『ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE』

ほんとにあった! 呪いのビデオ~THE MOVIE~ [DVD]

演出・構成:白石晃士 / 監修・ナレーション:中村義洋 / 製作:張江肇、鈴木ワタル / プロデューサー:木谷奈津子、大橋孝史 / 演出助手:横田直幸、若狭朋宏 / 編集・MA:NEKスタジオ / 編集協力:喜多正俊 / 音楽:D.R.A. / 配給:パル企画

2003年日本作品 / 上映時間:1時間25分

2003年3月8日日本公開

2003年4月25日DVD発売 [bk1amazon]

DVDにて初見(2009/07/14)



[粗筋]

 1999年、1本の奇妙なビデオテープの存在をきっかけに始まった、怪奇ドキュメンタリー・シリーズ『ほんとにあった!呪いのビデオ』。2003年時点で本家が10本、スペシャル版など7本をリリースしてきたが、なかでも最も反響の大きかったのが、Part2にて発表した“作業服の男”と題した1本である。

 電車のなかで何気なく撮影された映像が、投稿者の恋人を失踪させたことに始まり、観た者に様々な不幸を齎した。のちに『Special1』でも追跡取材が行われたこのビデオを巡る奇怪な出来事は、あれから3年を経て、更に拡大を続けていた。

 2002年7月、ひとりの男性が通勤途中、急逝する。これといった既往症もなく、事故に遭ったわけでもない。心当たりはただひとつ、“作業服の男”を観た、ということだけだった。

 視聴者からの投稿でこの悲劇を知った製作委員会が取材を開始すると、問題の男性についてやがて奇妙な事実が判明する。その先に存在したのは、もうひとつの“呪いのビデオ”であった……。

[感想]

『ほんとにあった!呪いのビデオ』は基本的に視聴者から寄せられた投稿ビデオを羅列、必要に応じてその背景に関する取材の模様も含めて紹介する、というスタイルを取ったシリーズである。従って、1巻のなかにだいたい7・8本、スペシャルなどでは10本ぐらいの怪奇映像を収録している。

 好評を受けて制作されたこの映画版は、だが同じつもりで鑑賞するとちょっと面食らうだろう。何せ、過去に紹介された映像1本に基づく取材だけで構成され、新しい映像は最後に1本紹介されているに過ぎない。オリジナル・シリーズでさえ、周囲で起こる不可解な出来事などに関心のない、ただ怪奇映像だけに興味がある向きには間延びして感じられるはずなのに、本篇はまさに“無駄”だけで組み立てられているのだ。

 しかし、ただ怪奇映像だけが目当てで観ていたのではない、追跡取材で判明する背景のおぞましさなどにも関心のある人にとっては、これはまさに待望の作品だろう。既に発表された、『リング』に登場する呪いのビデオにも似た力を示したビデオの、その影響を改めて追いかけるという趣向と、その結果として締め括りに置かれたのが、映像が捉えた奇妙な現象が目を惹くのではなく、その異様さ、意味のなさにこそ恐怖を滲ませたビデオテープであった、というのは、このシリーズの題名をきっちり体現していると言えよう。

 もしこれがフィクションであったなら、と仮定して観ると、途中で“もう1本の呪いのビデオ”という題材が提示されるものの、全体としてあまりに波乱に乏しい作りをしていることに不満を覚えるかも知れない。だが、現実に“呪いのビデオ”が存在したとして、その出所を探る旅を追っていったとしたら、実際にはこのくらい地味な進行になっていただろう。その淡々としたリアリティこそ、本篇の胆である。辿っていった結果、どこかから私たちのもとへと結びついてしまいそうな感覚こそが本篇の、ひいてはこのシリーズの面白さ、怖さの出所である。

 このシリーズを楽しみにしているすべての観客の期待に添っているとは言い難いのが残念だが、少なくともシリーズの目指す方向性を極端な形で体現した本篇は、節目として相応しい作品である。――劇場にかける意味はあったのか、とかはとりあえず置いといて。

関連作品:

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ノロイ

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