誤操作から始まる友情。

 プログラム切替直後の火曜日は午前十時の映画祭12を観に行く日……しかし当初は今日、複数の事情を鑑みて、別の作品にする予定でした。見込みでスケジュールに組み込んでいたところ、いざ各劇場の時間割が発表されてみると、想定より時間が早い。行き先は新宿、恐らく通勤通学ラッシュの真っ只中に移動することになる。判断を決める頃の予報では天候も不順、バイクで移動して混雑を回避するにはリスクがある。調べてみると、午前十時の映画祭のTOHOシネマズ日本橋における今週の上映時間は、当初のお目当てより10分遅い程度。電車利用は一緒でも、使い慣れてる分、新宿ルートよりまし、と考えて、こちらに変更しました。
 やっぱりちょっと多めの乗客に辟易しつつも向かったTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞した今コマの作品は、アカデミー賞受賞作、未だ黒人差別意識の強い当時の南部を舞台に、老婦人とその運転手の絆が育まれるさまをユーモアを交えて描く『ドライビング Miss デイジー』(東宝東和初公開時配給)
 実はいつか観たかった映画でした。と言うのも、当時、映画広告の版下を制作していた父の会社の取引先が、この年のアカデミー賞に期待していた作品が来なかった、というので失望していた記憶があったのです。ぼんやりした記憶では『シン・レッド・ライン』に期待していた、と思ってましたが、データを調べた感じではたぶん『フィールド・オブ・ドリームス』だ。ちなみにそっちもこっちも同じ東宝東和配給。たぶん話題性では、そっちにもっと伸びてほしかったのだと思う。
 しかし本篇、疑いなく傑作。人種差別のリアルを随所に織り込んでいるのに、そうした主題の作品で感じる決まりの悪さ、みたいなものがなくて快い。中心となる老婦人も運転手も、言動に品位と、相手に対する敬意があって、互いに信頼を覚えていく過程が実に楽しいのです。
 けっこう時間経過を極端に端折っていて、気づくと数年経っていることに戸惑いますが、それもある意味で、少しずつ変化し、失われていく時間を感じさせる。終盤の描写は寂しさが滲みますが、しかし、フェイドアウトしていく直前のやり取りは、物語の中で育まれた関係、人生の豊かさを窺わせて、温かい気持ちになります。時間を置いて、もういちど鑑賞したい名品。

 鑑賞後は毎度の如く日本橋ふくしま館へ。きょうはちょうど、いちばんのお気に入りである老麺まるやが来ているので、悩む余地はありませんでした。上映終了が11時20分にもなっていなかったので、お店に着いてもまだ席が空いており、ゆったりと食事していたら、あっという間に入口に列が出来ていた……まるやが来ているといつもこんな感じなのです。みんな解って来てるんだろうなー。

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