『ピーナッツ』監督・脚本・主演:内村光良/出演:さまぁ〜ず、TIM、ふかわりょう、佐藤めぐみ、他/配給:COMSTOCK

 本日の映画鑑賞は、きょう開館したばかりの新しい映画館、Q-AX CINEMAにて。映画道楽も長びくと、初めての映画館に訪れるときはなかなか興奮するものですが、それが今日オープンしたばかりとあれば尚更です。

 場所はミニシアター激戦区の渋谷、道玄坂上路地裏。……立地条件を聞いた時点でピンときた方もあるでしょう。そう、もろにラブホテルの密集する一角のなかです。路地に入った段階で「こんな場所でいいんかいな」と苦笑いしていましたが、実際に建物を観て尚更にそう思いました。……一瞬見分けがつかねえ。

 Q-AX CINEMAが入っているのは、ミニシアターの多い渋谷区でも極めて珍しい、ビル内を5つのスクリーンで分けあっている映画専門の建物。うち2つのスクリーンを、以前は駅を挟んだほぼ反対側にオープンしていたユーロスペースが移転して使用し、ひとつを名画座スタイルで上映を行うシネマヴェーラ渋谷が、そして残り2つをこのQ-AX CINEMAが使用する、という集合住宅みたいな格好で営まれているのです。既にほかの3スクリーンは今月14日に上映を開始していますが、Q-AX CINEMAは本日がこけら落とし

 さっそく中へ入ろう、とするも、いきなり困惑する。いったいどこから入っていいか解らない。正面には道路から一段下がってコンクリ打ちっ放しの広場のような一角があって、左手にチケットカウンターがあるのはいいとして、正面と右手にそれぞれ開いている入口のどれが映画館への入口なのかが一見して解らない。のちに案内を見て、真っ正面にあるのがこの建物で唯一の映画館以外の施設である喫茶店だったと解りましたが、外から中が見にくい構造になっているので、けっこう困惑します。いざ右側から入っても、エレベーターじゃなきゃ移動できないのか、入って奥に見える階段を使っていいのか判断に苦しみました。映画館のみで占有してるんだからもっと親切にしてくれても。

 お目当ての作品は地下一階のスクリーンにて上映されているので、階段にて地下へ赴く。全体がコンクリートの地肌を整えたような感じの内装はデザイン性が高く独特な雰囲気がありますが、いかんせん観客席以外はどこも狭く取られているのにちょっと難を感じます。そこへ加えて、開館したてとはいえ従業員たちの手際が悪く、スクリーンの入口にあるカウンターでプログラム販売をするはずが準備を怠っていたために、狭い通路に販売開始を待つ列が出来て大混雑してしまった。まあ、この辺は追々慣れてくれる、と信じよう。うん。

 肝心のスクリーンはなかなか設備がいい――がその辺はもはや当たり前、個人的には全体に照明が暗いのが気に掛かる。確かに上映中は消すものですが、休憩中だけであってもそこで飲食したり会話したりプログラムを読んだりする場所が暗すぎるのはどうしたものか。幸いに私の座席は比較的光が集まっていたので、本を読むのにも支障を感じませんでしたが、これから訪れる人は注意が必要かも。

 肝心の鑑賞作品は、お笑い芸人・内村光良が長年の夢を叶え、自ら脚本・監督・主演を担当、芸人仲間を中心に丁寧に作りあげた笑いあり涙ありの野球映画ピーナッツ』(COMSTOCK・配給)。前々から各種番組で思い入れの程や裏話を耳にしていたので、出来云々を抜きにしても楽しみにしていたのですが――普通にいい作品でした。演技や演出にはしばしば素人臭さが見え隠れしますが、それすらも味にしてしまう職人芸ぶりが見事。お定まりの筋を笑いや感動で細かく揺さぶり、通り一遍でない爽やかな感動をラストに残す、良質のコメディにして上質の野球ドラマです。それぞれの芸人のファンたち、『内村プロデュース』を楽しみにしていたような向きであればより深く楽しめるでしょうし、そうでなくてもかなり幅広い層に安心してお薦めできます。詳しい感想は「いくら『文藝春秋』でもそんな古めかしい言葉遣いはしないぞ。」からどうぞ。

 でもって、本日わたしが鑑賞したのは舞台挨拶つきの回だったりする。司会のかたによると、販売開始からわずか8分でソールドアウトとなったようで……私が入手できたのはどうやら奇跡に近かったらしい。

 やはりスタッフが不慣れであるせいか、準備にだいぶ手間取ってからようやく出演者が登壇。内村光良監督、三村マサカズ大竹一樹ゴルゴ松本、レッド吉田、ふかわりょう佐藤めぐみと、メインキャスト勢揃い。話していることは既にバラエティ番組などで何度か耳にしたようなことが中心でしたが、滅多にない状況に興奮し浮き足立っているのが手に取るように解るのが、作品を観たあとだけにやたらと微笑ましい。本当にファンが多いからなのでしょう、内村監督の発言などにやたらと熱心に拍手で応えているのが印象的でした。予想外にいい出来だったので、私も叩く手を惜しみはしませんでしたが。

 終了後、建物の外観を撮影してホームページに飾っておくつもりでしたが、劇場前が異様に混雑していたので断念し、まっすぐ帰宅。

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