『パラノーマル・アクティビティ 呪いの印』

TOHOシネマズ日本橋、スクリーン2の前に掲示されたチラシ。

原題:“Paranormal Activity : The Marked Ones” / 監督&脚本:クリストファー・ランドン / 製作:ジェイソン・ブラムオーレン・ペリ / 製作総指揮:スティーヴン・シュナイダー / 撮影監督:ゴンサーロ・アマト / プロダクション・デザイナー:ネイサン・アマンドソン / 編集:グレゴリー・プロトキン / 衣装:メアリールー・リム / 出演:アンドリュー・ジェイコブス、ホルヘ・ディアス、ガブリエル・ウォルシュ、モリー・イフラム、カルロス・プラッツ、グロリア・サンドヴァル、ケイティ・フェザーストーン、ミカ・スロート / 配給:Paramount Japan

2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間24分 / 日本語字幕:樋口武志 / PG12

2014年4月11日日本公開

公式サイト : http://www.paranormal.jp/

TOHOシネマズ日本橋にて初見(2014/04/11)



[粗筋]

 ジェシー(アンドリュー・ジェイコブス)は高校を卒業した。親友のヘクター(ホルヘ・ディアス)とカメラを代わる代わる構え、卒業式からパーティーの様子を撮影していたが、やがて映像は、ジェシーの一家の階下に暮らす不審な女アナ(グロリア・サンドヴァル)の様子を追い始める。

 アナの部屋では夜な夜な奇妙な呻き声が聞こえており、ジェシーの父の部屋の通風孔から響いてきて、毎晩のように悩まされていた。そこでジェシーたちが通風孔から小型カメラを下ろして撮影を試みると、アナは女性相手に奇妙な“儀式”らしきものを繰り広げていた。

 いったいアナは何者で、何をしようとしているのか? 不審がっていたところ、ひとつの事件が起きる。ジェシーと共に高校を卒業したオスカー(カルロス・プラッツ)がアナの部屋から飛びだしてきて、間もなくアナの部屋で彼女の屍体が発見されたのだ。

 優等生で、卒業生総代も務めたほどのオスカーが何故アナと関わりを持っていたのか? 以来、オスカーの行方は解らない。事件にいっそう強い関心を抱いたジェシーだったが、その頃から彼の身体に奇妙な変化が起きはじめる。きっかけは、腕に現れた、歯形の傷痕だった……

[感想]

 シリーズ5作目にして、タイトルからナンバーが外れたのは、以後ナンバリングを取りやめる、という話ではないらしい。既に次作の製作が予定されているようだが、imdbに掲載されている次の作品は“Paranormal Activity 5”つまり本作を数えない番号となっている。このことからも、本篇は番外篇的な位置づけとして製作された。と推測出来る。

 そう考えると、本篇の微妙なカラーの違いにも納得がいくはずである。従来は、ホームヴィデオの記録を手掛かりとしつつ、様々な家庭で発生している怪奇現象を映像として残す、といった名目で設置されたカメラの目線で主に物語が展開する構成だった。しかし本篇は、長時間据え置きで経過を記録する、という趣向は用いられていない。ほぼすべて、ジェシーが所持していたカメラが記録した映像で構成され、構える者がしばしば入れ替わるが、基本的に誰かの手にある状態で撮影されている。どちらかといえば“観察”という姿勢だった従来のシリーズに対し、本篇は“記録”をもとに追体験するような趣で作られているのだ。

 とはいえ、背景となっている“怪異”が通底していることは題名が明示している。これで背景がまったく別物だと、仮にあとあとメインシリーズに合流させる趣向があったとしても気分が良くないが、個人所有のヴィデオカメラを視点とし、早い段階から似たような不穏な空気を掻き立て、「パラノーマル・アクティビティだ」と観客に実感させる。雰囲気作りの観点では忌憚がない。

 沈黙をうまく活用した緊張や恐怖の演出、という定石を辿りながら、しかし本篇の展開は従来とは少し逸脱している。襲われる怖さ以上に、“何者に冒されているのか解らない怖さ”が鍵として用いられているのだ。先日、突如として超能力を身につけた青年たちのドラマを題材とした『クロニクル』という作品が本邦でも好評を博したが、そのホラー的な応用、と考えると解りやすいかもしれない。既に6作、こうしたスタイルでホラーを撮ってきたスタッフだからこその貫禄が感じられる仕上がりだ。

 ……と、肯定的な見解で書き連ねてきたが、正直なところ、単品では評価しづらく、お勧めしづらい、というのも譲れない事実だ。

 まずいのは終盤、あまりに投げっぱなしの事象が多すぎることである。いちおう舞台や幾つかの状況については伏線があり、ここでことが起こるのは必然、とは思えるのだが、ポイントごとに発生する異変がなにによるものなのか、何を示唆するのか、が少なくとも本篇のなかでは不明確なものがあまりに多く、場面場面では驚き慄然とするが、終わってみると「あれはなに?」という不審さが残ってしまう。実はここで旧作とのリンクもあるのだが、きちんと観ていたとしてもどうしてここに繋がるのかは腑に落ちないままだろう。手法として謎を残すのは構わないのだが、そればかりでは恐怖を薄めてしまう。

 続篇を動かしながら、また別の時間軸、やや異なる語り口で新作を発表したのは、シリーズゆえの閉塞感やマンネリズムを抑え、間口を拡げるという意志の現れであり、好感は持てるのだが、本篇のみで決着している部分が少なすぎるのは、“番外篇”として観るには釈然としない。かといって、本筋の展開にもこれといった奉仕をしていないので、そのつもりで鑑賞するとはぐらかされたように感じてしまう。

 いままでと違った展開や恐怖の表現があるので、過程では興味を惹かれるし、ホラーに不慣れであったり、素直なひとなら恐怖に浸れるだろう。ただ観終わって、満足のいく余韻が得られるか、と問われるとちょっと微妙なところである。或いは正篇の続きで本篇に絡んでいく可能性を考えると、シリーズを追ってきたひとは観逃せないだろうし、基本的にらしさは留めているから、損をすることはなさそうだが。

関連作品:

パラノーマル・アクティビティ』/『パラノーマル・アクティビティ2』/『パラノーマル・アクティビティ3』/『パラノーマル・アクティビティ4』/『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT

アメリカン・グラフィティ』/『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』/『クロニクル』/『キャリー

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