2012年の映画鑑賞・総括

劇場で鑑賞した本数: 136本(延べ・156本)

 延べ、との本数にだいぶ差がついているのは、今年、ライヴ・ヴューイングやシネマライヴ、更に角川シネマ新宿で開催されたアニメ版『Another』のようなものも、管理上まとめて勘定しているからなのです。DVDで前に鑑賞したもの、試写会やヴァージョン違いなど、感想アップ済で鑑賞したものが11本ありました……っていうか、『ロボット』は去年初めて鑑賞して、完全版・日本公開版合わせて3回観たのであった。

 全体としては昨年からかなり減りました……とは言い条、そもそも去年が200本を超えていたこと自体異常なのであって、まだ一般のかたと比べればそうとうに多いはずですが、これでも観逃したものが多くて色々と心残りです。来年はもーちょっと余裕が持てるといいなあ。

映像ソフトもしくはオンデマンドで鑑賞した本数: 52本

 こちらも去年から10本ほど減少。劇場で観るより安上がり、のはずですが、やっぱり多忙だと、家でゆっくり観るのも難儀、ということらしい。クリント・イーストウッド関係作品の渉猟が順調に進めば、もう少し多かった気もするのですが、『ダーティハリー5』を既に購入してある、というのが却って災いし、停滞しているのでありました。その代わりに、ドニー・イェンをやたらと立て続けに鑑賞して、都合9本。

最も多く訪れた劇場: TOHOシネマズ六本木ヒルズ 29本

 昨年に続いて最多となりましたが、しかし本数は1/3に激減。やっぱり、週に1回は訪れる“午前十時の映画祭”が六本木で終了してしまったのが大きい。それでも東京国際映画祭などイベント上映があったのでこの本数ですが、しかしもし銀座地区のTOHOシネマズを1館として捉えると、イベント上映抜きで同数に達するため、如何に六本木の存在感が私の中で薄れたのかがお解りになるかと。

 2013年は“午前十時の映画祭”が、デジタル上映に切り替えての“新・午前十時の映画祭”がはじまり、また六本木に通うことになります――が、今回は2週間にいちどの入れ換え、しかも同じ都内で楽天地シネマズ錦糸町にて並行して上映されることが決まっているため、決定的なモチベーションとはなり得ない。2年前にトップだった西新井にまた通い詰めることになるのか、それとも銀座の重要性が高まって本数がばらけるのか……って、どこでたくさん観るか、はそんなに重要ではないんですけどね、そもそも。

私的ベスト20(2012年01月以降に劇場で封切り公開された作品)

順位 作品タイトル 日本公開日
ダークナイト ライジング 2012年07月28日
別離 2012年04月07日
トールマン 2012年11月03日
ドラゴン・タトゥーの女 2012年02月10日
アーティスト 2012年04月07日
捜査官X 2012年04月21日
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 2012年02月18日
アリラン 2012年03月03日
鍵泥棒のメソッド 2012年09月15日
10 007/スカイフォール 2012年12月01日
次点 アナザー Another 2012年08月04日

 相変わらず、そのときの気分で変わるランキング――とは言い条、気に入ったものを抽出し、その時々でランキングをいじる、ということをやって作っていった結果、12月あたまに固まったこの形がもうほとんど動かなかったので、私にとっては結構納得のいく並び、ということらしい。

 否定的な意見も多いようですが、私はやっぱり、今年は『ダークナイト ライジング』に尽きる、と思ってます。あの歴史的傑作を前にして、あえて続篇に挑み、高すぎるハードルを見事に飛び越えた――というより、泥臭くよじ登って生み出したカタルシス。前2作あってこそ、とは言い条、やはりこれは偉業だと思います。

 2位は今年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作。イラン版『クレイマー、クレイマー』という趣ながら、多数の視点が介在し、予測不能にずれていくプロット、そして結末の重みは似ていて非なるもの。これぞ映画の醍醐味です。

 そして3位は、『マーターズ』に続いてパスカル・ロジェ監督が繰り出した重量級の1本。ある着想をもとに築かれたサプライズが、前半と後半とでまったく違ったストーリーが繰り広げられているような印象を生み出し、観客に対して重い問いを投げかける。マニアに愛されたミニシアター、シアターN渋谷のクロージングに選ばれる、という光栄に浴したとはいえ、単館上映で終わるには勿体なさ過ぎる逸品でした。

 長くなるので4位以下の解説は省略します。まだまだいい作品を取り漏らしているのが惜しいのですが、好みと評価とのバランスを取ると、やっぱりこれが私には最善のラインナップのよーです。なお、次点の1本は、時間をかけて作ったランキングではもーちょっと下の方にあるのですが、原作者に対する思い入れと、ヒロインを演じた橋本愛の可愛さがあまりに捨てがたかったので、好みを大幅に優先させて無理矢理ねじ込みました。でも、実写作品に恵まれなかった綾辻行人氏の小説原作としては、間違いなく最高の出来映えでしたし、国産では飛び抜けて出来のいいスリラーだと思います。

 なお、このランキングには、私としては今年に鑑賞しましたが、2013年に劇場公開が決定しているものについては意図して省きました。――つまりこのうちいずれかは、既にベスト級と判断しているものも含まれているわけです。……来年まで印象が変わらないとは限りませんけど、まあ念のために。

私的ベスト10(2011年以前に公開された作品)

順位 作品タイトル 日本公開日
レインマン 1989年02月25日
ゴッドファーザー PART II 1975年04月26日
大誘拐 RAINBOW KIDS 1991年01月15日
ブラック・サンデー 1977年作品
麗しのサブリナ 1954年09月28日
異人たちとの夏 1988年09月15日
孫文の義士団 −ボディガード&アサシンズ− 2011年04月16日
天井棧敷の人々 1952年02月20日
イップ・マン 序章 2011年02月19日
10 摩天楼を夢みて 1993年09月04日

