規模は違えど、こだわりに満ちた映画をハシゴ。

 この項、本当は昨晩、深夜にでもアップするつもりで、出先でも準備してたんですが、伊集院光が田中裕二の代役で出演した『爆笑問題カーボーイ』が面白すぎて、仕上げまで辿り着かずに寝てしまいました。というわけで、だいぶ遅ればせながらアップ。

 先週土曜日、当初はハシゴする予定でしたが、スケジュールの確認ミスで2本目の開始が1本目の終了前になっており、既に1本目を押さえていたため断念せざるを得なかった。
 しかし、当初考えていた2本目もやっぱり観たい。予算が潤沢な作品ではないため、今週いっぱいで都内での上映が終わってしまう、という事実と、今週は木曜日の予定が既に決まってしまってる、といった事情から、迷う余地なく、この火曜日の再訪を決定。
 ハシゴすることを考えてたくらいですから、上映開始は20時55分とだいぶ遅い。前に食事の時間を挟んでも、もう1本くらい鑑賞出来ます。というわけで、食事の時間も込みで適当な作品を探してみた結果……インターステラー(字幕・IMAX with Laser)』(Warner Bros.配給)になりました。このあいだの『ダンケルク』は初見のときに感想が書けなかったので復習がてら、という理由がありましたが、今回は純粋な再鑑賞です。この頃から既にノーラン監督はIMAXカメラでの撮影を実施していたので、IMAXで鑑賞するのに適している、という話を聞いてましたから、確かめてみたかったのです。再鑑賞なので、上映開始に間に合わなくても最悪キャンセルしても惜しくないし。

 夕方、と言ってもまだ日が暮れる前にバイクにて出発。新宿で、とりあえず駐車場にバイクを突っ込――むのに時間を使いすぎました。映画館のある新宿東宝ビルの駐車場が埋まってるのは想定内でしたが、まさか新宿としてはだいぶ端っこになる、いつも使っているほうも満杯だとは思ってませんでした。こりゃ『インターステラー』は諦めて、家にバイクを置いて出直すか、と一瞬考えたのですが、不幸中の幸いで、1本目を観るTOHOシネマズ新宿と2本目を観る新宿武蔵野館の中間地点にある、最安値の駐車場にたまたま空きがありました――もっとも、そのあとも何だかんだとあって、けっきょく本篇のスタートにも間に合わなかったのですが。しかし、ちょうどクーパーが娘と心残りのある別れ方をして地球を発つ手前で、観たいシーンはだいたいそのあとに詰まってましたから、再鑑賞としては許容範囲。
 やっぱりこれもいい設備で観るべき作品。IMAXならではの鮮明な映像と惑星着陸の際の音響がもたらす臨場感が、とことんリアルに構築された作品世界と相俟って迫り来る感じ。一気に地球との時間差が開いてしまうが故に著しく制約を受けるなかで繰り広げられる瀬戸際の駆け引きなど、現実の理論を敷衍したSFとしての面白さが詰まっていて、改めてクオリティが高い。堪能致しました……出来ればちゃんと頭から観たかったけどね。

 うまくいかないときは連続するものらしい。今日はラーメンよりうどんが食べたい気分だったので、以前はよく通っていたお店の歌舞伎町にある支店に行ってみたら――営業してなかった。時間があまりなかったので説明をちゃんと読めなかったのですが、閉店というわけではなく、何らかの事情で臨時休業しているらしい。考えている余裕もないので、TOHOシネマズ新宿の裏手にある焼きあご塩らー麺 たかはしに立ち寄って済ませました。ここは味わいがしっかりしてるけど、あっさりしていて食べやすいので、私のきょうの気分にはまあまあ合ってる。普段は知りませんが、私が立ち寄る時間帯は比較的空いてるので、いつもここが救いになってます。

新宿シネマカリテの休憩スペースに展示された『狂武蔵』場面写真と、チケットが買えなかった坂口拓がせめても、とサインを残していったというスタンディ。 夕食を済ませると、こんどは新宿武蔵野館へ。
 今年ここで鑑賞する2本目の作品は、俳優でありアクション演出も手懸けるTAK∴こと坂口拓が9年前に撮影しながら、様々な事情で完成に至らずお蔵入りとなっていた作品を、下村勇二監督や山崎賢人の参加、更にクラウドファンディングの助けも借りて公開に漕ぎつけたもの。77分にわたるワンカットの殺陣で、伝説の剣豪・宮本武蔵と復讐に燃える一門との死闘を描きだしたチャンバラ映画狂武蔵』(ALBATROS FILM配給)
 パンフレットに目を通したら、監督が「一般的なアクション映画を求めて観るのはお薦めしない」と言っている。実際その通りで、77分ワンカットの殺陣は、いちおう光線の変化や立ち位置、実際に攻めるメンバーの入れ替え(恐らく集団で攻めるくだりは、先頭はほぼ同じ面子)など事前に打ち合わせがあったことは窺えますが、さすがに77分すべて複雑な変化を加えることは出来ず、早いうちから武蔵も攻める吉岡一門も手がパターンに陥ってしまう。ワンカットとはいえ、1か所にいつまでも留まる場面が多いので、正直飽きてしまう。
 ただ、その長尺の殺陣の中で、武蔵の表情や態度、そして立ち回りまで変化していくのが興味深い。早い段階で指は骨折、途中で肋骨もやられ、奥歯も砕ける、と満身創痍になっていった武蔵=坂口拓が、その痛みや疲労と折り合いをつけていくことで、次第に本物の剣豪に見えてくるのです。史実にもある吉岡一門との決闘のなかで、武蔵がきちんと準備をして迎え撃っていた、という事実を逆手に取ったのでしょう、随所で水筒や換えの刀を用意して息をつく場面が挟まるのですが、そこで見せる素の表情、そしてそこからこぼれる、もはや芝居とは思えない言葉が強烈に印象に残ります。とりわけ、「どうせ死ぬんだ」と呟きながら飛び出していくくだりは慄然としました――制作者の証言を総合して推測すると、恐らくこの台詞、演技から出てきたものじゃない。その、鬼気迫る、としか言いようのない立ち回りの迫力が本篇のすべて、と言ってもいい。
 しかし、物語はそこでは終わらない。足りない尺を、クラウドファンディングなどでまかなった予算による追加撮影で埋めているのですが、ここで披露する、ワンカット撮影から9年後の坂口によるスピーディにしてトリッキー、そして格好良すぎる立ち回りは、アクションに携わってきた者としての蓄積を窺わせ、それが見事に物語を決着に導いている。
 伝統的なチャンバラものを思わせる“侍映画”、ですがそれ以上に、ひとりのアクション俳優の全身全霊を賭けた戦いの軌跡を焼き付けた作品。恐らく今後、これに類する作品はそう簡単には生まれません。
 既に22時半になっていて、寄り道するような店など開いていない。脇目も振らずにさっさと家路に就きました。想定してたよりも駐車料金が安かったのは、トラブル続きだった序盤が報われた結果だ、と思っておくことにしよう――想定より100円安かっただけだけどさ。

 ちなみに『狂武蔵』、前述のように今週いっぱいで上映終了……と聞いてたんですが、好評につき延長が決まったそうです。新宿武蔵野館では来週もかかってます。しかも最終回上映だけでなく、朝一番にも1回かけてくれるらしい。急ぐ必要はなかったし、ひとも増えてきた夜間に出かけてくる必要もなかった……まあ、作品自体は観る価値があったので、いいんですが。

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  1. […] 英題:“Crazy Samurai Musashi” オリジナルスタッフ プロデューサー:國實瑞恵 / 原案協力:園子温 /  […]

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