『まんが日本昔ばなし』第二十二回

  • 芋ほり長者

 芋掘り名人で知られながら、掘り出すたびに酒に換えてしまって貧乏暮らしをしている藤五郎という男がいた。そんな彼のもとに、突如花嫁行列がやって来た。お琴と名乗るその花嫁は、観音様のお告げでわざわざ嫁に来た、という。このお琴、大変良くできた嫁なのだが、対する藤五郎は相変わらずで……

 よくある立身出世ものとは一線を画した、なかなかに現代的な話と感じます。要は、狭い世界で生きていると自分の得ているものの価値が解らず、外界から価値観が齎されて初めて意味を得る、という具合に。

 それ故教訓話というより、一種思考実験的な、理知的な話というふうにわたしは捉えました。主人公が愚かだけど憎めない人柄である、というのがミソ。

 木樵たちは一気呵成に魚を獲るために、ねながし――川に毒を流して魚を殺す方法を実践に移すことにした。忽然と現れた僧に諭され、止めるとは言ってみたが、結局“ね”を流してしまう。首尾良く大量の魚を捕らえた木樵たちは気をよくして、とある淵にもねながしをするが……

 要は自然からの警告を語る怪談なのですが、ちょっとツメが甘い。確かに異様な出来事ですが、木樵たちが畏怖するほどのことだったでしょうか。実際にはもっとどぎつい“見返り”があったのを、『まんが日本昔ばなし』のコードに抑えるために削ったのでは、とちと勘繰りたくなります

 作画的には、不気味な出来事を強調するために線の太い、漫画的ながらもどこか禍々しさを感じさせる黒を主体とした絵を作っており、雰囲気は完璧。それだけに、ちょっと結末の物足りなさが残念でした。

コメント

  1. 冬野 より:

    『日本の伝説(東日本編)』(偕成社文庫)に「イワナの怪」も本来の話が載っているらしいですよ。
    http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9832334519

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