『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション(吹替)』

TOHOシネマズ上野、スクリーン5入口脇に掲示された『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』チラシ。
TOHOシネマズ上野、スクリーン5入口脇に掲示された『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』チラシ。

原題:“The Boss Baby Family Business” / 原作:マーラ・フレイジー / 監督&製作総指揮:トム・マクグラス / 脚本:マイケル・マッカラーズ / 製作:ジェフ・ハーマン / 原案:トム・マクグラス、マイケル・マッカラーズ / プロダクション・デザイナー:レイモンド・ジハッハ / 編集:メアリー・ブリー、マーク・ヘスター / 音楽:ハンス・ジマー、スティーヴ・マッツァーロ / 声の出演:アレック・ボールドウィン、ジェームズ・マースデン、エイミー・セダリス、アリアナ・グリーンブラット、リサ・クドロー、ジミー・キンメル、エヴァ・ロンゴリア、ジェームズ・マクグラス、ジェフ・ゴールドブラム / 日本語吹替版声の出演:ムロツヨシ、多部未華子、宮野真守、芳根京子、乙葉、石田明(NON STYLE)、銀河万丈、大塚芳忠 / ドリームワークス・アニメーション製作 / 配給:東宝東和×GAGA
2021年アメリカ作品 / 上映時間:1時間47分 / 日本語字幕:山下桂 / 吹替版翻訳:中村久世
2021年12月17日日本公開
公式サイト : http://bossbaby.jp/
TOHOシネマズ上野にて初見(2021/12/23)


[粗筋]
 赤ちゃんの世界と子犬たちとの戦いを収めたティム(ジェームズ・マースデン/宮野真守)も、あれから25年を経て、すっかり大人になった。かつては強い絆で結ばれていた弟テッド(アレック・ボールドウィン/ムロツヨシ)だが、その後、豊かな商才を活かして名実共に“ボス”となった彼は多忙で、すっかり疎遠になっている。
 ティム自身は、外で働く妻を専業主夫として支えている。夫婦の間には7歳のタビサ(アリアナ・グリーンブラット/芳根京子)と生まれて間もないティナ(エイミー・セダリス/多部未華子)というふたりの娘がおり、ティムは彼女たちに自分が幼かった頃の夢のような体験を聞かせている。
 だが近ごろ、タビサはティムをあまり相手にしてくれない。エリート育成で知られる有名校に通い始めたタビサは日々宿題や課題に忙しかった。とうとうおやすみのキスまで拒まれるようになって、ティムは早すぎる“親離れ”を嘆いている。
 そんなある日、ティムはティナの部屋から、何者かが会話するような声を聞く。覗いてみると、何とまだ言葉を話せないはずのティナが、オモチャの電話で誰かと言い争っていた――聞いてみれば、ティナは赤ん坊だった頃のテッドが《ボス・ベイビー》として働いていたベイビー・コープで《ボス・レディ》のひとりとして働いているという。
 かつてのティムとボス・ベイビーの活躍も知っているティナは、大事な任務があるのでテッドを呼び出して欲しい、と請う。しばらく、まともに会話も交わしていないテッドに連絡するのは気まずい、とティムは躊躇ったが、そのあいだにティナは細工を弄してテッドを呼び出してしまった。
 テッドは最初、流暢に言葉を話すティナに驚き、既に《ボス・ベイビー》だった頃の記憶を失っていたが故に、ティムの話に出てくる《ベイビー・コープ》が実在していることに驚く。ボス・レディはテッドにボス・ベイビー時代の記憶を取り戻して任務に就いてもらうべく、会社が開発した幼くなるミルクを提供する。ティムとテッドは争うようにミルクを飲み、かつて大冒険を繰り広げた頃の姿に戻ることに成功した。
 ボス・レディいわく、危険な陰謀が展開されているのは、どんぐり教育センター――他でもない、タビサが通っている学校だという。ティムとボス・ベイビーに託された使命は、アームストロング博士(ジェフ・ゴールドブラム/大塚芳忠)の目的を探り出し、陰謀を阻止すること――


[感想]
 日本でも大ヒットとなった、絵本を原作とした3DCGによるアニメーションの第2作である。
 個人的に、前作がヒットしたこと自体がちょっとした驚きだった。あとから生まれた赤ちゃんに、親の愛情も生活も支配される、という感覚は、年齢の近いきょうだいによくある話で、それを拡大解釈した発想は面白い、と思う一方で、本篇のいかにもアメリカ流のコメディ描写、それを異常なテンポの良さで繰り出す作りは、あまり日本人には合わない、と感じたからだ。
 それでもヒットした要因は恐らく、アメリカ風味のコメディ要素を、普遍的な実感が上回ったことと、児童文学らしい冒険のワクワク感が巧みに観客を惹きつけたことと、中心となるボス・ベイビーの日本語吹替キャストにムロツヨシを起用したことが大きかったのではなかろうか。もともと少々クドいくらいの演技で、とりわけコメディにおいて実力を発揮したムロが、このアメリカンテイストにしっくりハマった。日本では専業ではない声優の起用に否定的なひとが多いが、本篇の場合、認める声の方が大きかったからこそのヒットではなかったか。そう判断されたからこそ、この続篇でもムロ含めすべてのキャストが続投する結果となったのだろう。
 しかし率直に言ってこの続篇は、前作より受け入れられにくい、と感じる。物語のアメリカンテイストが悪い意味で濃縮されているからだ。
 世界観は前作と相通じているのだが、共感しやすかったきょうだいの確執という要素は、展開を引き継いでいるが故に少々共感しづらいものになった。なにせ本篇で登場人物たちに起きるトラブルや悩み、その解決のプロセスは本篇特有のもので、作品世界に馴染めないと理解も共感もしにくい。
 もうひとつの問題は、ファンタジー部分が現実を侵蝕しすぎて、トラブルが非現実的になってしまっていることだ。事件の黒幕の用意した舞台は、異空間であるベイビーたちの世界ならまだしも現実ではあり得ない構造だし、ティムたちが慌てて学校を目指すくだりひとつ取っても、周囲への影響が大きすぎ、他方で世間の大人たちが自体に無頓着すぎる。映画的、アニメらしいド派手な展開と動きには確かに見応えがあるのだが、そのために置き去りにされる感性も多く、ひとによっては興醒めする恐れが強い。
 恐らく、3DCGならではの自在なカメラワークを活かした、動きのある見せ場を多く用意したかったのだろう、ということは察せられる。大掛かりなコントのようで、確かにコメディとして割り切れば自由な発想として楽しめるが、そのせいで前作の特徴だった、ファンタジーでありながら親近感のある物語、という側面はだいぶ薄れてしまった。
 本篇は随所に大人だからこそ解るようなユーモアもちりばめられていて、その特徴も前作を踏襲しているのだが、物語が現実により深く食い込んでしまったことで荒唐無稽な印象を強めてしまったため、ユーモアといまひとつ調和しなくなった。全体として、どっちつかずのぎこちなさが感じられるのだ。
 発想は大人なのに、全体の作りは悪い意味で子供騙し。割り切って、その突飛な世界観に馴染めるなら、現実を忘れて楽しめると思うが、うまく合わせられないとひたすら居心地の悪さを味わいかねない。この危うさは前作にも既にあったが、続篇として作品世界を膨らませた結果、その歪みが拡大してしまったようだ。キャラクターや語り口の魅力をきちんと踏襲したうえで新しい物語を構築する、というスタンスには誠実さを感じるのだが、結果として、予定のなかった続篇を作るのはやっぱり難しい、という感想を新たにしてしまった。繰り返すが、魅力は引き継いでいるし、スタンスは疑うべくもなく誠実なのだけど。


関連作品:
ボス・ベイビー
マザーレス・ブルックリン』/『X-MEN:フューチャー&パスト』/『ジェニファーズ・ボディ』/『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』/『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』/『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』/『マイティ・ソー バトルロイヤル
新解釈・三國志』/『源氏物語 千年の謎』/『竜とそばかすの姫』/『はいからさんが通る 後編 ~花の東京大ロマン~』/『羅小黒(ロシャオヘイ)戦記~ぼくが選ぶ未来~
ショーシャンクの空に』/『未来のミライ』/『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』/『オールド

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