『Dr.HOUSE Season3』第1話 生まれ変わったハウス

 銃撃事件から2ヶ月、ハウス医師が現場に戻ってきた。杖を手放して意気揚々と院内を闊歩し、かつては面倒臭がっていた問診も嬉々として行う彼の様子に、部下たちは呆気に取られ、ウィルソン医師やカディ院長らは不安を抱く。そんなハウスが復帰してまず受け持った患者は、脳梗塞によって意思疎通の困難になった男性であった――およそ不可解なところがない、と見える患者を、何故彼は選んだのだろう……?

 プロローグ部分は謎の“症状”が発生する過程を描いていて、シリーズのお約束に従っています、が本篇に入ると、いきなりランニングをしているハウス医師が登場して、シリーズを通して観ている人間は度胆を抜かれます。解ってはいたが、ほんとーに恢復してしまったよ、足が。

 しかし、それ故に発生する彼の変化に周囲が訝り、戸惑い、そしてハウス医師自身も自らのアイデンティティを見失う姿を描くことで奥行きのあるドラマを組み立てていく。相変わらずこのモチーフの活かし方は見事、と言うほかありません。

 このエピソードの興味深いところは、“名探偵”である以前に“医師”である、というハウスの立ち位置に起因するジレンマに初めて言及したことでしょう。彼の才能はホームズ的ですが、しかしホームズのような天才的探偵の方法論をそのまま医療に採り上げるわけにはいかない。あまりに危険が大きい。従来は本人もそのことを百も承知で部下に危険を顧みない検査を行わせ、充分な手懸かりを発見した上で、予め目星をつけていた真相に言及する、ということが実はよくあったのです。

 病み上がりで本人が「知らないあいだに謎を求めていた」と感じてしまうような状況に加え、問診という形で当人からヒントを得ることの出来ない難しい患者が対象となったことで、手懸かりのないままに治療を試みるような事態が作りだされてしまった。よくよく考えると、決して患者に大きな危険を及ぼさない方法が最後に選択されていることも、ハウス医師やウィルソン医師、カディ院長らのジレンマを深めている。ほんとーに、巧い。

 シリーズ通しての重要性を睨んだストーリーなので、単体ではインパクトに欠くきらいがありますが、今期も全体を通して満足感の高い仕上がりになることを予見させる好篇でした。何よりこのシリーズが、決して思いつきではなく、意識して“医学というフィールドを舞台にしたミステリ”を志している、というのが解る1話だというのもポイントです。

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