本当の始まりには辿り着かない怖さ。[レンタルDVD鑑賞日記その758]

『リトル・シングス』を観終わったので、よーやくまた怪奇ドキュメンタリーが借りられます。まずは、今年3月リリースの『ほんとにあった!呪いのビデオ95』を鑑賞。新生児を撮影するカメラに映り込んだ恐怖《なくしたもの》、ドキュメンタリーの取材で踏み込んだアパートで記録された怪異《謝罪》、夜の道端で男性3人が偶然に遭遇した異様な出来事《訪問者》、押入が勝手に開く、という怪異がきっかけとなって掘り起こされていく悲劇をめぐる《怪屋敷》前後篇など、全8篇を収録。
 演出・構成はふたたび代替わりして藤本裕貴というかたに。一時は先行作のスタッフが昇格したり復帰したりしていましたが、先々代から新顔が演出に携わるようになってきた。どんな風に選ばれているのかは解りませんが、基本的なスタンスは大きく変わっていないので、それほど気にはならない。
 ただ少なくとも今回の演出はなかなか有望だと思います。単発の作品はそこまでクオリティが高いわけではないし、冒険をしていない印象ですが、優秀なのは前後篇の長篇です。発端となる投稿動画が撮影される背景から既にその気配がありますが、取材を続けていくほどに怪談っぽさが増していく。現象と探り出された背景になんとなく因果関係が見出された段階で、それ以上の証言を得られなくなって、ひとまず区切りがつけられますが、秀逸なのはそのあとに添えられた、もうひとつの“発見”です。多くは語られませんが、それまでの出来事とも相俟って、不気味な余韻が残る。
 私は映像や取材が嘘でも構わないのです。問題は、信じてみたいくらいの魅力があるかどうか。これはまさに、信じてみてもいいクオリティを確保している。ゆえに私は、このあともちょっと期待していいかも、と思ったわけです。
 まあ、単発については手放しで褒められるわけでもない。特に惜しいのは《訪問者》。シチュエーションとしては怪談として面白いのだが、ただ映像としては、劇中の変化が怪異として伝わりにくいのがネックです。もっと取材で追求していくべきエピソードだったのではなかろうか。
 でも満足度は間違いなく高い。最近、なんとなーく観る気が失われつつあったこのシリーズですが、もういちど追ってみようと思います……まぐれでないことを祈りつつ。

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