レンタルDVD鑑賞日記その99。

『雨の午後の降霊祭』を黒沢清監督がテレビ放送用にリメイク、のちに劇場上映もされたホラー映画です。霊能力を持つ女とその夫が巻き込まれた数奇なトラブルを描いたもの。

 劇場公開を前提としていない、しかもまだハイビジョン撮影など普及する以前ですから、いま観ると絵が粗い粗い。しかし、そういう不利さえ乗り越えるくらいよく出来たホラーです。無闇に怖がらせる、というのではなく、霊が見えるとはどういうことなのか、を慎重に考察し、それを土台に終始リアルに描写することで、恐怖というよりは緊張感、不安を演出する。どちらかというと心理スリラーの趣があります。

 霊に何かされる、というより、その状況ゆえの懊悩としがらみとによって追い詰められていく様が圧巻。テレビ用作品らしく撮影場所、素材などはけっこう抑えているのですが、表現の落ち着きも物語の佇まいも、良質のミニシアター作品のようで見応えがありました。名作。……最初にリリースされたものが未だに市場にあるらしいのは喜ばしいことでもあるんですが、でもこういういい作品は是非ともリマスターしてほしいものです。粗すぎて哀しいくらいでした。

 ちなみに、これのオリジナルとなった作品が間もなくDVDで復刻される予定。発売されたら観ようと思ってます。

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