『デスドール』

デスドール [DVD]

原題:“Needle” / 監督:ジョン・V・ソト / 脚本:ジョン・V・ソト、アンソニー・イーガン / 製作:ディードレ・キッチャー / 製作総指揮:ショーン・バグレイ / 撮影監督:スティーヴン・F・ウィンドン / プロダクション・デザイナー:ナイジェル・ダヴェンポート / 編集:ジェイソン・バランタイン / 音楽:ジェイミー・ブランクス / 出演:マイケル・ドーマン、トリルビー・グローヴァー、トラヴィス・フィメル、ジェシカ・マーレイ、ナサニエル・ブゾリック、カーン・チッテンデン、ルーク・キャロル、ベン・メンデルソーン、ジョン・ジャラット、タヒーナ・トッツィ、マーレイ・バートレット / フィルムスコープ・カンパニー製作 / 映像ソフト発売元:松竹

2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間29分 / 日本語字幕:? / R15+

日本劇場未公開

2011年7月8日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2013/06/11)



[粗筋]

 父親が亡くなったあと、大学の寮に入っていたベン(マイケル・ドーマン)のもとに、突然父の遺品が届けられた。やけに装飾的な箱状の代物だが、ベンにはまるで用途が解らない。考古学の講座を取っているベンは、友人のネルソン(ルーク・キャロル)の薦めで教授(ジェーン・バドラー)に写真を見せてみたが、教授にも詳細は解らなかった。

 しかし、ベンが部屋に戻ってみると、問題の箱が無くなっている。いったい誰が、と訝るベンに、前夜唐突に彼を訪ねた兄のルーカス(トラヴィス・フィメル)は更に衝撃的な出来事が起きたことを知らせた――ベンの友人ライアン(ナサニエル・ブゾリック)が死んだ、というのだ。異様な死に方に、事件性が疑われるため、ベンはルーカスに付き添われて警察に箱の紛失を盗難の可能性あり、として訴え出る。

 警察からの帰り、カメラマンとして検死官の仕事を手伝っていたルーカスが急遽呼び出され、ベンは現場まで一緒に足を運んだ。到着したのは、ベンにも馴染みのあるスポーツジム。そこで血にまみれていたのは、彼の知人だった。驚き問い詰めると、知人の目の前で、ネルソンが死んだ、というのである……

[感想]

 スタッフもキャストもほとんど無名の人物ばかり、内容的にも予算があまりかかっていないのが窺える。オカルト的要素に流血描写もある、となればB級臭ぷんぷんだが、本篇の作りは非常に真面目だ。

 本篇のオカルト的な要素はちょっと特殊だが、その特性を観る側に伝える手管に優れ、アイディアの特徴を決して歪めていない。こんな持って回った使い方をしなければならないアイテムがあるか、という疑問はあるが、しかしその扱いに違和感を覚えたり、過剰に感じることはまずない。

 奇妙な道具と異様な事件、というモチーフを温存し、謎解きとサスペンスの興趣を維持する技も巧い。序盤から意識的に引っかかる描写をちりばめ、観客の心に疑念を呼び起こし、緊張感と驚きを生み出す。全篇がこうした丁寧な作りに貫かれており、だからこそ一見扇情的なモチーフの数々に反し、生真面目な印象をもたらしている。

 ただその反面、あまりに真面目すぎる、という嫌味もある。モチーフの特性を守ろうとするあまり、流血シーンの描き方が大人しい――こうした残酷な場面に馴染んでいないひとには充分凶悪だろうが、わざわざ選んでショッカー、スリラーを観たがる人間にとっては間違いなく芸が足りなく感じられる。

 一方で、そもそもの謎に観客を集中させようとするあまりか、本筋に絡まないキャラクター描写、人物同士の関係性が通り一遍なのも気になる。尺の長さの都合もあったのだろうが、もうちょっと友人同士のあいだにある愛憎劇を細かにちりばめるだけでも、深みが増し、クライマックスでの緊張も高まったのではなかろうか。意識的に用意したミスディレクションの扱いの巧さからすれば、もう少しシナリオを練り込めば、尺からさほどはみ出すことなく、ミステリとしての興趣もドラマとしての面白さも掘り下げられたように思う。終盤での意外性を追うあまり、逆に伏線が足りなくなっている部分があるのも惜しまれる。

 観終わっていささか物足りなさは覚えるが、しかしオカルト的要素を活かしながら正統的なスリラーとしての面白さを追求した作品として、非常に好感が持てる仕上がりになっている。作中登場する、古美術を蒐集する財団の名称にも窺えるように、製作者にスリラーへの愛着があるからこそ、だろう。その心意気と共に、今後活躍するかも知れない才能の萌芽を愛でる、という気持ちで接してみるのも一興かも知れない。

関連作品:

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ウルヴァリン:X-MEN ZERO

ジャーロ

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