『アンタッチャブル(1987)』


『アンタッチャブル(1987)』Blu-ray Disc版(Amazon.co.jp 商品ページにリンク)。

原題:“The Untouchables” / 原作:オスカー・フラリー、エリオット・ネス / 監督:ブライアン・デ・パルマ / 脚本:デヴィッド・マメット / 製作:アート・リンソン / 撮影監督:スティーブン・H・バーラム / 美術監督:ウィリアム・A・エリオット / 編集:ジェリー・グリーンバーグ、ビル・パンコウ / 衣装:マリリン・ヴァンス=ストレイカー / キャスティング:マリ・フィン、リン・スタルマスター / 音楽:エンニオ・モリコーネ / 出演:ケヴィン・コスナー、ショーン・コネリー、チャールズ・マーティン・スミス、アンディ・ガルシア、ロバート・デ・ニーロ、ビリー・ドラゴ、リチャード・ブラッドフォード、ジャック・キーホー、ブラッド・サリヴァン、パトリシア・クラークソン / 初公開時配給:UIP Japan / 映像ソフト最新盤発売元:Paramount Pictures
1987年アメリカ作品 / 上映時間:1時間59分 / 日本語字幕:戸田奈津子 / PG12
1987年10月3日日本公開
午前十時の映画祭8(2017/04/01~2018/03/23開催)上映作品
午前十時の映画祭11(2021/04/02~2022/03/31開催)上映作品
2019年4月24日映像ソフト日本最新盤発売 [Blu-ray Disc:amazon]
TOHOシネマズ日本橋にて初見(2017/05/29)

TOHOシネマズ日本橋にて再鑑賞(2021/04/17)


[粗筋]
 1920年代のアメリカは、禁酒法がもたらした暗黒時代にあった。道徳的見地から酒類の販売を禁じたことが闇酒場の横行を招き、それらを牛耳るアル・カポネの専横を許した。シカゴでは市長以上の実権を握るこの男を、もはや誰も押さえられなかった。カポネによる非情な制裁は、遂に幼い子供を巻き込む事態に陥っていた。
 財務省の役人であるエリオット・ネス(ケヴィン・コスナー)は、カポネを捕らえるべく、シカゴ市警へと派遣された。使命は、どんな罪状であれ、アル・カポネを逮捕すること。
 折しも、カナダからワインを大量に密輸入する、という情報がもたらされ、ネスはさっそく大所帯での手入れを実行する。突入した倉庫で、潜り込んだ新聞記者を前に意気揚々と箱をあらためたネスだったが、詰まっていたのは雑貨だった。
 失態は新聞によって大々的に報じられ、着任早々ネスはシカゴ市警のなかで居場所を失ってしまう。苦悩の挙句、ネスは警察組織内の人事に頼ることをやめた。
 ネスが助力を求めたのは、ベテランでありながら未だパトロールに回されているジェームズ・マローン(ショーン・コネリー)。どうやら多くの者がカポネに買収されている警察の中で、数少ない信用に値する人物、と判断したのだ。カポネと対決することがどれほど危険か、を悟るマローンは最初こそ躊躇したが、やがて彼の部下に加わる決意を固めた。
 未だ手を汚していない才能を求め、訓練校から射撃の腕に優れたジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)を勧誘すると、ふたたびネスは密売の摘発に動き出した。マローンの得た情報を元に、他の警察関係者に頼らず、ネス同様に財務省から派遣された経理担当のオスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)にも銃を持たせ、たった4人で手入れを行い、見事に現場を押さえることに成功した。
 初めて屈辱を味わわされたカポネは激昂し、ネスやその家族の殺害を部下たちに命じる。警告によりそれを知ったネスは、妻子を関係の薄い人物の元へと避難させた。
 どうにか密売を摘発は出来たが、しかし未だカポネを逮捕する決定的な材料がない。そこでネスは、ウォレスの進言に従い、数年間に亘って所得についての申告を行っていないカポネを、脱税から攻める作戦に転じた――


TOHOシネマズ日本橋、ロビーに展示された『アンタッチャブル(1987)』上映期の『午前十時の映画祭8』案内ポスター。
TOHOシネマズ日本橋、ロビーに展示された『アンタッチャブル(1987)』上映期の『午前十時の映画祭8』案内ポスター。


