/『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』/『デッドプール2』/『サウンド・オブ・サイレンス』/『ミッドナイト・スカイ
クローバーフィールド/HAKAISHA』/『モンスターズ/地球外生命体』/『パシフィック・リム』/『JAWS/ジョーズ』/『トランスフォーマー

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