『嘘解きレトリック 第8話』

 今回は《多すぎる弁当の謎》篇……って、なんか毎回タイトル書いてますが、《人形殺人事件》以外は私が内容をざっくり括ってつけてます。八百六の店主・六平が寄り合いのために、くら田に急遽弁当を発注するが、何故か注文の数が合わない。左右馬は鹿乃子に立ち会わせて六平とくら田の店主・達造、その妻のヨシ江それぞれに話を聞く。しかし、鹿乃子には誰の言葉にも嘘を聞き取れない。鹿乃子は、嘘が見分けられない恐怖に初めて怯える……
 原作の中ではかなり最初の頃のエピソード、なんですが、このタイミングで出してきたのは理解できる。視聴者にも、鹿乃子の能力が持つ有効性を浸透させたところで、能力が通用しないエピソードを挿入したことで、嘘が解らない、ということの意味を改めて問う。構成として巧い。
 今回もまた、原作では1話にしか過ぎないエピソードをたっぷり膨らませてます。くら田の店主と八百六の店主の諍いを、コミカルとシリアスの狭間でうま~くプラスして、更に余話である、端崎が遭遇した寸借詐欺疑惑の出来事を鹿乃子の成長を象徴するイベントに昇華させてる。
 実のところ、弁当の誤発注は、けっこう謎としてシンプルで、1話費やすほどではないんじゃ、と思ってましたが、鹿乃子が自分を知り、自分の能力との付き合い方を更に理解していく、という意味では重要なくだりです。その本質をちゃんと理解して、連続ドラマとしていい配置に収めてます。
 このシリーズは、ミステリとしての仕掛けが小ぶりながらもしっかりしているのが魅力ですが、昭和初期のムードをファンタジー的に優しく描いているのも魅力。そしてその中でコメディ要素も、きちんと人間に向き合った描写も織り交ぜているのがいい。その意味で今回の功労者は大倉孝二と今野浩喜です。どちらもコメディ、シリアスともにこなす方ですが、今回は実に緩急が効いていて、いささかドタバタ劇めいたやり取りから次第に緊張を帯び、哀感を帯びた表情も見せていて、ドラマとしての膨らみを作り出しています。ラストの端崎のくだりも、原作よりコミカルですがいい味わい。
 そろそろドラマも終盤、次回は富豪の後継者候補がふたり現れる謎を巡るエピソード――原作ではターニングポイントにあたる話ですが、本来はここからが長い。残り数話で急ぎ足に纏めるよりは、ひとまず振りだけに留めて欲しいところですが、果たしてどうすることやら。

嘘解きレトリック - フジテレビ
嘘解きレトリック - オフィシャルサイト。毎週月曜よる9時放送。鈴鹿央士、松本穂香

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