[感想]
 アル・カポネは勿論、エリオット・ネスも実在の人物だった。本篇は、ネスの自伝をベースに製作されたテレビドラマを、新たに映画化したものである。
 調べてみると、実際のネスは本篇で描かれるような劇的な活躍どころか、アル・カポネ逮捕のために決定的な貢献は出来なかったらしい。そもそもの自伝が、ネス本人によってかなり脚色されたものだったようだ。
 だから、本篇を鑑賞するなら、史実をもとにしたフィクション、ぐらいのつもりで臨むべきだろう。

 ――もっとも、前述したような背景を知らずに鑑賞したとしても、たぶん途中からフィクションとして惹き込まれてしまうはずだ。それくらい本篇は魅力的だ。

 序盤の展開は少々滑稽で痛々しい。ケヴィン・コスナー演じるネスが意気揚々と手入れに臨むが、いきなり大失態を犯してしまう。なまじまだ若いコスナーがすらっとして凜々しいだけに、余計無様に映ってしまう。
 しかしこの決して長くないくだりで、イメージ戦略の面の強いアル・カポネ対策や、警察内に蔓延る汚職の実態が透け見える。畑違いの現場に乗り込んで手柄を立てようとするネスを、警察内部の人間は嘲笑し、市民も興味本位で見ていることが窺える。
 ここに、ショーン・コネリー演じるマローンが加わることで、トーンは次第に変わっていく。まだ汚れていない優秀な人材を、と考え研修施設に乗り込んだり、経理担当として応援に入ったに過ぎないウォレスにライフルを握らせるあたりはコミカルだが、冒頭の失態を払拭するような活躍は爽快だ。
 輸入された酒類の押収をしているだけではカポネに手が届かない、と理解したネスたちは、闇取引の現場を押さえることから、更に脱税の証拠となる莫大な収入の証明へと狙いを移す。そこからネスたち《アンタッチャブル》とカポネの争いは激化し、壮絶な銃撃戦が織り込まれていく。本篇の醍醐味は、中盤以降に幾度も描かれる、創意工夫に富んだ銃撃戦にこそある、と言い切りたくなるほど、その見応えは逸品だ。
 馬を駆っての国境際での攻防や、ショッキングな暗殺シーンも秀逸だが、しかしやはり本篇を語る上で外せないのはクライマックス、駅の大階段におけるひと幕だ。お膳立てをことさら執拗に丁寧に用意し、特殊なシチュエーションでの壮絶な撃ち合いを、スローモーションで際立たせて見せる。本当はもっと派手な見せ場を考えていたところ、予算の制約によりこの形になったそうだが、むしろ幸いだった、というべきだろう。このシークエンスだけでも本篇には充分に鑑賞する価値がある。間違いなく、映画史に残る名場面のひとつだ。
 史実を題材にしたというにはあまりに派手な趣向が多く、自らの衝動に身を委ねてしまった最期の決戦も、収まりの悪さを感じるひとがいるだろう。ただ、エンタテインメントとして割り切り、カメラワークまで含めて様々な工夫を施して見せ、構図の妙とサスペンスとしての緊張感を両立された映像は、映画というものの面白さを充分に実感させてくれる。
 エンニオ・モリコーネの外連味と品格を絶妙に調和させた音楽も印象深く、観終わってしばらくその旋律とともに興奮が止まらない。劇場で2度鑑賞したが、既にもういちど足を運びたくなっている。クセになる名作なのである。


関連作品:
キャリー(1976)』/『ファム・ファタール』/『ブラック・ダリア』/『評決』/『摩天楼を夢みて』/『ザ・プロフェッショナル
フィールド・オブ・ドリームス』/『薔薇の名前』/『アメリカン・グラフィティ』/『ブラック・レイン』/『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ<ディレクターズ・カット>』/『ペイルライダー』/『スティング』/『ダーティハリー5
ゴッドファーザー』/『ゴッドファーザー PART II』/『アイリッシュマン』/『フレンチ・コネクション』/『雨に唄えば』/『お熱いのがお好き』/『シカゴ』/『かけひきは、恋のはじまり


TOHOシネマズ日本橋、エレベーター正面の壁に掲示された『アンタッチャブル(1987)』上映期の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。
TOHOシネマズ日本橋、エレベーター正面の壁に掲示された『アンタッチャブル(1987)』上映期の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。

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