 まだ今年前半は“午前十時の映画祭”を行っていたため、当然のように上位の半分を占めてます。1位の『レインマン』はかなり昔に観て、その時点で自分にとって重要な作品、と感じてましたが、久々に再鑑賞してそのことを再認識、どーしても1位から外せませんでした。2位は1作目あってこそ、ではありますが、完璧すぎる構成ゆえにやっぱりランクは落とせない。

 しかし注目していただきたいのは、ここに邦画をふたつ入れたことです。3位の『大誘拐』は、日本の誘拐ミステリ最高峰と言っても過言ではない原作を、完璧なレベルで映画化したもの。6位の『異人たちとの夏』もやはり小説がベースですが、随所に見えるわざとらしさを割り引いても、優れた構成と情感には唸らされる。こちらもみんな、公開から間もない頃にいちど観ており、私にとって思い入れの強い作品ではありましたが、記憶に残るものはクオリティも高いらしい。

 今年、レンタルにてやたらたくさん鑑賞したドニー・イェン作品からは2本採りました。なかでも最上位に掲げた『孫文の義士団』は、ドニー自身の出番は少ないものの、歴史ドラマの中に傑出したアクション・シークエンスを巧みに埋め込み、見事な構築美を実現している。『イップ・マン』2作ももちろん傑作ですが、個人的にはこの『孫文の義士団』をこそ強く推します。

2013年の展望

 今年は終盤に入ってだいぶ失速しました。来年もしばらくはあまり余裕がないので、1月、2月はあまり劇場に足を運べないかも知れません。

 とは言え、相変わらず観たい映画は目白押しです。既にアカデミー賞有力、と言われているライフ・オブ・パイ/トラと漂流した277日』(20世紀フォックス配給/1月25日公開予定)ゼロ・ダーク・サーティ』(GAGA配給/2月15日公開予定)、『フライト』(Paramount Japan配給/3月1日公開予定)リンカーン』(20世紀フォックス配給/4月19日公開予定)あたりはもちろん、『[リミット]』で注目を集めたロドリゴ・コルテス監督最新作レッド・ライト』(Presidio配給/2月15日公開予定)とか、久々のベニチオ・デル・トロ出演作であるオリヴァー・ストーン監督作品『野蛮な奴ら/SAVAGES』(東宝東和配給/3月8日公開予定)シュワちゃんの本格復帰作となるラストスタンド』(松竹配給/4月27日公開予定)、『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督と“ダークナイト・トリロジー”のクリストファー・ノーラン製作による世界屈指のヒーローのリブートマン・オブ・スティール』(Warner Bros.配給/夏公開予定)に話題のゾンビ小説をマーク・フォースター監督×ブラッド・ピット主演で映画化したワールド・ウォーZ』(東宝東和配給/8月公開予定)などなど、もう枚挙に暇がない。これに至っては邦題もまだ決まっていないようですが、『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ監督が日本の怪獣映画や特撮ものの影響バリバリで作りあげた『Pacific Rim』(Warner Bros.配給/夏公開予定)なんてのも楽しみですし、内容は不明なのですが、『エミリー・ローズ』のスコット・デリクソン監督がやはり日本産ホラーにオマージュを捧げたというフッテージ』(Happinet Pictures配給/5月公開予定)も個人的には気になります。

 日本映画にも、来年はけっこう期待作が幾つかある。第1作が好評を博しシリーズ化が実現した探偵はBARにいる2』(東映配給/5月11日公開予定)に、我孫子武丸氏が原作を手懸けたコミックをベースとするミステリもの監禁探偵』(PHANTOM FILM配給/6月公開予定)(これは脚本に小林弘利氏の名前が挙がっているのも個人的には注目点)、それに中田秀夫監督が三宅隆太&加藤淳也という『怪談新耳袋』に携わったふたりの脚本で撮るホラークロユリ団地』(松竹配給/5月公開予定)も拾っておきたい。

 政治的には日本と微妙な状況にある中国・香港ですが、映画好きとしてはこだわらずに出来る限り観ておきたいものです。大手の配給会社があまり採り上げないからか、情報もギリギリにならないと入らない傾向にあって、いまひとつチェックは出来ていませんが、きっと来年もTWINさんが頑張ってくれるでしょうし、解っているところでは、ジョニー・トー監督の奪命金』(Broadmedia Studios配給/2月9日公開予定)が決定したのは、私としてはとても嬉しい。

 しかし香港映画、といえばやっぱり決して観逃していけないのは、我らがジャッキー・チェンです。が往年のスタイルで撮る最後の映画となる予定のライジング・ドラゴン』(角川映画配給/4月13日公開予定)、本国からだいぶ遅れはしましたが、どうやらけっこうな規模での公開が見込まれている模様。2011年に改めてハマったものの、今年は新作の公開がなく寂しい思いをしていました。激しいスタントを含む作品がこれ最後となるかも、ということを除いても、やはり要チェックの1本でしょう。2011年のように、有志のかたが“アジアの鷹”シリーズ一挙公開、みたいなかたちで企画を立ち上げてくれたら私は嬉しいぞ!

 その他、上でもちらっと触れましたが、いちおうは今年度をもって終了が告知されていた“午前十時の映画祭”が、従来のフィルム上映からデジタル上映に変更し、“新・午前十時の映画祭”に生まれ変わって復活します。何だかんだで、来年も私にとっては愉しみの多い1年となりそうであり――たぶん、このサイトも映画感想主体のまんまお届けすることになりそうです。懲りることがないようであれば、引き続きのお付き合いをお願い致します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました